リハビリ

その痺れなんとかなるかも?脳卒中発症後の痺れの原因とは?

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脳卒中後の痺れの原因

 脳卒中の後遺症には、麻痺側の手足や顔面の痺れを多くの方が訴えます。痺れを感じる原因は脳の中で正常な感覚処理が出来なくて、ビリビリとかジンジンとかいった不快な痺れと誤認しているからです。一般的な痺れは一時的なものですが、脳卒中の後遺症の痺れは、いつも感じているので日常生活に影響が出てきます。
症状としては、食欲不振、ノイローゼ、うつ状態、不眠症 などが現れてきます。

2つの痺れの感覚

・感覚低下・・・感覚が麻痺して痛みや温度の感覚などを感じなくなります。
大脳の感覚中枢などに障害が起こったために、感覚が鈍くなったり、感覚が鈍くなったことで痺れを感じたりします。感覚障害の結果、痛みを感じず、また、熱い湯に触れても熱く感じなかったりなど、大怪我に繋がることがあります。

・異常な感覚・・・ジンジンする、ピリピリする感じです。運動障害が生じます。
これも、大脳の感覚中枢などに障害が起こったために、些細な刺激もしくは刺激が無くても脳が異常な痛みや刺激として認識してしまいます。
手足は麻痺のため、運動不足になりがちで筋肉が固くなってくると血行不良のために痺れが出てきます。体がむくんで更に悪化してしまうので、適度に体を動かしましょう。

脳卒中の後遺症の痺れは感じる方によって違い、また、長く続くので辛いものです。

他の原因との区別と対処法

 手足の痺れと云っても、ピリピリとした正座の後のようなものや、自分の手足ではないような鈍い感覚、力が入らない、などいろいろな異常があります。脳卒中では骨関節、神経や筋肉含め全身、精神的にも過大な負担が生じるため、手足の痺れが様々な原因で悪化します。悪化や後遺症のことを考えた場合、手足の痺れが脳にあるとすれば、命にも関わることもあるので、早急に適切な対応が必要となります。ここでは、注意すべき度合いと緊急度の高い順に挙げて行きます。

・1-真っ先に脳の原因を疑うこと

 脳卒中を発症された後に、痺れはよく起こる症状の一つで、気候や気圧、その時の精神状態で物凄く変動します。痺れの症状が悪化した場合、手足の麻痺や他の症状を伴っていないと、医療機関では画像検査などもせずに様子を観るようにお願いされる場合が多いです。
しかし一方で、痺れが悪化した場合、最も危険で、早い対応が必要になる可能性もあります。それが、脳卒中の再発あるいは一過性脳虚血発作です。一過性脳虚血発作は脳の血管が詰まり易くなっている場合、一時的に血流が悪化することで、発作的に手足の痺れを起こします。数分から数時間で手足の痺れは治まることが多いのですが、これは脳梗塞の前触れだから、決して放っておいてはいけません。早急に精密検査を受けましょう。
また、突然、強烈な手足の痺れを発症した場合は、脳卒中の再発といった緊急事態が予想されます。半身だけ手足が痺れる場合は、脳腫瘍の疑いもあります。いずれにしても早急に主治医に相談しなければ、後遺症が悪化したり、最悪死に至ることもあります。

・2-同時に脊髄の検査をしましょう

 脳腫瘍と同じく、半身に手足の痺れが現れた場合、脊髄の腫瘍も考えられます。脊髄に出来た腫瘍が神経を圧迫することで、手足の痺れや痛み、筋力の低下と云った症状が出てきます。脊髄の腫瘍は脳腫瘍よりはるかに少ない腫瘍ですが、腫瘍が進行することで、体の一部の感覚がなくなったり、排便・排尿をコントロール出来なくなったりなど、非常に恐ろしい症状が出ますので、小さいうちに治療することが大事です。脳と脊髄は万が一異常があった場合の深刻さが高いので、まず、真っ先に検査を受けましょう。

・3-頸椎の原因を疑いましょう

 手足の痺れが特に片手、片足の場合に、最も頻度が高いのが頸椎周囲の病気、頸椎椎間板ヘルニア、変形性頸椎症の2つです。
頸椎椎間板ヘルニアは脊椎の間の椎間板が断裂し、中身が出て神経を圧迫する病気です。
変形性頸椎症は加齢によって脊椎が変型し、神経の出る場所が狭くなって、頸椎椎間板ヘルニアと似た症状が出る病気です。
これら2つの病気治療は、まず安静にして経過観察を行い、痺れがあまりに強かったり、麻痺が見られるなど重篤な場合のみ、手術を行います。大半の場合、鎮痛剤を服用して、安静にすることで回復が見込まれます。

・4-腰椎の原因

 頸椎椎間板ヘルニアと似た手足の痺れを発症するものに腰椎異常があります。ただ、頚椎異常と比べると、片足に起こることが多いようで、腰椎椎間板ヘルニアと変形性腰椎症の2つの病気が原因です。
これら2つの腰椎の病気も、頚椎と同じように経過観察を行います。足が麻痺したり、排尿が困難な場合は手術を検討しますが、多くの場合、安静することで治って行きます。
片方の手や足に痺れが集中する場合は、頚椎又は腰椎の異常に注意する必要がありますが、脳や脊髄ほど慌てることはありません。原因が頚椎又は腰椎の異常だと判明すれば、腰を据えてじっくり治療に専念しましょう。

・5-末梢神経の原因

 手のひらだけ、足の裏だけが痺れる場合は、末梢神経が傷ついているかもしれません。
主に親指から薬指までが痺れる手根管症候群は手首のあたりで正中神経が圧迫されて起こりますし、薬指と小指が痺れる場合は肘の内側で尺骨神経が圧迫されていることもあります。また、足首で脛骨神経が押されて足の裏が痺れると足根管症候群になります。これらは、夜中や朝起きた時に起こって、手足のしびれや痛みでしばしば目を覚まします。
圧迫された神経の感度を鈍らせるためにブロック注射や理学療法を行いますが、症状の重い場合は手術が必要な時もあります。

・6-内科系疾患による神経障害

 #1~5まで原因を探った結果、脳、脊髄、頚椎、腰椎、末梢神経のどこにも異常が見られなかった場合は、糖尿病や甲状腺機能障害と云うような内科系疾患による神経障害かもしれません。内科系疾患による手足の痺れは外科的でない分、突然ではなく、徐々に進行します。この場合、手術や注射で対処が出来ないので、原因となる内科系疾患を根気よく治療して行かねばなりません。進行がゆっくりだからと云って放置するのは危険で、例えば糖尿病による神経障害では、最悪、手足の指が壊死することも考えなければなりません。強い意志を持って生活習慣を見直すと云った長期の治療を覚悟しましょう。

・7-心の病

 近年多くなっているのが自律神経失調症やうつ病などで手足の痺れが出てきたことです。多大なストレスなどで自律神経が正常に働かず、血流が悪くなって各神経が酸欠状態になり手足が痺れてくるのです。心の病を自覚することは非常に難しいですが、手足の痺れが心の変調を知らせてくれていると思ったら、ストレスを減らして、規則正しい生活を心掛け正常な自律神経を回復させましょう。

最も重要なポイントは、脳卒中後の手足の痺れの増悪はよくあることです。しかし、痺れの増悪を感じたら、まず急いで主治医に相談し、必要に応じて脳と脊髄の精密検査を受けましょう。一刻一秒の事態でないことが判れば、次はじっくりと他の原因を探ってください。頸椎や腰椎の神経系が原因なら、神経の近くにメスを入れるのはリスクを伴い、痛みに長時間耐える治療となるので、専門医と相談して適切な治療を受けましょう。

治療法

 脳または脊髄に障害があり、末梢の侵害受容器からの入力がなくても、あたかも受容器が刺激されている様に痺れが出現する場合があります。この痺れに対しては、通常の痛み止めなどがあまり効かず、内服薬(抗けいれん薬、抗うつ薬、筋弛緩薬、コルチコイド、ベンゾジアゼピン系抗不安薬)、痙縮治療、注射薬(ボツリヌス療法、バクロフェン髄注療法)、漢方薬、交感神経節神経節ブロック、硬膜外ブロック、トリガーポイント注射、反復経頭蓋的磁気刺激療法、再生医療などが行われています。

内服薬

抗けいれん(痙攣)薬

 ガバペンとリリカは国際的な標準治療薬で(NNT=4程度)、他の補助薬に比べると抗コリン性の副作用(便秘、口の渇き、立ちくらみ、胃部不快感など)が少なく、眠気を生じることがあります。リリカは用量調整がし易く、内服数も少なくて済み、神経障害性疼痛で保険適応が受けられますが、ガバペンはてんかんの保険適応しかありません。効果の幅はいずれも大きくなく、検証では開始後5日程はガバペンを加えた方が有効な患者さんが多いようでしたが、それ以降にはあまり差が見られませんでした。
テグレトールもてんかんのお薬ですが、同時に痺れに対して優れた緩和効果を発揮します。しかし、これは根本的な治療ではありません。半永久的に飲み続ける必要があります。テグレトール100mgから始めて、200~400mgへ漸増も標準的(NNT=3程度)ですが、眠気、ふらつきを生じることが多く、致命的なアレルギー反応や血球減少を引き起こすこともあります。国内ではリボトリール0.5~1mgもしばしば用いられますが、数日後に蓄積性の眠気を生じることがありますが、大きな副作用はないと云うことで、不眠の場合には使いやすい治療薬です。

抗うつ薬

・TCAs(三環系抗うつ薬)
トリプタノール10mgで始めて、25~75mgへ漸増するのが最も標準的(NNT=3程度)の鎮痛補助薬です。全身状態が不良/高齢者の方では、せん妄、眠気、便秘などの抗コリン性副作用が多く生じます。欧米ではノリトレン、国内ではアモキサン10~50mgも用いられます。

・SNRI(セロトニン、ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)
サインバルタ20~60mが化学療法による痛みを伴った「痺れ痛さ」の神経障害性疼痛に対して有効とされています。副作用では吐き気が出ることがあります。

●鎮痛補助薬のNNT/NNHとは何?
NNTとは、「Number needed to treat」の略で、「一人に治療効果を得るために何人を治療する必要があるかを示す指数」で、少ない方がより有効な薬剤と云えます。
NNHは、「何人に投与したら1名の合併症を生じるかを示す指標」なので、大きい方が安全な薬剤となります。

痙縮((筋肉のつっぱり)治療

 手足のつっぱり(痙縮)に対して、内服薬や注射薬などいろいろな治療法があります。
症状や治療目的を考えて、リハビリとこれらの治療法を組み合わせて行います。

・内服薬(飲み薬)
内服薬(飲み薬)には神経に作用して、神経伝達の興奮を抑えて筋肉の緊張を和らげるものや、筋肉に作用して、筋肉の緊張を和らげる働きのものがあります(テルネリン、リオレサール、ダントリウムなど)。内服薬(飲み薬)は痙縮に対しての初期治療としてよく使用されます。薬は医師の指示に従い、勝手に服用をやめたり、多くを服用したり、服用時間を守らないなどを行わないようにしましょう。服用後、気になる症状が出たり、他の病気で薬を飲む場合などは、医師と相談しましょう。

・テルネリン錠
筋肉の緊張が強いと血流が悪くなり、痛み物質が生じるなど悪循環に陥ります。筋肉の緊張を和らげ、鎮痙作用(痙攣を抑える作用)を有する薬がテルネリン(一般名:チザニジン)です。「脳から脊髄を通り、筋肉へと命令が伝わる過程」を遮断します。筋肉を緊張させる「過度の興奮」が脊髄に伝わらないように遮断することで、筋肉の緊張緩和に繋がります。

・リオレサール錠
脊髄に作用して、過剰な筋肉反射の原因となる神経伝達を抑えて、脳や脊髄の損傷によって起こる筋肉のつっぱりやこわばり、麻痺を軽減します。通常、脳血管障害、脳性(小児)麻痺、外傷後遺症などによる痙性麻痺の治療に用いられます。副作用として眠気を起こすことがあるので、車の運転や危険を伴う機械の操作は行わないでください。その他、脱力感、吐き気、食欲不振、ふらつき、めまい、頭痛、発疹などが報告されています。筋骨格の緊張による疼痛には、リオレサール1.5Tで始めて、3~4T/日 増量すると良い場合があります。

・ダントリウム錠
骨格筋の収縮を抑えることにより、筋肉のこわばり・麻痺などを和らげる薬です。また、骨格筋や中枢神経のカルシウムイオン濃度を抑え神経伝達物質のバランスを補正します。痙性麻痺に対しては通常、成人は1日1回1カプセル(主成分として25mg)より服用し始め、1週ごとに1カプセル(25mg)ずつ増やし(1日2~3回に分ける)、維持量を決めます。ただし、1日最高服用量は6カプセル(150mg)として、3回に分けて服用します。

・注射薬(ボツリヌス療法)
筋肉を緊張させている神経の働きを抑えるために、ボツリヌス菌が作り出す天然のたんぱく質(ボツリヌストキシン)を有効成分とする薬を筋肉内に注射します。
【期待できる効果】

  1. 手足の関節が動かし易くなるので、日常生活の動作が楽になります。
  2. 関節が固まって動きにくくなったり、変形するのを防ぎます(拘縮予防)。
  3. 介護の負担が軽くなる。
  4. リハビリがやり易くなる。
  5. 痙縮による痛みが和らぎます。

 ボツリヌス療法で筋肉の緊張が和らいでも、リハビリを行わなければ機能の回復は望めません。ボツリヌス療法とリハビリを並行して、継続することで日常生活の動作が行い易くなると期待できます。ボツリヌス療法の効果は徐々になくなるので、治療継続の期間中は年数回、注射を受けることになります。効果に持続期間には個人差があるので、専門医師と相談しながら、治療計画を立てて行きましょう。

・バクロフェン髄注療法(ITB療法)
バクロフェン(上記、リオレサール錠)は中枢性筋弛緩剤の第一選択ですが、内服し血中濃度が上がっても、作用部位の脊髄周囲の髄液濃度は上がりにくいです。不必要な化学物質が中枢神経に届かないように脳の血管が特殊な構造をしており、バクロフェンが通過しにくいためです。そこで、1984年にアメリカの脳外科医のペン先生が、痙縮の元になっている脊髄に直接投与する事で、効果を強めるとともに、飲み薬で生じる眠気などの副作用を減らすことができる画期的な治療方法を開発されました。このバクロフェン持続髄注療法を行うには、バクロフェンを少量ずつ24時間持続して脊髄腔に注入するためのポンプが必要であり、このポンプを腹部に埋め込むための手術が必要になります。ただし、強力な薬剤が投与され続けることになるため、手術が必要になること、ポンプの管理に手間がかかる、感染が起これば大変なことにもなり得ます。効果とリスクを考慮して選択する必要があります。どの医療機関でも可能の治療ではないので、まずは主治医との相談が必要になります。

漢方薬

・続命湯
漢方の古典「金匱要略」には脳卒中の後遺症に良い(飲むリハビリ薬)と記されています。続命湯は脳卒中の後遺症でよく現れる言葉のもつれ、手足の痺れなどに用いられる処方です。経験的には、発作後の服用が早ければ早いほど症状の回復を早めます。
当帰(トウキ)、川芎(センキュウ)、桂皮(ケイヒ)の3つが主薬で、脳や手足をはじめとする全身の血液循環を改善し、痺れや麻痺感、言葉のもつれを除く作用があります。麻黄(マオウ)と石膏(セッコウ)の利水作用で、浮腫を去り主薬の血液循環の改善を助けます。他には、消化吸収力を良くして全身の運動能力を高める、人参(ニンジン)、甘草(カンゾウ)、生姜(ショウキョウ)の補気薬、杏仁(アンニン)の止咳去痰で、言葉のもつれの改善に協力します。

交感神経節ブロック療法

 交感神経節ブロック療法は神経や神経の周辺に局所麻酔薬を注射して、痛みの伝わる経路をブロックすることで痛みを取り除きます。痛みが緩和されることで血流がよくなり、筋肉のこわばりがなくなります。一回で完治するものではないので、薬物療法と併用して複数回実施します。

・星状神経節ブロック
首の付け根、喉のあたりにある「星状神経節」と云う交感神経の節に局所麻酔薬を注射して、交感神経の機能を一時的に抑えます。

硬膜外ブロック

 背骨の下の方(腰のあたり)に局所麻酔薬を注射して、脊髄を覆う「硬膜」の外側にある「硬膜外腔」に麻酔薬を注射して、神経に作用して痛みをとります。

トリガーポイント注射

 押すと強い痛みを感じる筋肉に直接、局所麻酔薬や鎮痛薬を注射して、痛みなどをとります。

反復経頭蓋磁気刺激療法(γTMS)

 磁気によって大脳を刺激して、大脳の神経活動性を変化させる装置を使って、患者さんの頭部の皮膚の上から磁気をあてます。体が傷つくことはなく、痛みなどの苦痛も伴いません。脳卒中の後遺症に対して反復経頭蓋磁気刺激療法(γTMS)を用いる場合は、痛みを感じている脳の神経活動性を変化させることで除痛を目指すことになります。
γTMSは2008年米国FDAがうつ病に対して認可し、その後も研究、改良が続けられており、ヨーロッパでは疼痛治療、リハビリテーション治療に認可がおりています。疼痛に関しては、高頻度γTMSによる患側運動野刺激が有効として欧州のガイドラインはレベルAに推奨するまでになっています。我が国では、未だ研究段階である上、保険適応外(自費診療)ですが、脳卒中後疼痛に対して治療効果があったとする報告は徐々に増えてきています。

再生医療

 脳梗塞後の後遺症の分野でも、再生医療の治療法が現在開発されています。生体に投与するのに一番実用的である間葉系細胞に限っても、より効果のある細胞の分離・培養、遺伝子導入といった更なる発展が期待出来る治療法です。しかし、脳卒中後疼痛に対する再生医療の効果は現状不明であり、見込めないと考えておくのが妥当だと思います。

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