症状

脳梗塞の症状と急性期治療

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脳梗塞の症状とは?

脳梗塞とはどんな病気?

 脳の血管が詰まったり、何かの原因で脳の血のめぐりが正常の5分の1から10分の1くらいまでに低下して、脳組織が酸素欠乏や栄養不足に陥り、それがある程度の時間続いて、その部位の脳組織が壊死(または梗塞)してしまうことを脳梗塞と云います。以前は、動脈硬化で血管がだんだん細くなって、最後には詰まってしまう脳血栓症と、どこかで出来た血栓が剥がれて、栓子となって脳に流れて詰まる脳塞栓症に分かれていました。でも、最近は予防や治療の面から、次の3つに分類されます。

① アテローム血栓性脳梗塞

 脳や頸部の比較的太い血管が、高血圧や糖尿病、脂質異常症、加齢、喫煙などで動脈硬化を起こし、そこで血管が詰まったり、出来た血栓が剥がれて、血流に乗って更に先端の脳の血管で詰まってしまう状態です。

② 心原性脳塞栓症

 心房細動や心臓弁膜症、心筋梗塞などで心臓の中に血栓ができ、それが脳に流れて詰まった状態です。

③ ラクナ梗塞

 主に高血圧や加齢が原因で、脳の深部にある直径1㎜の2分の1~3分の1くらいの細い血管が詰まって、直径15㎜以下の小さな脳梗塞が出来た状態です。

日本では脳卒中の約4分の3が脳梗塞で、以前は約半分を占めていたラクナ梗塞が減り始めて、アテローム血栓性脳梗塞や心原性脳塞栓症が増え始めてきました。

初期症状を見逃さないための「ACT—FAST」

 「ACT—FAST」は、脳梗塞を早く気付くためのチェック方法です。
F:Face(フェイス:顔の麻痺)
チェック方法:笑顔をつくる
症状:顔の片側が下がる・ゆがみがある

A:Arm(アーム:腕の麻痺)
チェック方法:目を閉じて胸の前に両腕を伸ばして、手のひらを上にして5秒間そのまま。
症状:片方だけ落ちたり上がらなかったりする。

S:Speech(スピーチ:言葉の障害)
チェック方法:簡単な質問に答える・簡単な言葉を言う。
症状:滑舌が悪い・ろれつが回らない・言葉が出てこない

T:Time(タイム:発症時刻)
上のような症状が出た場合は、その症状が出始めた時間を記録して、直ぐに救急車を呼びましょう。治療は早ければ早いほど、その後の経過が良いことを自覚してください。

49歳、私(A)が体験した脳梗塞の前兆

 脳梗塞は高齢者がかかるイメージだったAにとって、思ってもいない49歳での発症でした。今思うと、沢山の脳梗塞の前兆や症状があったのに、脳梗塞についての意識がもっと高かったらと、悔やまれます。Aが体験した脳梗塞の前兆や症状について紹介することで、皆様のお役に立てれば嬉しいです。

脳梗塞の体験・症状①:しびれ

①軽いしびれ

 脳梗塞のしびれは通常経験する正座の後のような、ジンジンとしたしびれ方ではありません。「羽で触られた感じのしびれ」と云われていますが、Aにとっては「麻酔をした時に初めに感じる感覚」に近かったです。

②一瞬で消えるしびれ

 あまりに一瞬でしびれが消えるので、勘違いかなと思っていましたが、最初のころは1日1回だったのが、進むにつれて1日数回の軽いしびれが起こるようになりました。

③先端部分のしびれ

 指の先や足の先、舌の先など、このような体の先だけがしびれ出したら、ただ事ではないと感じますよね。

脳梗塞の体験・症状②:ろれつが回らない

 ろれつが回らない症状は脳血管障害によって起こり、発声・発語に関わる口や頬などの筋肉やそれを支配する脳神経がダメージを受けて、ろれつが回らない症状になるものです。Aも初めての時はビックリ、言葉が途切れ途切れで、頭の中で言葉を整理できなくなる感じでした。物の呼び方は分かっているのに、それを言葉に表せられないなんて。こんな症状が出たら、直ぐに病院に行くことですね。

脳梗塞の体験・症状③:力が抜ける

 脳の血管が詰まって細胞が壊死したり、出血によって血腫が脳細胞を圧迫することで、脳から運動の指示が出せなくて、体に力が入らなくなるのです。

① 腰が砕ける感じがする

 今まで何ともなかったのに、急に体に力が入らず腰から力が抜けて、立っていられなくなります。Aの場合は、ろれつが回らなくなったのと同時ぐらいに、腰の力が抜けて立っていることが出来なくなりました。

② 一瞬で治る

 力が抜けて2分くらいすると、何事もなかったように立てました。力が抜けた時も何の前兆もなかったので、数分で収まると大抵の場合は大したことないと考えて、病院へ行かないことがあるようですが、脳梗塞のせいかもしれないので、必ず病院に行きましょう。

脳梗塞の体験・症状④:肩こりや首の痛み

 肩こりなどは普段から感じていましたが、それがまさか脳梗塞の前兆に繋がるとは思っていませんでしたが、約3割の方が肩こりや首の痛みを感じるようです。

① 数分で消える

 同じ姿勢を続けていると肩が重くなると感じる方も多いでしょうが、Aが体験したのは突然肩を押されるような感じでした。筋肉疲労から起こる肩こりはじんわりと来る症状でしたが、Aの場合は突然来て、気づいた時には肩こりが消えていました。

② 重たい物を持つ感覚

 今まで何もなかったのに、背中から首にかけて重たい物を背負った感じで、誰かに手で肩を抑えられているような症状でした。でも、それも長く続かず一瞬のことで、見逃してしまうかもしれません。

脳梗塞の体験・症状⑤:真っすぐ歩けない

 地面が斜めになって、自分が傾いているような感覚で、めまいのような症状とふらつく歩行は今までにない経験でした。

Aが体験した症状は、どれも脳梗塞とはっきり分かるものではありません。脳梗塞の症状が出たら病院に行くのはもちろんですが、脳梗塞にならないための予防も大切ですね。

目に症状が出ることもある

飛蚊症と脳梗塞の前兆の関りは?

 白いモヤモヤやゴミのような物が浮遊しているように見える状態を飛蚊症と云って、40代では6~7割の方にみられる症状です。その原因には次の3種類が挙げられ、放っておくと危険な場合もあります。

・生理的飛蚊症(老化、目のストレスなど)
・病的飛蚊症(白内障や緑内障の前兆)
・物理的症状(目に強い衝撃を受けた時など)

眼科での診察では8割が生理的飛蚊症なので、基本的には治療はされませんが、白内障や緑内障の場合は、初期症状として飛蚊症のような見え方をすることがあります。
視覚として脳梗塞の前兆となるものに、「片方の目に膜がかかったように見える」「視野が狭くなる」「目の焦点が合わなくなる」「物が二・三重に見える」などの症状が現れることがあります。これらを飛蚊症と勘違いして、放っておく方もいるようなので注意が必要です。

脳梗塞急性期におこなう治療

 脳の損傷を最小限に抑える治療は早急に行う必要があります。

ポイント

・新たな血栓を作らせない、出来た血栓を除去する:「抗血栓療法(抗血小板療法・抗凝固療法)、血栓溶解療法、脳カテーテル治療(血栓回収療法)」
・脳のむくみを取って、働きを守る:「脳保護療法」「抗浮腫療法」
・血流を良くする:「血液希釈療法」

① 抗血小板療法

 発症後48時間~5日以内なら、血栓が大きくなったり、新たな血栓ができるのを抑える抗血栓療法の二つの方法の内の一つです。どちらの療法も、すでにできてしまった血栓を溶かすことはできませんが、症状の悪化や再発を防ぐ効果は期待できます。ただ、血が止まり難くなるので、出血を伴う脳出血や消化管出血の方には使用できません。
抗血小板療法は、血小板が活性化して固まる働きを抑える治療法で、心原性脳塞栓症以外の脳梗塞が対象で、経口薬のアスピリン、点滴薬のオザグレルナトリウムを使用します。

・アスピリン(商品名バイアスピリンなど):解熱鎮痛剤として知られていますが、血小板の凝集を抑える抗血小板薬の中でも最も良く使われる薬です。発症後48時間以内の内服では、ある程度の効果が期待出来ますが、胃痛などの消化器症状の副作用やぜんそく発作の恐れもあるので、アレルギー体質や元々喘息のある人には注意が必要です。また、重度の脳梗塞や出血性梗塞(梗塞巣の中に出血を伴う状態)の場合は、投与しないか注視が望ましいとされ、最近は、アスピリン以外の経口抗血小板薬も急性期から投与されてきました。

・オザグレルナトリウム(商品名カタクロット、キサンボン):血液を固まり難くさせるとともに、脳の血管を広げて血流を増やしたり、手足の運動障害を改善する効果があります。急性期治療薬として、発症後5日以内のアテローム血栓性脳梗塞とラクナ梗塞に適応され、小さなラクナ梗塞には特に効果があります。

② 抗凝固療法

 脳梗塞の原因となる血栓には、血小板が凝集して出来る「血小板血栓」と、血液中にあるフィブリノーゲンが固形成分フィブリンに変わって作られる「フィブリン血栓」があります。抗凝固療法は、そのフィブリンの形成を防いで、血液を固まり難くする治療法で、アルガトロバンやヘパリンナトリウムを点滴投与します。

・アルガトロバン(商品名:ノバスタン、スロンソン)は、血液の凝固にかかわる酵素のトロンビンを阻害する選択的トロンビン阻害薬です。発症後48時間以内で、1.5㎝大以上の梗塞巣のアテローム血栓性脳梗塞に適します。

・ヘパリンナトリウム(商品名:ヘパリンナトリウム、ノボ・ヘパリンなど)は血液中の凝固因子に結びついてその働きを強め、フィブリンの凝固を抑えます。主に心原性脳塞栓症や早期の再発予防に使われますが、出血が起きやすい副作用があるので、出血性脳梗塞や消化管からの出血、皮下出血などに注意が必要です。

③ t-PAによる血栓溶解療法

 発症4.5時間以内に治療を開始しなければならないと云う制約はありますが、主幹動脈(脳を養う重要な血管)の閉塞による脳梗塞の治療法として第一に選択されるのが、t-PA(アルテプラーゼ)と云う血栓を強力に溶かす薬を静脈から点滴投与する方法です。具体的には100人の脳梗塞患者さんに対して39人がほとんど後遺症のない状態になり、使用しない場合は26人に留まりました。日本でも2005年から保険適応の治療になっています。ただ、様々な条件をクリアする必要から、脳梗塞で来られた患者さんの2~5%程度しか、この治療は行われていません。また、ルールを守って使用しても、6%程度の割合で症状が悪くなる可能性がある治療法であることも知っておいてください。

④ 脳カテーテル治療(血栓回収療法)

 主幹動脈(脳を養う重要な血管)の閉塞による脳梗塞の治療法として第一に選択されるのが、t-PAと云う血栓を強力に溶かす薬を静脈から点滴投与する方法ですが、発症4.5時間以内に治療を開始しなければならないと云う制約があります。
そこで、t-PA適応外の患者さんに対する次の手段が、急性期脳梗塞に対する脳血管内治療となります。脳梗塞の血管内治療は、発症後8時間以内の患者さんが対象になります。
カテーテルと云う細いビニールのような管を足の血管から挿入して、頭の中の脳血管まで進めて、血管を溶解したり、回収したりして、閉塞した脳血管を再開通させます。

―――具体的な方法―――

具体的な方法としては、「局所血栓溶解療法」、「血栓破砕による脳血管再開通療法」、「血栓回収療法」などがあります。
1-局所血栓溶解療法:カテーテルを閉塞した血管に導入し、そこから血栓溶解剤(ウロキナーゼ)を投与する。

2-血栓破砕による脳血管再開通療法:バルーン(風船)を閉塞した血管に留置し、バルーンで血栓を破壊する。

3-血栓回収療法:MERCI(メルシー)リトリーバーと云う先端がらせん状になった柔らかいワイヤーで、脳の血管を詰めている血栓をからめ取って回収でき、70~80%再開通すると報告されています。ただ、回収中に血管を損傷して脳出血を生じることもあるので、高度な技術を必要とし、最近の新しい血栓回収デバイスの認可により、メルシーはほとんど使われなくなってきました。

4-血栓回収療法:Penumbra(ペナンブラ)システムは、専用の再灌流カテーテルに強力な吸引ポンプを用いて、血栓を砕きながら回収します。血管径に合わせて3種類の再灌流カテーテルが選択でき、血栓を砕くセパレーターと呼ばれるガイドワイヤーも3種類あります。最近ではセパレーターを用いず、再灌流カテーテルを閉塞部位に誘導して吸引ポンプで直接血栓を抜き去る方法で、短時間に再開通が得られるようになり、再開通率は80~90%に達しています。

5-血栓回収療法:ステントリトリーバーは2014年に認可された2種類のステント型の血栓回収デバイスです。
・ソリティア:オープンメッシュシートをオーバーラップに丸めた形状
・トレボ:先端チップを持ったらせん状の形状。
共に従来の器具より血栓回収率が高まり、最開通率は90%程度に向上し、安全性も高いと報告されています。

⑤ 脳保護療法

 脳に梗塞が起こると、直後に活性酸素(フリーラジカル)が発生して、脳細胞を更に傷つけ、別の血栓を作るとされ、この活性酸素を除去し、梗塞巣周辺のまだ死んでいない細胞(ペナンブラ)を救うのが脳保護療法です。活性酸素を無害化する活性酸素除去剤エダラボン(商品名:ラジカット)と云う薬を24時間以内に点滴投与し、3時間以内なら高い効果が得られます。日本でのエダラボン臨床試験では、「後遺症がない」「後遺症があっても日常生活に支障がない」と云う方は、未投与患者さんと比べて2~3倍に増えたと云うデータが示されています。脳梗塞による二次被害を抑えるのが脳保護療法なので、他の治療法と同時並行で行われることが多く、程度や症状によっては抗血栓療法(抗血小板療法、抗凝固療法、t-PAによる血栓溶解療法、血栓回収療法、)を組み合わせて、治療効果を高めことが期待されます。現在、フリーラジカルの量を簡単に計測する方法が研究されているので、エダラボンの使用量を患者さんに合わせて決めることが出来、より高い治療効果を得られると期待されています。特に脳梗塞の種類を選びませんが、副作用として急性腎不全発症の恐れがあるので、腎臓病の方や高齢者への投与には慎重に見極める必要があります。その他には明確な禁忌症はないので、比較的広く用いられている治療法です。尚、エダラボンは「脳卒中治療ガイドライン2015」では、推奨グレードBの「治療を行うことが勧められる」に当たります。

⑥ 抗脳浮腫療法

 脳梗塞になると、血管が詰まった場所やその周りに水分が溜まって、脳浮腫(むくみ)を起こします。脳浮腫は通常、発症後1~2日後にむくみ始め、48~72時間位でピークに達します。そのむくみが酷い場合は、梗塞巣の無い部位まで圧迫され、ダメージが広がります。また、脳がむくんで腫れると頭蓋内圧が高まり、脳ヘルニア※などの頭蓋内圧亢進によって非常に危険な状態になります。
抗浮腫療法は、脳梗塞によって起こる脳のむくみを抑える治療方法で、濃グリセリン(商品名:グリセオールなど)やD-マンニトール(商品名:マンニトール)などの利尿薬を点滴投与し、脳の余分な水分を排出して、むくみや腫れを改善します。梗塞巣が比較的大きいアテローム血栓性脳梗塞や心原性脳塞栓症で行うことが多く、特に重症者には効果があるとされます。ただ、心臓や腎臓に大きな負担をかかり、心臓や腎臓に病気がある方や高齢者には行えない場合があります。また、糖尿病の方では高血糖を起こすので、注意が必要です。
※【脳ヘルニア】
上部や左右を硬い頭蓋骨に囲まれた大脳や小脳は、出血や血種によって脳の体積が増すと、頭蓋内圧が高まり、脳組織の一部が異なる位置に押し出されます。押し出された脳は、脳深部の生命維持中枢(脳幹)を圧迫し、重い意識障害や呼吸困難、瞳孔拡大などを引き起こして、梗塞巣が大きく症状の進行が速い心原性脳塞栓症では、直後の死因となることもあります。脳ヘルニアで以上の初期症状が見られると治療は一刻を争い、血種があれば開頭血腫除去手術を行い、血種がないか少量の場合は効果が低いので、多くは薬物療法が選択されます。

⑦ 血液希釈療法

 血液中の水分が少なくなって粘度が増すと、血流が悪くなり脳梗塞の発症や悪化につながるので、薬によって血液中の水分(血漿)を増やして血流の改善をはかるのが血液希釈療法です。低分子デキストランと云う血漿増量薬の溶液は別名乳酸リンゲル液と呼ばれ、輸液としては、皆さんも聞いたことのあるほど非常にメジャーなものです。大量出血などによる血圧低下を防ぐために投与される「血液を水増しする」溶液なので、血液成分である血漿に近いよう調整されています。このように濃度を下げられて比較的サラサラになった血液は、詰まり気味の細い毛細血管にも流れやすくなるので、ラクナ梗塞やアテローム血栓性脳梗塞においても、バイパス的な血流で詰まった血管の肩代わりをすると期待されます。ただ、科学的なエビデンス(根拠)が明確になっている訳ではないので、「あまり副作用もないので、取り合えずやっておこう」と云った治療法でもあります。

いかがでしたか、
脳梗塞の前兆に早く気付くかどうかで、その治療効果が大きく変わってきます。
あれ、変だなと思ったら、先ず診察を受けてみることが大切ですね。
是非、参考にしてみてください。

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