基礎知識

日々危険に晒される脳

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 脳も体の一部ですから、毎日の食事は脳にも大きな影響を与えています。きちんと食べなければ、脳も健康ではいられません。でも一方で、脳梗塞の原因となる生活習慣病を恐れて、身体に良かれと始めたダイエットが、脳にダメージを与えることにも成り兼ねません。そんな、日々の生活で知らず知らず陥る、脳へのダメージについて、ご紹介します。

脳へのダメージ

脳内の炎症→慢性疲労症候群

 疲れが他人より強いが検査では異常が見られない、外から見ると、ただ怠けているだけにしか見えない状態であっても、実はその背景に「慢性疲労症候群」と診断される症状が隠れている場合があります。研究の結果、慢性疲労症候群の患者さんには、脳内に広い範囲で炎症を起こしていることが解明されました。脳内で起こる炎症は、けがをした時に皮膚が赤く腫れるような状態で、健常者の脳でもある程度は起こります。でも、無理をすると炎症の度合いが強くなって、脳の神経がダメージを受け、回復が困難になっていくと考えられます。
 主に、視床、中脳、橋、海馬、扁桃体や帯状回と云われる部位での炎症が増えます。脳がその負荷などから回復するのに睡眠はとても大事なものですが、そこが障害されていると、回復の為の休みが取れず、脳がずっと働いたままの状態で疲弊し炎症が続くのです。そこで簡単なことでも無理をしているように感じてしまうのです。慢性疲労症候群になり易いタイプの方は、こだわりの強い人、ストレスに対しいい加減に出来ず、突き詰める人が多いようです。対処法としては、「睡眠のリズムを崩して、慢性化させるのは避けましょう。レベルを一旦落とし、午前中は日光を浴び、ホルモンは夜に立ち上げるよう脳の中のリズムを作ります。また、調子の良い日も6~7割程度にとどめ、悪い日でも出来る運動から始められるレベルを持続すること」が良いでしょう。

脳が錆て、夏バテ

 鉄が酸化して錆びるように、人間の脳細胞も酸化することで、錆びたようにボロボロになる現象が起きます。夏の暑さなどで自律神経中枢がダメージを受けて、活性酸素が細胞を酸化させて錆びたようにボロボロになるのです。それで、自律神経失調症の症状のような食欲不振やふらつき、倦怠感などの夏バテの症状が現れます。自立神経中枢は体温を一定に保つ働きがありますが、夏の暑さや温度差が大きな負担をかけて、肌のシミなどの老化の原因となる活性酸素が発生するのです。

夏バテ防止にはこれ!

 夏バテにはまず、自律神経の回復が一番ですから、「エアコンの使用を控える」「水分補給」「睡眠」などを徹底させるとともに、栄養補給が非常に重要です。中でも、ビタミン類の補給が夏バテの早期解消につながります。また、活性酸素を除くのに効果が高い栄養素としては、トマトに含まれるリコピンが良いでしょう。夏の食事メニューにはトマトを積極的に取り入れ、普段からトマトジュースを飲む心掛けが大切です。

アルコール依存症で脳の萎縮

 「嫌なことがあった日は、パーっと酒でも飲んで、憂さを晴らさにゃ。だって、気心の知れた仲間と飲んでバカ話でもすれば、気分も晴れて、またやる気になるから」。でも、どうしてお酒を飲むと気分が良くなるのでしょう? それは、アルコールが脳を麻痺させるからです。嫌なことや辛いことを忘れられるのは、アルコールの持つ精神を安定させる作用のせいなのです。適量であれば、お酒には血行促進作用などのプラス面もあり、健康増進効果も期待出来ます。でも大量飲酒を続けると、脳が慢性的な麻痺状態となり、思考力や判断力、記憶力などがドンドン低下していくのです。アルコール依存症の症状の一つの「脳の萎縮」が進行すると、「コルサコフ症候群」と云う病気になり、痴呆の症状が出て回復が困難になってきます。大脳の麻痺では、「人間らしく生きること」や「本能的なこと」までもコントロールすることが出来なくなります。運動機能を司る小脳が麻痺すると、ふらつきや吐き気、嘔吐など、いろんな身体的症状が現れてきます。さらに、脳幹の麻痺では、意識がなくなり昏睡状態に、最悪の場合、命の危機さえ考えられます。だから、飲酒は自分に合った適量を決め、休肝日を設けて、ほどほどに心掛けましょう。

黒カビから脳梗塞の治療薬

 バイオベンチャーのティムスは、沖縄の西表島で見つけた黒カビで急性期脳梗塞の治療薬の開発に取り組んでいます。培養した黒カビから取り出した化合物が、血栓を溶かす体の働きを促進するのです。血管が詰まって起こる炎症を抑える効果があるので、脳梗塞発症後4時間半に制限されていた投薬時間を延ばせると期待され、アメリカの大手製薬会社バイオジェンと共同開発に向けた契約を締結しました。
 大阪の発酵研究所が見つけた「スキタボトリスミクロスポラ」と云う黒カビの株から、脳梗塞の治療に生かす効果がある化合物を作り出すことを突き止めました。現在の血栓溶解剤では、血管がもろくなって出血リスクが高まるので、投薬時間に制限がありました。でも、ティムスの開発する治療薬は発症後12時間まで活用の幅が広がると期待されています。
 バイオジェン社から一時金400万ドルを受け取り、開発や販売が成功すればさらに資金が得られると云う契約を結んだティムス社では、「創薬には時間がかかるが、早ければ5年後には実用化のめどが立つだろう」と、話しています。

脳の栄養不足には要注意

人の脳は大食漢

 人間の脳の重さは体重の約2%ですが、脳の消費エネルギーは活動時約25%を占め、1日の総エネルギーの4分の1を使っています。進化の過程で人類は、だんだん脳を大きくしてきました。人間の脳には、必要なエネルギーや栄養が得られるものに対して、「美味しいから、もっと食べたい」と感じて、ドーパミンやβエンドルフィンと云われる、快感を感じさせる脳内物質が出ます。と云うのは、これらの食べ物には脳が必要とする栄養素「炭水化物(ブドウ糖)」や「タンパク質(アミノ酸)」、「脂質」がたっぷり含まれているからです。

脳の基本栄養は、ブドウ糖とアミノ酸と脂質

・ブドウ糖:頭を使うと甘い物が無性に食べたくなりますよね。これは脳が利用できるただ一つのエネルギー源であるブドウ糖を欲しがっているからです。脳にはブドウ糖を蓄えて置く仕組みがないので、常に一定のブドウ糖を脳に供給する必要があります。ブドウ糖を多く含む食品は、ご飯やパン、砂糖などです。健康の為に極端に糖分の摂取を減らすと、脳以外の細胞にブドウ糖が取り込まれるのを制限しようとして、脳がインスリンの働きを低下させるので、かえって糖尿病のリスクを高める危険があるので、注意が必要です。

・アミノ酸:脳内に運ばれて、神経伝達物質の原料として使われます。必須アミノ酸のトリプトファンは、脳内でセロトニンとなり、精神安定の働きをします。摂取不足になると、うつ病になり易いと云われています。

・脂質:コレステロールと、脂肪酸につながって出来る中性脂肪は、神経細胞の膜など、脳の構成成分として利用されます。特に必須脂肪酸のARA(アラキドン酸)は、脳機能を高め、神経細胞の増殖を促す可能性が報告されています。コレステロールは脳以外に性ホルモンなどの原料にもなります。性ホルモンには、脳を刺激してセロトニンを増やす作用もあります。女性ホルモンの減少でセロトニンが少なくなると、生理前のイライラや更年期のうつ症状が増えると考えられています。
健康を意識しすぎて、控える人も多いようですが、脳の健康を考えて、肉や卵なども敬遠せずにバランスよく食べることが大切ですね。

抗酸化物質を毎日取り入れる

 ブドウ糖やアミノ酸、脂質に加えて、抗酸化物質も積極的に摂りましょう。アルツハイマー病や脳梗塞の発症・進行に、老化の原因とされる「酸化」の関与が指摘されるので、抗酸化物質の重要性が高まってきています。アルツハイマー病ではβアミロイドと云う異常タンパク質が蓄積して、脳にしみのような老人斑を作ります。この老人斑が活性酸素を放出することで、健全な神経細胞が障害され、血管にも血栓が出来やすくなります。またその血栓からβアミロイドの基になる物質などが放出されて、また老人斑を増やすと云う悪循環が繰り返されるとされています。
 抗酸化物質でも脳に対して効果があると期待されるのが、ビタミンCやβ-カロチン、アスタキサンチン、α-リポ酸、ビタミンEなどです。ビタミンCやβ-カロチンは野菜などから比較的簡単に摂取出来ますが、日常的に摂り易く優れた抗酸化食品としては、ゴマがおススメです。ゴマにはビタミンE以外に、ゴマリグナンと云う微量成分が含まれています。ゴマリグナンの含有量はゴマ全体の1%に過ぎませんが、強力な抗酸化活性があり、ゴマ油が他の食用油より酸化し難いのは、この作用のせいです。1日スプーン1杯を、すりゴマなどにして、消化・吸収を良くして食べると良いとされています。

ヨード不足が脳の発育に影響

 胎児期から幼年期においてヨードが不足すると、脳障害を引き起こす主な原因の一つとなり、神経的・精神的障害が起こり、子どもの知能指数(IQ)が8~10下がると、ユニセフが発表しています。危険に晒されている赤ちゃんの数では南アジアが最も多いのですが、人口の87%はヨード添加塩を摂取出来ています。東アジアや太平洋地域の91%に次いで二番目の割合となっています。最も割合が低いのが東部・南部アフリカの25%で、毎年390万人の赤ちゃんがヨード欠乏症の危険に晒されています。生まれて1,000日に、守られ、遊びや早期学習などの良い刺激となる活動と一緒に得られる栄養が、生涯に渡る脳の発育を形作ります。

身体に溜まった重金属が病気の元

 オーガニックを選び、普段からバランスの良い食事に心がけているあなたでも、重金属が身体に知らず知らず蓄積されていることには、気づいていないかも知れません。重金属は食品や水、空気、化学薬品などに含まれ、私たちの身の回りに溢れています。危険で辛い症状の上に、アルツハイマー病やパーキンソン病のほか、神経系や脳の病気など、いろんな病気を引き起こす危険があります。健康食品に気を使い、運動もしっかりやっているのに、どうも調子が悪い、頭が冴えない、消化に問題があるなどの心配を抱えている場合は、身体に重金属が蓄積しているかもしれません。

身体に悪い4つの重金属

 私たちの身体に必要な鉄分、亜鉛、銅、マンガン、クロムなどでも、多く摂り過ぎる場合は問題もありますが、人体に被害の大きい4つの重金属と云えば、ヒ素、鉛、水銀、カドミウムです。

① ヒ素:最も毒性が高い重金属で、化学薬品工場などの大気汚染や殺虫剤のも含まれ、大きな社会問題にもなったことがありました。自然界でも水や魚介類にヒ素が含まれることがあるので、注意が必要です。中には成長促進や寄生虫防止、見かけを良くするために鶏のえさに混ぜることもあったようです。嘔吐や頭痛の症状があり、ヒ素を長期に摂取すると、腎不全、皮膚病など多くの症状が出てきます。

② 鉛:絵具やクレヨン、おもちゃなどに含まれる鉛は、子どもがおしゃぶりして鉛中毒になって知的障害を引き起こすと云われるので、十分注意が必要になります。その他にも、塗料やケーブルの外部被膜、X線シールド、殺虫剤など身の回りの多くのものに使われています。体内の鉛レベルが高まると、脳や腎臓、骨、神経系、心臓血管、生殖器系、胃腸など、人体各所に悪影響を及ぼします。

③ カドミウム:且つては「イタイイタイ病」の元凶と云われ、脳と心を蝕むのがカドミウムです。産業廃棄物に多く存在し、以前は自動車部品にもよく使われるなど、私たちの生活に影響を与えていました。自然の中にも存在し、土中に含まれるカドミウムが米などの農作物を通して体内に取り入れられることになります。日本で初となる公害病「イタイイタイ病」の症状は疼痛で、腰痛・筋肉痛から始まり、腎臓障害、骨軟化症、骨粗鬆症が起こり、患者さんの発した声から「イタイイタイ病」と名付けられました。摂取による急性中毒の症状では、吐き気や嘔吐、下痢などがありますが、これはすぐに回復します。ただ、徐々に蓄積されると、腎臓や骨に悪影響が出てくるのです。近年、食生活の変化により、一般的な日本人における食品からのカドミウム摂取が健康に悪影響を及ぼす可能性は低いと云えます。
呼吸器から体内に入るリスクとして、喫煙があります。タバコを1日20本吸うと、1~2μgのカドミウムが体内に蓄積されますが、喫煙者が15%の煙を吸うのに対し、残りの85%は大気中に放出されます。従って、受動喫煙の害は無視できないものがあります。また、カルシウムや鉄、亜鉛、タンパク質が不足するとカドミウムが補うので、長年に渡って体内に蓄積されると、呼吸器系や皮膚などにいろんな症状が出てくると云われています。

・カドミウムから体を守る:亜鉛が体内に十分あると、カドミウムは取り込まれないので、亜鉛を含む食品の摂取が大切です。牡蠣、うなぎ、ホタテ貝、牛肉(もも肉)、鶏レバー、納豆、アーモンドなど。

④ 水銀:水銀は元々火山の噴出物から自然界に拡散し、最終的に水の中に入るので、魚介類を通じて私たちの体内に入ります。工業廃棄物の投棄が原因で、水俣病が起こったことはよく知られていますよね。水銀中毒は中枢神経や腎臓、口腔などに影響が出て、手足のしびれやふるえ、歩行障害、うつ病、急性なら胃や腹部に激しい痛み、嘔吐や下痢などの消化機能に症状が現れます。

身体に良くない重金属を避ける身近な方法

・キッチンで使うもの:テフロン加工やアルミの鍋には有害物質が含まれるので、鉄やチタン、ガラス製のものを選びましょう。お玉も同様ですね。

・洗剤:有害な添加物の無い自然なもの、精油などを使った手作りの物が良いでしょう。

・化粧品:多くの化粧品や制汗剤にはアルミニウムが含まれますが、アルツハイマー病を引き起こすリスクがあると云われる金属なので、成分表示を確かめて選びましょう。

・殺虫剤:殺虫剤や除草剤は人体やペット、環境にも良い影響はないので、ナチュラルなものを選びましょう。

・歯の詰め物:所謂、銀歯(銀色のアマルガム)には水銀が入っています。虫歯の時の詰め物には、レジンやポーセリン、セラミック、ゴールドなどが薦められます。

毒性の重金属を排出させるもの

・アリウム属の野菜:自然のキレート剤である硫黄が重金属イオンに付着して、消化排出してくれるので、玉ねぎやニンニク、らっきょう、エシャロットなどのアリウム属の野菜が有効です。コリアンダーやクロレラも同様の働きがあります。新鮮でオーガニックなものを選びましょう。

・水分補給:毒素排出の為にも、水分補給は重要です。水道水ではなく、フィルターを設置したりして、安全なミネラルウォーターが良いでしょう。

・発汗:水分補給後は、ゆっくり腰湯に浸ったり、スチームバスやサウナで汗をかいて、デトックスしましょう。

いかがでしたか、現代社会において、日々ストレスに晒される私たちの脳。そんな様々なストレスに打ち勝つ、「ストレスに強い脳」を作るには神経伝達物質であるドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリンなどの感情バランスをコントロールするために、食事を始めとする日常の生活習慣が大切なのですね。

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