基礎知識

脳卒中は死亡する病気なの?実際の死亡率はどの程度?

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脳卒中は突然死する恐ろしい病気?

 巨人軍の木村拓也コーチが試合前のノック中に倒れて、そのまま急死したことを覚えていますか?まさに突然死でした。死因はくも膜下出血、まさに脳卒中は怖いですよね!
 かつては日本人の死因第1位を占める病気でしたが、近年の医療の進歩などによって死亡率は減ったものの依然として、「ガン」や「心疾患」、「肺炎」とともに上位を占めています。脳卒中が恐ろしいことは、死亡率のほかにもう1つあります。それは一命を取り留めても、何らかの後遺症の残ることが多いことです。木村さんは生真面目な性格で影の努力も欠かさずに頑張っていましたが、奥さんによりますと、亡くなる直前には頭痛を訴えていたと云われます。くも膜下出血発症の前兆は2週間から1ヶ月前に現れる頭痛、定期的に激しい頭痛、後頭部が痛むといった特徴があります。あの時、この前兆を見逃してなかったらと残念でなりません。脳卒中は早期発見、早期治療が最良の手段です。対処法を理解し、予防を実践して危険因子を減らしましょう。

脳卒中の死亡率

 日本の死因別割合はこうなっています。平成23(2011)年

死因

死亡者数

死亡率(人口10万対)

死亡割合(%)

全死因

1,253,066

993.1

100.0

悪性新生物

357,305

283.2

28.5

心疾患

194,926

154.5

15.6

肺炎

124,749

98.9

10.0

脳卒中

123,867

98.2

9.9

不慮の事故

59,416

47.1

4.7

老衰

52,242

41.4

4.2

 脳卒中は昭和26(1951)年、結核にかわって死因第1位になりました。昭和45(1970)年をピークに低下し、昭和56(1981)年、悪性新生物(がん)にかわって死因第2位、昭和60(1985)年、心疾患(心筋梗塞、狭心症など)にかわって死因第3位、平成23(2011)年、肺炎にかわって第4位になりました。順位は下がってきたとはいえ、全死亡者の約10人に1人は脳卒中(脳梗塞、脳出血等)で亡くなり、日本の4大死因として、注意する必要に変わりはありません。
 脳卒中の死亡率ワースト1の県はどこか、知っていますか?実は10万人あたり男性70.1人、女性37.1人の割合で両方とも岩手県です。実際、岩手県では脳卒中で亡くなった方は年間2300人余りに上っています。どうしてこんなに数字が高いのでしょうか?その大きな原因は高血圧にあります。高血圧が続くと動脈硬化になり、血管が破れたり詰まったりし易くなるためです。また、岩手県を始めとする東北地方の食習慣が深く関わっていると推測されています。冬に野菜を食べるために漬物として貯蔵するという習慣が、おふくろの味として塩分を濃くしていったと指摘されています。塩分摂取量の多さを裏付けるデータとして、岩手県民の1日平均の塩分摂取量11.8グラムで、全国平均より1グラム以上も多く、全国一であることが物語っています。肥満や喫煙、酒の飲み過ぎなども高血圧の要因で、岩手県は肥満度(BMI)男性全国第五位、女性第四位です。喫煙率も男性は第五位でした。こうした複数の要因が重なって、岩手県の脳卒中死亡率が高まっていると見られています。

死亡率に影響を与える因子は何?

 脳卒中の死亡率と保険・医療・福祉・社会環境指標との関連について分析することで、脳卒中死亡率を左右する社会的要因を把握するという研究に成果が見られました。対象としたのは、1995年の厚生省の「人口動態統計」は20年以上前の資料なのが難点ですが、傾向は判ると思います。脳血管疾患死亡率を基に、世帯・労働・人口・経済・医療供給・自然環境・財政・居住環境・医療費諸率関連などの各種指標を解析しました。

 結果、脳血管疾患死亡率と有意な相関関係が見られたものを挙げました。

関連

指標項目

指数

人口

65歳以上の人口割合

r=­0.89

疾病構造

心疾患死亡率

r=0.75

悪性新生物死亡率

r=0.69

居住環境

持家比率

r=0.71

保険事業

健康教育参加率

r=0.70

人口10万人対保健婦数

r=0.69

健康相談参加率

r=0.51

基本健康診査受診率

r=0.33

世帯

高齢夫婦のみ世帯割合

r=0.52

高齢単身世帯割合

r=0.36

健康水準

通院者数

r=0.48

医療供給

人口10万人対看護婦数

r=0.42

自然環境

年平均相対湿度

r=0.33

・過疎化及び高齢化で死亡率上昇
 世帯構成の観点からみると、核家族世帯割合や単独世帯割合が高い地域は都市化が進み、65歳以上人口割合、高齢夫婦のみの世帯及び高齢単身世帯割合は、地域の高齢化を示す指標となり、都市化の対極にある過疎化の進行とともに、脳血管疾患死亡率に影響を及ぼす要因となる傾向があります。

・脳梗塞は10度以上の急激な温度差では危険です。
 室内外の温度差が10度を超えると、脳梗塞が急激に増えることが判っています。もともと脳梗塞の発作は寒い冬に多かったのですが、エアコンが普及して室内と室外の気温差が大きくなった夏にも急増するようになりました。暑い夏でも室内が人工的に冬のような状態になっていると、室温の低下した部屋から暑い屋外に出ることで、血管は収縮と拡張を繰り返し、次第に細くなって詰まり易くなってしまいます。夏場の室温は外気温との差を5度以内に抑え、温度差の激しい施設に入る時は直前に温かい飲み物を飲んで、血管を広げ、血圧の急激な上昇を防ぐように努めましょう。また、寒い冬場は逆に暖房の効いた温かい部屋から戸外へ出ると、血管が急速に収縮して血流が一気に心臓に戻ってくるので、血圧が急激に上昇し動脈硬化や隠れ脳梗塞の原因となります。これを防ぐには、外出前に軽くストレッチを5分ほど行うとよいでしょう。全身の筋肉がほぐれて、筋肉中の血管が広がり、血流が良くなって血圧の急激な上昇を抑えます。
 また、冬場の入浴時、寒い風呂場で脱衣をすると急激な温度変化が危険です。寒い浴室での脱衣は避けて、温かくする工夫をしましょう。お湯の温度も38度程度に設定して、ゆっくりと浸かりましょう。安全な入浴の仕方としては、1-脱衣場は温かくする。2-湯加減は着衣のままで行う。3-かけ湯をしてから湯船に入る。4-温めのお湯にゆっくり浸かる。などが勧められています。

・健康水準が低いと危ない
 脳血管疾患死亡率は、悪性新生物死亡率、心疾患死亡率及び通院者率との間にも有意な相関関係が認められます。地域の日常生活習慣に深く影響を受ける脳血管疾患の発症は、地域の健康水準にも繋がると考えられます。個人を取り巻く保健・医療・福祉などの社会環境や文化によって定まる部分もあるので、食生活をはじめとする地域の日常生活習慣は似通ったものになると考えられます。従って、脳血管疾患死亡率は、地域の他の生活習慣病(悪性新生物、心疾患)の死亡率と関連が深く、健康水準の低い地域ほど高くなる傾向にあります。

・外来医療費の高い地域ほど低い
 分析の結果、医療費諸率のなかでは、1人あたり外来医療費だけに、脳血管疾患死亡率との間に有意な相関関係がありました。すなわち、1人あたりの外来医療費の高い地域ほど、脳血管疾患死亡率が低くなっていました。

・医療供給量の多い地域ほど低い
 可住面積100㎢あたり一般病院数及び診療所数は、地域住民への医療供給量を示す指標ですが、分析結果によると、病院及び診療所数の多い地域ほど、脳血管疾患死亡率が低くなっていました。医療の供給量が増えると、アクセスが容易になって、早期受診や医療機関
での2次予防が充実することになり、脳血管疾患死亡率が低くなると考えられます。

・健康教育参加率など老人保健事業実施率の高い地域ほど高いのは地域格差のせいか?
 本来ならば、基本健康診査受診率、健康教育参加率及び健康相談参加率などの老人保健事業の実施率の高い地域や、事業の担い手である保健婦数が多い地域は、健康意識や社会衛生環境が高いはずですから、脳血管疾患死亡率が低くなると予想されていました。しかし、解析では真逆の結果で、保険事業の実施率が高いほど、また、人口10万人対保健婦数が多い地域ほど、脳血管疾患死亡率が高くなっていました。これは、健康水準が低い地域では死亡率を下げるために、積極的に各種の事業を実施することが求められますが、老人保健事業の主体は市町村であるために、都道府県単位の分析では地域による格差を十分に考慮出来なかったせいだと考えられます。

実は地域の医療格差が大きい

 厚労省が脳梗塞で亡くなった人の死因を年齢調整した死亡率(標準化死亡比)の人口1万人以上市区町村で比較してみました。

 県内(市区町村)格差の大きい県(2008年~12年)

都道府県

男性

都道府県

女性

佐賀

3.73倍

沖縄

5.11倍

熊本

3.38倍

埼玉

4.90倍

埼玉

3.34倍

愛知

4.39倍

福井

3.28倍

北海道

4.35倍

秋田

3.19倍

新潟

4.06倍

宮崎

3.13倍

熊本

3.92倍

沖縄

2.93倍

福岡

3.61倍

愛知

2.92倍

山口

3.51倍

京都

2.85倍

茨城

3.42倍

北海道

2.76倍

岐阜

3.12倍

福島

2.72倍

福井

3.11倍

山口

2.66倍

鹿児島

3.11倍

新潟

2.60倍

京都

3.07倍

兵庫

2.59倍

青森

3.06倍

※グレーは男女とも3倍を超えた県です

 脳梗塞の治療は血管を詰まらせた血栓を除き、脳内に血流を再開させるまでの時間を如何に短くさせるかが勝負です。血栓溶解剤「t-PA」を点滴で血管内に投与する時間は発症から4時間半までと定められています。ですが、この「t-PA」を投与するには、CT(コンピューター断層装置)やMRI(磁気共鳴画像装置)を備えた上で、出血の合併症のリスクを検査できることが条件です。脳卒中の専門チームの24時間体制の待機施設が整っている地域は限られるので、表で上位の県はそれがネックとなって、地域間格差として現れてきているのでしょう。

急性期を乗り切っても油断大敵(合併症で死亡する)

 脳卒中は一般に、発症前から機能障害のある場合、重症脳卒中の場合、高齢者の場合などに、呼吸器感染、尿路感染、転倒、皮膚損傷など急性期合併症の頻度が高くなります。合併症があると死亡率に限らず、機能的転帰も悪くなるので、積極的な合併症予防と治療に取り込むことが推奨されています。また、理学療法や呼吸リハビリテーションを積極的に行うことは、肺炎の予防にも繋がります。
 また、急性期脳卒中の3%で消化管出血が起きて、その半数は重症になり、特に高齢者や重症の脳卒中患者では合併症に注意し、抗潰瘍薬(H₂受容体拮抗薬)の予防的な静脈内投与が推奨されています。体温が上昇した場合は、解熱薬投与によって下げた方が良いでしょう。

筋トレ・リハビリで死亡率を下げよう!

 2017年11月7日、アメリカで興味をひく記事が載せられました。「筋トレで全ての病気の死亡率を減少させる」と云う、朗報でした。シドニー大学が発表したもので、「筋トレと病気による死亡率に関する8万人の大規模疫学的研究を成果を見てみましょう。

・筋トレはがんや全ての病気の死亡率を減少
 2013年、アメリカのスローンケタリングがん研究所が世界で初めて筋トレとがんの死亡率の関係を明らかにしました。18歳から81歳のがん患者男女2,863名を対象にレジスタンストレーニング(筋トレ)によって死亡率への影響を調査しました。平均7.3年におよぶ追跡調査の結果、トレーニングを1週間に1回以上している場合は、しない場合と比べて死亡率が33%減少するという驚きの結果が出ています。この結果から、研究所は日常生活での身体活動の増加はがんの死亡率を減少させるエビデンス(証拠、根拠)だとして、筋トレをもっと行うよう推奨していました。
 そして、2016年にミシシッピ大学が20歳以上の男女8,772名を対象に、平均6.7年の追跡調査の結果で、継続的にトレーニングを行えば、しない場合と比べて全ての病気の死亡率が23%減少すると示されました。また、毎日のトレーニングでは長期的に継続することは難しく、週2~3回のトレーニングが継続には最適な頻度であると推奨しています。
 2017年にはシドニー大学が30歳以上男女80,306名対象と云う大規模調査で、週2回以上トレーニングと週150分以上の有酸素運動が与える「がん」と「全ての病気」による死亡率への影響を調べました。 結果は、がんの死亡率が31%減少、全ての病気の死亡率は23%減少と云うものでした。またトレーニング環境について云うと、「ジムでのトレーニング」と「家での自重トレーニング」では、がんの死亡率で同じような減少効果を示しましたが、両方で行うとさらに死亡率が減少しました。今回のこの結果は、ジムに行かずに、家で腕立て伏せやスクワットなどの自重トレーニングによっても、ジムでのトレーニングと同じ死亡率が軽減することで、トレーニング人口の増加を後押ししているようです。
 トレーニングが死亡率を減少させるメカニズムとしては、トレーニングによって血圧低下、糖尿病のリスク低下、グルコース代謝の改善、全身性炎症の減少、抑うつ症状の軽減、認知機能の改善、そして筋肉量の維持増加によって、死亡率の軽減に寄与すると推測されています。

 皆さんも、いかがでしたか。週2回の筋力トレーニングで健康な体とハッピーライフを手に入れましょう。

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