予防

脳卒中発症は年齢に比例する?データで見る脳卒中発症年齢分布。

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 若いあなたは、「脳卒中なんて、私にはまだ考えられないわ。だってあれは50代くらいになってからの病気でしょ。」なんて、思っていませんか? 最近、30代、40代の女性アナウンサーやタレントが脳梗塞になったことなどが話題になっていましたよ。若年性脳梗塞が広がりを示して、もう脳卒中は高齢者の病気とは言えなくなってきました。ここでは脳卒中と年齢にどんな関係があるかをご紹介しましょう。

脳卒中と年齢の関係

脳卒中を起こしやすい年齢

脳卒中各病型の年齢層に占める割合(%)

 1999年から2012年まで脳卒中データバンクに登録された10万件以上の急性期脳卒中患者のデータから、経年変化の解析を行いました。

病型

60歳未満

60~69歳

70~79歳

80歳以上

一過性脳虚血発作(TIA)

6.3

6.0

5.6

4.6

アテローム血栓性梗塞

14.2

19.9

21.3

20.2

アテローム血栓性塞栓

2.9

4.4

5.5

4.8

ラクナ梗塞

21.0

24.7

22.7

19.0

心原性脳塞栓

8.8

15.9

20.9

30.4

脳梗塞(その他)

8.2

4.9

4.8

4.3

高血圧性脳出血

20.3

16.0

12.0

10.5

脳出血(その他)

3.7

2.1

2.6

3.0

脳出血(AVM)

1.5

0.3

0.1

0.1

くも膜下出血

13.0

5.8

4.3

3.2

・TIAは4~6%で加齢と共に低下傾向が見られます。
・アテローム血栓性梗塞は60歳代から80歳代までほぼ同様の20%前後でした。
・アテローム血栓性塞栓も同様に5%前後でした。
・ラクナ梗塞では60歳代をピークに加齢と共に減少傾向にあります。
・心原性脳塞栓は逆に60歳未満の9%から加齢と共に急増し、80歳代では30%を占めるに至りました。
・出血を伴う高血圧性脳出血やくも膜下出血は、60歳以前が最も頻度が高く、其々20%、13%を占めましたが、加齢と共に減少傾向が認められます。

若年性脳梗塞~脳卒中を起こす年齢の若年化

 若年性脳梗塞は、名前の通り45歳以下の若い世代に起こる脳梗塞を指しますが、年齢だけの問題ではなく、普通の脳梗塞とは原因が異なります。一般に言われる脳梗塞の場合、主な原因は動脈硬化で、肥満・高血圧、脂質異常症などによって動脈硬化が進み、脳の血管が詰まったり、血栓ができて脳梗塞を引き起こします。その結果、高血圧などの生活習慣病が増え、さらに動脈硬化が悪化し易い50歳代以降になると、脳梗塞を発症し易くなるのです。
 それと比べると若年性脳梗塞は、動脈硬化以外のいろいろな原因で引き起こされます。例えば、奇異性脳塞栓症や抗リン脂質抗体症候群、もやもや病、脳動脈解離、血管炎などがあります。いずれもあんまり聞き慣れない病名ですが、どれも血栓が出来やすい病気で、これが若い世代でも脳梗塞を起こすことがあるので、普通の脳梗塞と区別する意味で若年性脳梗塞と呼ばれます。若年性脳梗塞の原因として、外傷による頭や首の血管の損傷が引き金になることも多くあります。レジャー中に頭を打ったり、交通事故でのむち打ちなど、頭や首に急激に大きな力が加わると、頭部や頸部の動脈が裂ける「脳動脈解離」を引き起こして血流が途絶え、脳梗塞を引き起こすことがあります。日常生活の中で、首をひねったりする癖があり、首や肩のこりが気になるあなたは要注意です。また、女性の場合、片頭痛や経口避妊薬の使用がまれにリスク要因となることがあります。
 じゃあ、若年性だから中高年には関係がないかと云うと、必ずしもそうは云えないのです。中高年の方がこのような病気になると、動脈硬化があまり進んでいなくても、脳梗塞を起こすリスクが高くなります。

若年性脳梗塞の主原因

【奇異性脳塞栓症】
 足などの静脈系に出来た血栓が、心臓の左右房の間の穴(※卵円孔=胎児の頃のなごりで、成長すると閉じられるのですが、成人の約20%には残っています)を通って脳血管系へ移動し、脳梗塞を起こす病気です。普段は左房と右房の圧力差で血液が正常に流れるのですが、スポーツや重い物を持ち上げるなどの負荷がかかると、卵円孔を通って血栓が移動してしまうことがあるのです。運動した時や力を入れた時などに、一過性脳虚血発作の症状が見られたら、早めの受診が大切です。心エコー(超音波)検査だけでは判り難いので、経食道心エコー(食道を通してエコー検査)や経胸壁心エコー(胸の外側からエコー検査)によって、卵円孔や心臓内の血栓の有無が判るようになりました。

【抗リン脂質抗体症候群】
 抗リン脂質抗体と云う抗体が血液中に出来て、血液が固まり易くなる病気で、足(下肢)の深部静脈に血栓が出来やすく、足の一部に腫れや痛みをよく感じるようになります。血栓が移動すると、脳では強い頭痛や一過性脳虚血発作(手に力が入らない、言葉が出ないなどの症状)を起こし、心臓なら心筋梗塞、肺では呼吸不全を起こすなど、どれも命にかかわる重大な病気を引き起こすことがあります。女性の場合は習慣性流産の原因になることもあります。免疫異常の一種である全身エリテマトーデス(関節炎や全身倦怠感、顔の発疹など)から発症することも多いから、何らかの症状が見られた場合は血液検査などで原因を特定することが大事です。

【もやもや病】
 脳の動脈の一部(内頸動脈)が狭まったり、閉塞すると、血流を確保するために周りの毛細血管が拡がって網の目のようになります。それを血管造影検査で見ると煙がもやもやとなっているように見えるので、それが病名の由来となりました。細くて弱い毛細血管ですから、詰まり易い上に破裂し易く、脳梗塞や脳出血のリスクが高い病気です。脳梗塞型のもやもや病は過呼吸のために二酸化炭素が減少して、毛細血管が狭まり、脳梗塞に近い状態になるなどの特徴的な前兆が見られます。ラーメンのような熱い食べ物をフーフー吹いたり、笛などを強く吹いた時に一時的に手足の脱力感や意識障害が起こったりします。もしこのようなサインが現れたら、すぐに脳検査の必要がありますよ。

おかしいと感じたら「FAST」チェック!

 若年性脳梗塞の発症率は脳梗塞全体の4%強と決して多くはありませんが、発症に気づかずにいると、命を落としたり、長い介護生活を送ることになるかもしれません。そうならない為には初期症状を見逃さないことが大切です。脳梗塞には前兆として、「TIA(一過性脳虚血発作)」と云われる小さな発作が起こることがあります。多くの場合、数分~数時間で治まりますが、一時的な体調不良と軽く考えて見過ごされ易いのです。変だなと思ったら、次に挙げる「FAST」と名付けられた判定方法を試してみましょう。1つでも当てはまれば、すぐに脳神経科を受診しましょう。
・Face(顔の麻痺):顔の片側の感覚がなくなり、動かせなくなる。片目が見えなくなることもあります。
チェック法―口を広げて「イー」と発声した時、片側しか口角が上がらない。

・Arm(腕の麻痺):腕の力が突然抜けて、持っていたものを落としたり、物に掴まれなくなる。
チェック法―両腕を肩の高さまで上げると、片側が下がってきたり上がらなかったりする。

・Speech(ことばの障害):ろれつが回らない。
チェック法―簡単な言葉でさえ、ろれつが回らず上手く云えなくなる。

・Time(時間):脳卒中の治療は時間が勝負です。FASのチェック項目の1つでも出来ない場合は、すぐに脳神経科を受診しましょう。

高齢化で急増、脳卒中を引き起こす「心房細動」

 昨日まであんなに元気だった人が、脳卒中で突然亡くなってしまったり、あるいは半身麻痺になってしまったなんて、身近で耳にしていませんか。その原因として、不整脈の一つの心房細動によるものが増えています。本人が気付かないうちに病気が進んでいる点が怖いのです。脳卒中から要介護に状態に陥らないように、「まさか自分が」から「明日は我が身」へと、発想の転換をした方が良いですよ。

心房細動が増えると、なぜ脳卒中を起こすの?

 脳卒中と云えば、高血圧が原因とよく言われ、脳卒中防止のための血圧コントロールの甲斐あって、高血圧が原因の脳卒中はかなり減少してきました。でも、脳卒中自体は減っていないのです。それはなぜかと云うと、別の原因のせいです。それが不整脈の一種、「心房細動」による脳卒中なのです。この頃、皆が知っているような有名人が突然、心房細動による脳卒中で倒れたと云ったニュースを聞いたことがありませんか。
 心房細動と云うのは、一定のリズムで拍動しているはずの心房が不規則に細かく動くことで、心臓内の血液が淀んで、血栓(血の塊)が出来やすくなるのです。その血栓が血流に乗って、脳の血管を詰まらせると脳梗塞を引き起こすのです。心房細動が原因の脳卒中は、高血圧の原因とするものよりも重症に成り易く、半分以上の方が亡くなるか、半身麻痺でリハビリでもなかなか元どおりに戻らず、要介護状態に陥ったりします。

なぜ心房細動で脳卒中が増えるの?

 心房細動による脳卒中が増えている最大の原因は、やはり高齢化の急速な進行です。年齢とともに、心房細動になる割合が高まります。60歳代で2%、70歳代で5~6%、80歳代で10%の人が心房細動になると欧米ではデータが出ています。それに続く原因が生活習慣病と云われる、高血圧や糖尿病、肥満などです。このような生活習慣病のある人は、ない人と比べると心房細動に成り易く、また脳卒中も起こし易いことが判っています。生活習慣病自体は右肩上がりで増えているので、成ってしまった心房細動の予防より、脳卒中を予防する方がより現実的でしょう。

心房細動に早く気付く方法

 心房細動で脳卒中を起こした人の40%は、診断されていない無症状の人なのです。だから、予防の第一歩は「年に一回は心電図をとりましょう」と云うことです。65歳以上の方の心電図をとると、100人に1人、1%の割合で心房細動が見つかるほど、高齢者にとっては身近な病気になっています。年1回の定期健康診断では必ず心電図をとって不整脈をチェックしましょう、また、定年退職後はそれを疎かにしがちですが、脳卒中になる前に、心房細動の発見の機会を大切にしましょう。

脳ドックを受けるべき年齢は?

脳ドックは30歳から

 脳の病気の内でも血管が原因となる脳卒中の罹患率は、30代から高くなるので30歳を超えたら脳ドックを受けましょう。血流内のコレステロールや中性脂肪、尿酸等は、歳を追うごとに血管の内膜を厚くして、狭窄を起こすのが脳卒中の大きな原因です。その上、血圧が上昇し、たばこを吸ったりすることで動脈瘤や動脈硬化と云った血管の老化に繋がって行くのです。だから、生活習慣病の患者さんほど脳卒中のリスクが高まるのです。脳の深い箇所での出血は動脈硬化を起こし、浅い個所では血管の老化や認知症が心配されます。そんなリスクの高まる30歳を超えたら健康診断の結果次第では、脳ドックの受診を検討してみてはどうでしょうか?

がんや生活習慣病になったら、脳ドックを!

 30代半ばまで脳の病気が見つからなければ、2~3年に1度くらいの脳ドック検査でも構わないでしょう。でも、人間ドック検査で次の3つの症状が見つかった場合は、脳ドック受診を検討した方がよいでしょう。
1-過去の脳ドックで腫瘍や血管狭窄などが見つかった場合。
症状が浅くても、進行状況確認のために、半年~1年に1度、検診することが望ましいです。

2-健康診断でコレステロールや尿酸の値が増えた場合。
脳卒中のリスクが高まっています。さらに血圧の上昇が認められた場合には、脳出血の危険性もあり要注意です。

3-がんが体のどこかで見つかった場合。
脳に転移するがんもあるので、がん手術後には定期的に人間ドックや脳ドックに通うことを勧めます。ただし、早期の胃がんや前立腺がんなど、脳に転移し難いがんもあるにはあります。
その他にも、脳の病気は歩行障害や高次機能障害、認知症など、いろんな症状を引き起こします。不自然な行動をする方が身の回りにいたら、それは脳の病気かもしれないので、脳ドックの受診も選択肢の一つとして考えてみてください。

人間ドックと脳ドックはセットで受診

 脳の病気の原因を多角的に調べるためにも人間ドックと脳ドックは同時に受ける方が良いですよ。と云うのは、脳の血管に狭窄が出ている方が痛風や糖尿病などを患った場合、生活習慣を含めた指導と同時に、投薬治療を進めることができます。尚、人間ドックを提供する施設には脳ドックの検査項目を含むものもあります。一方、脳ドックのメニューの中にも、血液検査のような人間ドックの基本的検査が受けられるものもあります。広く病気の可能性を探るなら人間ドック、脳に焦点を絞って受診するなら脳ドックを受ければ良いでしょう。

いかがでしたか?
 脳卒中は高齢者だけがかかるものではないと、心に留めて置いてください。何か変だなと感じた時は、人間ドックも健康維持の大事な手段のひとつですよ、是非、参考にしてみてください。

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