リハビリ

脳卒中からのリハビリとはどんなものがある?期間とその方法。

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脳卒中後のリハビリについて

 リハビリは障害で生じた生活の不自由さを少しでも減らして、自分らしい生活を送るための訓練です。障害のなかった頃の元の状態に戻ることを目指すのではなく、「一つずつ出来ることを増やす」「身の回りで、自分の出来る動作を増やす」など、焦らないで前向きに、自分の生活に合った目標を立てて、リハビリを継続することが大切です。まずは、日常の動作で困っていることや、よくなればこんなことがやってみたいなどを、専門医に伝えることから、始めてください。

リハビリの流れ

 脳卒中のリハビリは急性期、回復期、維持・生活期の3つに分かれ、段階に応じて進められます。以前は、脳卒中発生直後は、安静にしていたものですが、最近はなるべく早くリハビリを始めた方が回復状況がよいと判り、発症直後から始めるようになりました。

【急性期のリハビリ】(発症直後~数週間くらい)

 脳卒中ユニット、脳卒中リハビリユニットなどの組織化された場で、医師・看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・社会福祉士などリハビリテーションチームによる集中的なリハビリテーションが行われます。

 不動・廃用症候群を予防し、早期の日常生活動作向上と社会復帰を図るために、十分なリスク管理のもとに出来るだけ発症後早期から積極的なリハビリテーションを行うことが脳卒中ガイドラインでは強く推奨されています。その内容には、早期からの座位・立位、装具を用いた早期歩行訓練、摂食・嚥下訓練、セルフケア(食事・更衣・整容・トイレ・清拭)訓練などが含められています。

 急性期リハビリテーションにおいては、高血糖、低栄養、痙攣発作、中枢性高体温、深部静脈血栓症、血圧の変動、不整脈、心不全、誤嚥、麻痺側の無菌性関節炎、褥瘡、消化管出血、尿路感染などの合併症に特に注意する必要があります。

1-ベッドの上で手足を動かす

・手の指のつけ根の関節や指の関節をゆっくり反らした

り、曲げたり、回したりします。
・足首を外側にゆっくり反らしたり、内側に曲げたり、回したりします。
2-ベッドの上で座る姿勢を保つ
・ギャッジベッド(※ベッドの上半分を上下させることで、患者さんの背中を起こし、姿勢が変えられるベッド)などを利用して、座位を保ちます。この時、膝を軽く曲げれば、体がすべらず、安定します。

【回復期リハビリテーション】(数週間~数カ月くらい)

 移動、セルフケア、嚥下、コミュニケーション、認知などの複数領域に障害が残存した場合には、急性期リハビリテーションに引き続き、より専門的かつ集中的なリハビリテーションが行われます。

 転帰予測による目標設定(短期ゴール、長期ゴール)、適切なリハビリテーションプログラムの立案、必要な入院設定などを行い、リハビリテーションチームにより包括的なアプローチが行われます。

 合併症及び併存疾患の医学的管理を行いながら、脳卒中で生じるさまざまな障害や問題に対して各種検査(レントゲン、MRI、CT、採血、尿検査、心電図、嚥下造影)、薬物療法、理学療法、作業療法、言語聴覚療法、装具療法、手術療法などを併用し、リハビリテーションが行われます。

脱水、誤嚥性肺炎、尿路感染、胆嚢炎がよく起こる時期であり、リハビリテーションを一時的に中断するケースもあります。

1-手すりを持って歩行訓練を行います。
2-着替えの訓練を行います。
・麻痺のない手で、麻痺側の袖を通す。
・首の後ろから衣類を反対側へ引っ張って、麻痺のない側の袖を通す。

【維持期リハビリテーション】(数か月~6カ月目以降)

 回復期リハビリテーション終了後の慢性期脳卒中患者に対して、社会参加促進、QOLの改善を図ることを目的に筋力、体力、歩行能力などの維持・向上を目指します。そのためには、訪問リハビリテーションや外来リハビリテーション、地域リハビリテーションの導入を検討されるべきです。

 個々の患者の障害・ニードに対応したオーダーメイドのリハビリテーション・アプローチを行うべき時期です。障害・ニードは変化するため、随時変更していく柔軟性が求められます。

Q1-リハビリできる期間は決まっているの?

 回復期リハビリ病院へ入院できるのは、「脳卒中発症後2カ月(60日)以内の患者」のみで、入院中は最長3時間のリハビリを毎日受けられます。病院でリハビリを受けられる期間は150日(重度の場合で180日)以内と定められています。

 もっと長くリハビリを行いたいのが、患者さんや家族の願いでしょうが、残った運動神経を興奮させて、失われた機能を回復させるという理論があり、そのメカニズムが発症直後~3ヶ月ほどと認められているからです。実際にはもっと改善する期間は長いのですが、確かに一番リハビリの効率が良いのはこの時期になります。ですから、発症直後に早期にリハビリを始め、いかにこのメカニズムを効率的に利用するかがポイントになるわけです。

それでは、期限以降もリハビリを続けるにはどうすればよいのでしょう?

① 医療保険で継続する場合

・算定日数を超えても、維持目的でリハビリは続けられますが、原則月13単位までです。「1単位=20分のリハビリ」なので、外来1回1時間(3単位)のリハビリで、頻度はおおよそ月4回、週1回のペースになります。

治療を継続すれば改善が期待できると医学的に判断された場合は、標準的算定日数(1日6単位でリハビリが受けられる日数:150日or180日)を超えても、標準的算定日数と同じ6単位のリハビリが受けられます。具体的にこれがしたいという到達可能な目標がはっきりしていれば(麻痺した手で物を押さえたい、手を広げて洗いたいなど)、期限を超えても外来リハビリを継続する場合は少なくありません。

② 介護保険で継続する場合

・医療保険と違って、リハビリ日数に制限はありませんが、保険内支払いの場合は、要支援度1。2。要介護度1~5の等級によって月額支給額の上限が異なるので、注意してください。

・介護保険で受けられるリハビリには2種類あります。

1-通所介護(デイサービス)、通所リハビリ(デイケア)
 通所介護では施設に通って入浴、排泄、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練が行われます。通所リハビリと遜色ない程度までリハビリ設備を充実させ、療法士の人員配置を厚くするといったリハビリ特化型なども出てきています。運営主体は特別養護老人ホーム、NPO、社会福祉法人、株式会社と様々です。医療保険と介護保険のリハビリは併用出来ないことになっているため、医療保険を利用して外来リハビリや訪問リハビリを行っている方はデイサービスでのリハビリ継続が有用でしょう。

 通所リハビリでは介護老人保健施設、病院、診療所にて、その心身の機能の維持回復を図り、日常生活の自立を助けるためにリハビリテーションが行われます。リハビリ設備は充実しており、療法士の人員配置も厚く、医師まで配置されています。1~2時間といった短時間でのプランもあり、自主トレーニングに加え、療法士がマンツーマンで個別に付くリハビリを受けられます。只、療法士が個別で付く時間は20分程度ですので、回復期病院のような集中的なリハビリとは格段に異なります。

 通所介護、通所リハビリとも介護保険を利用しますが、施設によって基本料金や滞在時間が異なり、体制加算なども含まれてしまうため、料金にはかなり幅が出てしまいます。

2-訪問リハビリ
 一般的には介護保険を利用します。自宅へリハビリスタッフが訪問し、実際の生活場面で必要な動作をリハビリで強化します。1週間に個別で受けられる訪問リハビリの時間は120分までと決まっています。そのため、1回40分であれば週3回まで、1回60分であれば週2回までリハビリを受けることが出来ます。定められた料金にプラス体制加算や交通費なども請求されます。また、退院後2か月以内や下記の方は医療保険での訪問リハビリが利用出来ますが、介護保険利用での訪問リハビリや通所介護は併用出来ません。

  • 末期の悪性腫瘍
  • 多発性硬化症
  • 重症筋無力症
  • スモン
  • 筋萎縮性側索硬化症
  • 脊髄小脳変性症
  • ハンチントン病
  • 進行性筋ジストロフィー症
  • パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病(ホーエン・ヤールの重症度分類がステージ3以上であって、生活機能障害度がⅡ度またはⅢ度のものに限る)
  • 多系統萎縮症(線条体黒質変性症、オリーブ橋小脳萎縮症およびシャイ・ドレーガー症候群)・プリオン病
  • 亜急性硬化性全脳炎
  • ライソゾーム病
  • 副腎白質ジストロフイー
  • 脊髄性筋萎縮症
  • 球脊髄性筋萎縮症
  • 慢性炎症性脱髄性多発神経炎
  • 後天性免疫不全症候群
  • 頸髄損傷
  • 人工呼吸器を使用している状態及び急性増悪期の場合

3-訪問看護
 訪問看護と銘打っていますが、理学療法士・作業療法士等のリハビリを受けることが出来ます。自宅へリハビリスタッフが訪問し、実際の生活場面で必要な動作をリハビリで強化します。この場合は、利用に当たり上限はありません。可笑しい制度だとは思いますが、役立つのであれば利用しましょう(苦笑)。

4-医療保険を利用した『あんまマッサージ』
 医療保険を利用します。あんまマッサージ師が自宅へ訪問し、マッサージを行なってくれます。単なるマッサージにとどまらず、変形矯正療法といって四肢や関節のストレッチを行なうことも出来ますので、筋肉に緊張がある方や関節が固まっている方は利用してみても良いと思います。

5-自費で続ける場合
 日数制限はありません。病院、クリニック、老人保健施設、訪問リハビリや訪問看護をしているところに依頼されるのが一般的です。保険適応分を超える分を自費で支払う必要があり高額になりますが、受けられるリハビリの量を増やすことは出来ます。上を併用することで比較的リハビリの量を増やせると思いますが、経済的に余裕のある方は検討してみて下さい。

リハビリ時期の準備について

① 介護保険を申請する

 通常、介護保険でサービスを利用するには要介護認定を受ける必要があります。市役所の介護保険課に行き、要介護認定を受けたい旨を申告して下さい。主治医に主治医意見書を記載して貰い申請することになりますが、お役所仕事ですので1か月以上かかってしまう場合も多いです。サービスが利用出来ないと、退院が長引いたりすることにも繋がるので早めに市役所に行かれることが必要です。

② 介護・リハビリの指導を受ける

 入院や治療を受けている医療機関に、介護・リハビリの指導を受けたい旨を相談して下さい。担当の療法士や看護師に時間を合わせて貰って、リハビリなどの状況を見せて貰い、具体的なアドバイスを貰って下さい。リハビリの方法だけで無く、車いすの乗り移り、トイレ動作の方法、歩行の方法、オムツの交換方法、口腔内ケア、痰の吸引方法、経口摂取の方法、胃ろうの管理といった介護指導をしっかり受けておかれると凄く役立ちます。

③ 住宅改修・改造

・玄関・出入り口

敷居などの段差解消、スロープ、昇降機、腰掛け、手すり、滑り難い床材

・通路・廊下・階段

上記以外に、引っかかりを除いた床材、車椅子の通れる幅の確保、足元灯、必要に応じてエレベーター

・居室

上記以外に、動き易いスペースの確保

・便所

敷居などの段差解消、扱いやすいノブや取っ手、カーテン扉、車椅子の通れる幅の確保、洋式便器・ウォシュレット

・浴室

上記以外に、浴槽高さ350~400㎜、深さ550㎜程度、シャワー椅子、水栓・シャワー位置の工夫、本人と介護者の動き易いスペースの確保

◎介護中心か、リハビリの視点に立つかによっても住宅改修の内容が変わります。利用者の機能回復や能力の維持に努めるとともに、介護者の立場に立った介護し易い環境を作ることで、無理のない自宅生活が可能になります。

④ 身体障害者手帳

・通常、脳卒中の発症後6か月程度経たないと障害が固定された(障害が変わらない)と判断されないため、早めに申請しても認定を受けられません。

・「厚生労働省 身体障害者手帳の概要 等級表」で検索し、自分が障害対象か、どの区分にあたるかを確認しましょう。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/shougaishatechou/
・障害が永続しないと考えられると認められない場合があります。
・再認定で等級が変わることもあります。
・指定医師による診断書・意見書が必要です。
・公布まで通常で1ヶ月半ほどかかり、4ヶ月に及ぶこともあります。
 ・詳しい手続きについては、市役所の障害福祉課に問い合わせ、またはホームページで確認しましょう。

⑤ 精神障害者保健福祉手帳

 脳卒中により高次脳機能障害となった場合、精神障害者保健福祉手帳が交付され、3つの等級に応じて、以下の援助が受けられます。

1-保育・教育・就労面の援助
2-各種サービス・割引
3-税の減免・控除や給付
※取得後も2年ごとに更新が必要です。詳しくはお住まいの福祉事業窓口まで。

⑥ 生活保護

 申請すると、必要に応じて各種費用に対応して扶助が受けられます。

  1. 生活扶助
  2. 住宅扶助
  3. 教育扶助
  4. 医療扶助
  5. 介護扶助
  6. 出産扶助
  7. 生業扶助
  8. 葬祭扶助

※詳しくは、お住まい地域の生活保護担当の民生委員や福祉事務所に問い合わせて下さい。

病院には一般的に医療相談室(地域支援室)などがあり、相談員が専門的に相談にのってくれますので、上①~⑥、経済的なこと、心理的なことなんでも含めて聞いて見て下さい。きっと味方になってくれます。

施設の説明

※「みんなの介護」を参照してください。

https://www.minnanokaigo.com/guide/type/grouphome/

① 介護老人保健施設

 病院と自宅の中間的施設で、専門スタッフによるリハビリを通じて、入居者が在宅復帰することを目的としています。

・原則65歳以上で、「要介護1級」が条件、入居期間は3~6カ月程度となっていますが、1年以上も可能なところもあり施設によって異なります。終身利用は不可ですので、入所時点で退所後のことも念頭に置いてください。本人や扶養義務家族の世帯収入、その他の条件により、負担額は変わります。
・看護師や理学療法士、管理栄養士などの専門スタッフがサポートして、自宅復帰を目指します

② 特別養護老人ホーム

 特別養護老人ホーム(特養)は、公的に運営された介護施設で、病気や障害などによって在宅での生活が困難な高齢者の公的介護サービスとして、入居出来る介護施設ですが人気が高く、なかなか入居できない現実があります。
○メリット

・費用が安い、半額相当が医療費控除対象になります。
・長期入所も安心、終身利用も可能です。
・24時間の介護体制、夜間介護の必要な方にも安心です。
○デメリット
・原則要介護3以上、必要性の高い方を優先するためです。
・医療体制が万全でない処もあります、医療依存度の高い場合は入居できないことがあります。

③ グループホーム

 グループホームは、認知症(痴ほう症)の症状を持ち、病気や障害で生活の困難な高齢者が専門スタッフの援助のもと、1ユニット(5~9人)で共同生活する介護福祉施設です。
○入居条件 ・原則65歳以上、要支援2、または要介護1以上の介護認定を受けていること。
・施設の所在地と同じ市区町村の住民(住民票があること)に限ります。
○介護・医療面
・認知症の正しい知識を持った介護スタッフは常駐しますが、医療面でのケアは行っていないので、共同生活が困難な方は、入所が難しいことがあります。

④ サービス付き高齢者専用賃貸住宅

 サービス付き高齢者専用賃貸住宅の特徴は、マンションやアパートのような集合住宅が基本です。
・バリアフリー構造になっています。
・原則25㎡以上の広さを確保しています。
・介護福祉士やヘルパーが常駐しています。
・(ケア付き)有料老人ホームのような入居一時金はなく、敷金+家賃+サービス料金のみで、費用面では安心です。

⑤ (ケア付き)有料老人ホーム

 看護や医療ケアを必要とする医療依存度の高い方には、24時間看護師常駐型の施設がおススメです。入居する要介護者3人に対して、介護職員1名以上、同時に利用者30人未満の場合、看護職員1名以上の配置が義務付けられています。
・たん吸引、インスリン対応、IVH(中心静脈栄養)、鼻腔栄養の受け入れる施設も多くあります。
・24時間看護師常駐型の施設はほとんどが都市部に集中しています。

Q2-回復期リハビリはどこで受けられる?

 急性期を脱しても、まだ医学的・社会的・心理的なサポートが必要な患者さんに、多くの専門スタッフがチームを組んで、集中的にリハビリを実施し、社会復帰を目指して頂く目的の施設が各地にあります。今までの診療経過が必ず必要になるので、まずは治療を受けた医療機関(医療相談室など)に相談して下さい。また、あらかじめどの様な施設があるのか、お住まいに近い病棟は、各ホームページで検索できます。
「回復期リハビリテーション病棟協会」 など

Q3 -リハビリの時期に経鼻栄養や胃ろうは必要ですか?

 「経鼻・経管栄養」はチューブやカテーテルなどを使って、胃や腸に必要な栄養を直接注入することです。  脳卒中で機能障害を起こして、口から物を食べられなかったら、「経鼻・経管栄養」という選択肢があります。  「経鼻栄養」は鼻の穴から食道や胃にチューブを通しますが、胃に穴を開けてチューブを通すのを、「胃ろう」と云います。  ちなみに腸の場合は「腸ろう」と云います。経静脈栄養より管理がしやすく、介護者の負担が比較的軽くなります。  誤嚥などの危険性が少なくなり、消化器官の働きを維持できるメリットがある反面、穴を開けると云う外科手術が必要です。  経鼻栄養が通常1か月程度続く場合は、経鼻チューブを抜いて胃ろうを入れてあげる方が、本人の苦痛も少なく誤嚥などのリスクが減ることになります。点滴栄養では十分な栄養にはとても満たず、リハビリの効果も十分には見込めなくなってしまいます。

リハビリを始めよう!

① 高次脳機能評価やリハビリとはどんなもの?

 高次脳機能障害は脳卒中などで脳損傷を受け、後遺症として生じた記憶障害、注意障害、社会的行動障害など認知障害を指すと定義されています。つまり、一般的には、身体に障害がないか、軽いにもかかわらず、特に記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害と云った認知障害のせいで、日常・社会生活にうまく適応できないことを云い、脳卒中が原因の頻度が最も高いです。
・神経心理学的検査
比較的短時間のスクーリング検査と、時間をかけて詳細な情報を得る掘り下げ(ディープ)検査があります。損傷部位や症状によって、いろいろな検査を組み合わせて行います。
・高次脳機能障害のリハビリ
高次脳機能障害の症状は外見上では判り難く、客観的な評価が重要です。入院中に現れた症状や障害だけにとらわれず、実生活でどのような障害があるかを早く把握して、障害された能力を代償する手段を提案することで、実生活での障害の軽減・解消が出来るように援助することが大切だと考えます。

② 摂食・嚥下体操とはなに?

1-摂食嚥下障害の症状

  • 食事中によくむせる(特に水分でむせることが多く、味噌汁などを避けだす。)
  • 食事中以外でも突然むせる、咳き込む(唾液でむせる)
  • 飲み込んだ後も、口腔内に食べ物が残る。
  • ご飯より麺類を好むようになる(噛まなくてよいものを好む)
  • 水分をとりたがらない(尿量が減った)
  • 発熱を繰り返す(誤嚥性肺炎の疑い)など

2-嚥下体操 嚥下に関わる首や肩、胸部、口腔器官の運動を行って、嚥下し易くするための体操です。以下のホームページを参考に行ってください。

「健康長寿ネット」

「摂食嚥下障害の訓練法」

③ 構音訓練って、何?

 人は下顎、舌、唇、軟口蓋などを動かし、声の通る道の形を変えることで話し言葉を生み出します。この生み出す過程を「構音」と云い、一般的に「発音」と呼ばれます。
1-運動性構音障害
脳卒中や頭部外傷、その他、神経や筋に病変が生じることで、話すことに必要な運動機能が障害された場合を云います。

2-構音訓練

パ・タ・カ・ラを各音8回ずつ早く大きな声で発音する。(パパパパパパパパ)

構音訓練を行って食べる機能を高めます。「パ」-食べ物の取り込み、「タ」-送り込み、「カ」-飲み込み、「ラ」-食塊形成の機能を高めます。

④ 関節可動域訓練・筋力訓練とはどんなもの?

 関節可動域(ROM=Range Of Motion)とは、体の各関節が生理的に運動できる最大範囲を角度で示すものです。関節可動域(ROM)を測定することで、関節に異常がないかを調べられます。
1-測定のメリット
・障害程度の判定ができる。
・関節可動域が狭くなっている原因を発見できる。
・治療効果を判定できる。
2-筋力訓練(ROM訓練)
・自動運動―患者さん自身で動いてもらう。
・多動運動―看護師など第三者が動かす。
※注意点

(1)無理に力を入れて関節可動域を広げない。
(2)疼痛が強くならないように、患者の表情やバイタルサインに注意する。
(3)1つの動作に5~10秒かけて、ゆっくり行う。
(4)1つの訓練は10回程度行う。
※訓練内容は「ナースのヒント」

関節可動域(ROM)の看護|測定法・テスト、ROM訓練や看護のポイント

図表を参照してください。
※他動運動では、関節を段階的にストレッチすることの出来るネジがついた装具(ターンバックルなど)を使用して行う方法もあります。装具を付けることで持続的に関節をストレッチ出来るので、拘縮の矯正などでは有用ですが痛みの原因や皮膚トラブルにも繋がるため、それなりの注意が必要です。

⑤ 基本動作訓練・日常生活動作訓練とはなに?

 基本動作とは、普段日常的に行っている動作で、仰向けの状態から、寝返り→起き上がり→座位→立ち上がり→歩行までの日常生活に欠かせない基本動作のことです。 

日常生活動作訓練(ADL訓練)の具体的な方法

 食事、整容、着替え(更衣)、トイレ、入浴などの日常生活で必要な動作が安全に出来る様に、患者さんの障害・生活環境に合わせた方法を見出し、獲得するための訓練です。場合によっては、お風呂用の椅子や、ベッド、リフトなどの福祉機器選択のアドバイスがなされます。これらの訓練は,早期の座位が不安定な時期から開始し、座位での動作が安定した後も、必要な場所に移動して出来る、立位で出来るなど、より実践に即した訓練が行われます。

 

・食事動作

 一定時間安定して座る→両手を使って食器を操作する→食べ物をとる→食べ物を口に運ぶ→食べ物に向かって上体を近づける→十分に咀嚼して誤嚥のないよう安全に飲み込む。以上の一連の動作を練習していきます。食具には、すくいやすい皿や、つかみやすい箸などが市販されていますので、持ちやすい食具なども積極的に試します。また、注意力障害がある方にはパーテーションを立てたりして食事に集中出来る様に配慮したりもします。

 

・更衣動作

 障害の程度などで方法は異なりますが、麻痺が重度であっても、麻痺がない手を使い練習します。麻痺のない手で麻痺側の袖を通す→首の後ろから衣類を反対側へ引っ張って、麻痺のない側の袖を通す→ボタンを留めるといった感じで、患者さんが着替え易い方法を考え、一連の動作を繰り返し練習します。最初はうまくできず時間がかかりますが、あせらずゆっくりと訓練していきましょう。

 

・排泄動作

 尿意や便意を理解し訴える→便器へ移動する→安定した移乗・立位動作→ズボン等を上下させる→排尿・排便する→後始末をする。実際にトイレ内で一連の動作を練習していき、何故出来ないのかを分析することで出来る方法を探り練習していきます。自発的な尿意や便意のない人でも時間誘導で排泄運動を促すことで、習慣づけと自発性の改善を図ることが出来ます。自宅のトイレまで移動することが困難な方はポータブルトイレでの練習が必要になることもあります。

 

・整容動作

 洗顔、整髪、歯磨き、髭剃り、化粧などの身なりを整える動作です。これも、各一連の動作で出来ないところを見つけ、何故出来ないのかを分析した上で練習していきます。洗面台前に座る→歯磨き粉を歯ブラシに付ける→歯ブラシをする→コップに水をくんで口を濯ぐ。歯ブラシを電動歯ブラシや握り易い柄の歯ブラシに変えたりするなども有用です。

 

・入浴動作

 障害の程度などで方法は異なりますが、入浴し易い方法の検討が必要です。例えば、入浴の際には浴槽にバスボードを渡しておきます。患者さんは椅子に座り、麻痺のない足から浴槽に入れ、バスボードに一度座ってから浴槽内に移ります。手すりにつかまりながら、ゆっくりとお湯に入ってください。からだを洗う場合はブラシを使い、バスタオルにはループを付けると作業がしやすくなります。

自宅でリハビリの心構え

◎ご本人とご家族が力を合わせて、一歩ずつ着実にステップアップしていこうという意識が大切です。

 

後遺症の重さの程度は、脳の損傷の場所や程度によって様々なので、必要なリハビリ期間は患者さんによって異なります。リハビリを週2.3回として、早い方は1ヶ月で効果を実感できる方もいれば、1年以上かけてじっくり取り組む必要があるケースもあります。一般的に、脳卒中の患者さんは、今まで元気だっただけに、「早く元の体に戻ろう」と、機能回復の結果を性急に求め過ぎるきらいがあります。それが思うように進まないと、自暴自棄に陥ることもあります。専門クリニックの医師とよく相談して、家族の協力と共に、着実にプランをこなして行くことが、結局は回復の近道になることをよく理解してください。

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