基礎知識

脳卒中のリハビリで利用できる社会福祉制度①

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―――精神障害者保健福祉手帳って何?―――

 脳卒中を発症すると、その度合いや発症してから治療までの時間が長いと、後遺症が残ってしまうことがあります。後遺症が残ると、長期のリハビリには家族の介護が不可欠となってきます。特定の方だけに負担がかかって、疲労や精神的負担が過度にならないよう、利用出来る公共の社会福祉制度は大いに利用しましょう。

医療保険法

 脳卒中の後遺症によるリハビリ期間は、老人医療無料化の時代にはずっとリハビリを受け続けられましたが、次第に期間が短縮され、今では回復期リハビリテーション病棟で150日間が最大とされています(高次脳機能障害を伴う場合などでは180日)。150日を超える場合は、この期間以内に適切な次の場所への退院の手続きを進めることになります。自宅退院出来る方は、それまでに自宅の環境を確認・整備して、自宅に帰る準備を進めます。仕事復帰される方は職場環境や仕事内容を確認して、実際に復職出来るかを確かめることになります。自宅退院が叶わない場合は、次の施設などを見学して、あなたに合った介護、リハビリ施設を探すことになります。

介護保険法

 少子高齢化や女性の社会進出が増えるにつれ、働きながら自宅で介護をすることが難しくなってきた社会に合わせて、平成12年に介護保険法が施行されました。加齢や後遺症などによって要介護状態に陥った方が、必要な福祉サービスや保健医療サービスを受けることで、その方の持つ能力に応じて自立生活が送れる事を目的としています。それ以後、介護予防の重視、給付金の見直しなどが行われ、「医療・介護・介護予防・住まい・生活支援」の5つのサービスを住み慣れた地域で支援するなどの見直しが行われました。

介護保険制度

 介護保険法に定められた介護保険制度は、高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みになっています。加入者(被保険者)は、40歳~64歳までの「第2号被保険者」、65歳以上
の「第1号被保険者」に分かれ、国民健康保険や健康保険組合、年金などから保険料を支払います。そして、訪問介護などの在宅サービスや、老人福祉施設などの施設サービスの利用が必要の方たちを支え合います。

介護サービスを受けられる条件

【40歳~64歳までの「第2号被保険者」】
要介護、要支援状態が末期がん、関節リウマチ、加齢による特定疾患の場合に適応されます。もちろん、脳血管疾患も含まれます。

【60歳以上の「第1号被保険者」】
原因を問わず要介護、要支援状態の場合に適応されます。

障害者総合支援法

 正式名称は「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」と云います。以前、平成18年施行の「障害者自立支援法」と呼ばれた、障害者がサービスを受けながら自立した生活を送る為の法律がありました。これは対象者が身体障害者、知的障害者、発達障害を含む精神障害者とされ、必要なサービスを利用でき、働きたい方には就労先の確保をする支援が含まれていました。それから発展して、障害者の人権や尊厳、障害があっても分け隔てなく他の人々と共生し、支援が受けられると云う基本理念のもと、平成25年に障害者総合支援法が施行されました。この法律では、支援を受けられる対象者に、130疾患の難病と関節リウマチの方が追加され、支援が必要とされる、より多くの方々へサービスが提供出来るようになりました。

精神障害者保健福祉手帳って何?

 精神障害者保健福祉手帳は1995年10月に制定と、療育手帳や身体障害者手帳より比較的新しく作られたものです。これを所持する方は一定程度の精神障害があることを認定され、自立し、社会参加を積極的に行えるよう、いろんな制度やサービスの利用が受けられます。各都道府県と政令指定都市により発行され、平成24年度末統計で69.5万人を超える方が交付を受けています。取得すればいろんなサービスや割引・給付が受けられたり、教育や就労にあたって配慮や支援を受け易くなります。

対象となる精神疾患

・統合失調症 ・非定型精神病 ・そううつ病 ・てんかん ・中毒精神病 ・精神遅滞を除く器質精神病 ・高次脳機能障害 ・精神神経症状を伴う発達障害
※発達障害に関しては、WHO(世界保健機関)の「ICD--10」(「国際疾病分類」第10版)にて精神疾患のカテゴリーに含まれているので、精神障害者保健福祉手帳の交付対象となっていますが、二次障害による精神症状の有無など、交付判定には細かい基準が定められているので、詳しくは市区町村の担当部署に相談してください。尚、精神障害者保健福祉手帳を受け取るには、精神疾患があると診断された日から6ヶ月以上経過していることが条件になります。
 脳卒中の場合、高次脳機能障害(注意障害、記憶障害など)を合併されるケースが極めて多いです。精神障害者という名前がついてしまっている手帳ですが、身体障害者手帳の適応が無い状態であっても、高次脳機能障害という診断があればこの精神障害者保健福祉手帳を取得出来る可能性があります。麻痺などの障害の残存が無く身体障害者手帳の適応が無くても、精神障害者保健福祉手帳を取得出来れば、下記の様に経済、保育・教育・就労面での優遇処置を享受することが出来ます。取得したり、維持するのには多少の手間がかかりますが、この手帳を取得したことで一般企業に就職されたり、生活の幅が拡がった方が多数おられます。

等級の区分

・1級―精神障害があって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの(概ね障害年金1級に相当します)

・2級―精神障害があって、日常生活が著しく制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの(概ね障害年金2級に相当します)

・3級―精神障害があって、日常生活もしくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活もしくは社会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの(概ね障害年金3級に相当します)

等級判定基準

・1級―精神障害により、常に誰かの援助なしでは生活を送ることが困難に感じられる状態。
例:外出や食事の用意、入浴などの身の回りのことを一人では行えない。

・2級―誰かの助けを借りなくても、一人で外出したり、障害者自立支援法に基づく就労支援や、小規模作業所などで単純作業が出来る状態。ただ、予想外の出来事の発生など、本人がストレスを感じる状況に直面した場合には対処しきれないこともあります。
例:普段の日常生活では誰かのアドバイスや助けを借りて、家事をこなしているが、部屋の片付けや身の回りの清掃などを一人で行うことは難しいと感じてしまう。

・3級―一人で外出したり、障害者自立支援法に基づく就労支援や、小規模作業所などに参加出来て、一定の配慮がなされた職場では一般就労も出来る場合があります。でも、本人が過大なストレスを感じる状況では、一人で問題を解決するのが難しいことがあります。

これらの判定基準はあくまでも目安で、申し込み後、各都道府県・政令指定都市・市の精神保健センターの審査によって、何級が適当であるか判定されます。例えば、判定基準が2級で、医師からにも2級相当の症状であると診断されても、精神保健センターの審査によって3級と認定される場合もあります。

精神障害者保健福祉手帳のメリット

① 保育・教育・就労面での援助
【保育園への入園】
自治体によっては、子ども本人や保護者が精神障害者保健福祉手帳を持っている場合や、精神障害者保健福祉手帳を持っていて介護が必要な家族がいる場合には、保育園の入園順位が高くなって、入園しやすくなることがあります。

【特別支援学校への入学】
特別支援学校を入学希望する場合、子どもの障害程度の証明として、精神障害者保健福祉手帳の写しの提出を求められることがあります。

【就労面での援助】
精神障害者保健福祉手帳の所持者は、特定求職者雇用開発助成金や障害者トライアル奨励金、障害者雇用奨励金などの支給対象となる場合があります。障害があることの資料として提示すれば、就労移行支援を利用する際に、スタッフの支援を受けながら、自分に合った仕事を探すことが出来ます。また、一般枠の雇用枠だけでなく、障害者雇用枠への求人応募が出来て、就労の可能性が広がります。

② 各種サービス・割引が受けられる
【精神障害者居宅生活支援事業】
精神障害があって、日常生活を送る上で支障がある方に、市区町村が地元の事業所と協力して提供される、ホームヘルプサービスなどがあります。支援希望の家庭にホームヘルパーが伺って、掃除、洗濯、調理などの家事支援を行ったり、買い物の付き添いなどの身体介護、通院の付き添いなどの外出介護などのサービスを行います。これらのサービスに精神障害者保健福祉手帳が必ず必要というわけではありませんが、所持していれば申請を比較的スムーズに行えます。申請方法やサービスは市区町村により異なる場合があるので、お住いの自治体に問い合わせてみてください。

【各種料金の割引・減免】
〇NHK放送
取得者が世帯の構成員で、世帯全員が市町村民税非課税の場合は受信料が全額免除になります。精神障害者保健福祉手帳1級の取得者が世帯主で、かつ受信契約者である場合は、半額免除となります。

〇公共交通機関の運賃割引・減免
公共交通機関(バス、電車、タクシーなど)は精神障害者保健福祉手帳の提示により割引や減免される場合があります。でも、JRや航空運賃などでは適用されなかったり、各自治体によって制度が異なるので、利用には注意が必要です。

〇携帯電話割引
docomo、au、softbankなどの携帯各社による料金割引制度があります。

〇公共料金の割引・減免
水道代などの公共料金の基本料金が減免される場合がありますが、条件や割引金額は各自治体によって異なる場合があるので、確認が必要です。

〇災害時支援
災害発生時に一人で非難が難しい障害のある方には、身の安全確保のための「災害時要援護者支援制度」を実施している自治体において、精神障害者保健福祉手帳の区分などの条件を満たせば、支援が受けられます。

〇各種施設でのサービス・割引
レジャー施設(映画館、遊園地、プールなど)では、精神障害者保健福祉手帳の提示によって無料や割引などのサービスが受けられる処もあります。また、利用がスムーズになるよう配慮やサービスが期待できます。

③ 税の減免や控除、給付に役に立つ
【税制上の優遇措置(障害者控除・税の減免)】
〇所得税控除
納税者本人が障害者の場合、障害者控除として27万円(特別障害者は40万円)が所得金額から差し引かれます。控除対象配偶者又は扶養親族が障害者の場合、1人当たり27万円(特別障害者は1人当たり40万円)の障害者控除などが受けられます。
控除対象配偶者又は扶養親族が特別障害者で、納税者またはその配偶者もしくは納税者と生計を共にする親族のいずれかと常に同居している場合、障害者控除として1人当たり75万円が所得金額から差し引かれます。

〇住民税控除
障害者控除として、26万円(特別障害者は30万円)が控除されます。

〇相続税の障害者控除
相続人が障害者の場合、85歳に達するまでの年数1年につき10万円(特別障害者は20万円)が障害者控除として相続税から差し引かれます。

〇自動車税・軽自動車税の減免、自動車取得税の減免
本人が1級の精神障害者保健福祉手帳を所持するなどの一定の条件を満たせば、申請によって使用する車について、自動車税・自動車取得税の減免が受けられます。

〇預貯金が非課税対象(マル優、特別マル優)
銀行などの350万円までの預貯金、貸付信託、公社債、公社債投資信託などの利子について、一定の手続きを経て非課税の適用が受けられます。これはマル優、特別マル優と呼ばれ、預け入れなどの際に、窓口に精神障害者保健福祉手帳を提示して確認を受けます。

【手当の給付】

障害者年金

障害によって生活に支障が出てしまった場合に支払われます。

種類

  • 障害基礎年金(受給対象者全て)⇒1・2級
  • 障害厚生年金(会社員の場合は障害基礎年金に上乗せ)⇒1~3級
  • 障害共済年金(公務員の場合は障害基礎年金に上乗せ)⇒1~3級

受給条件

次の3つの要件を全て満たす必要があります。
1. 国民年金に加入していること。
2. 一定の障害の状態にあること。
3. 年金保険料をしっかり支払っていること
(加入期間の3分の2以上支払っているか、直近1年間支払っている)

認定基準

大まかに分けると、

  • 日常生活が全く出来なければ1級障害
  • 日常生活が少し出来るならば2級障害

生活習慣病も悪化すれば障害認定される状態にまでなり得ます
〇特別障害者手当
精神または身体に著しく重度の障害があって、日常生活において常時特別の介護を必要とする、在宅の20歳以上の特別障害者に対して支給されます。目安として、概ね身体障害者手帳1,2級程度及び重度の精神障害が重複している方、もしくはそれと同等の疾病・精神障害のある方となっています。月額26,830円の支給ですが、病院又は診療所に継続して3ヶ月を超えて入院されている方、施設などに入所されている方には支給されません。また、所得制限もあり、申請者所得が所得限度額を超える場合や、受給者の配偶者・扶養義務者の所得が所得限度額以上の場合も、支給されません。

支給対象

  • 身体や精神に重度の障害がある在宅の人
  • 上記と同様の疾病を抱えている在宅の人
  • 特別介護が日常的に必要な在宅の人

支給月額例(厚生労働省 平成29年4月より適用)
26,810円

ただし、特別障害者手当を受給する当人やその配偶者、もしくは扶養義務者の所得が一定以上を超えた場合や、障害者支援施設等に入所している場合、病院などへの入院期間が3ヶ月を超えた場合には、手当てを受けられません。

障害者医療証は、かなり便利!

 身体障害者手帳に代表される各種障害者医療症には、公共料金や税金などで、いろんな優遇措置がとられています。対象者になると、病院や薬局で支払う3割の自己負担分が助成してもらえます。支払う医療費が、数百円だけになったり、実質無料になる地域もあります。このメリットは大きいです。この制度を利用するには、障害者医療証などの発行を受けるといった事前申請が必要な場合がほとんどです。
 居住する都道府県により受けられる割引や控除が異なっていますので、詳しくは最寄りの自治体や事業者の福祉関係の窓口で相談してみましょう。

助成例

(東京都)
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/iryo/josei/marusyo.html
医療費の1割を自己負担。
身体障害者本人の医療費が、1割だけの自己負担になります。
さらに、住民税非課税者の場合は、医療費の負担が無料になります。
実際、身体障害者手帳が1級・2級の重度の障害者は、働けない方が多いので、実質無料になる人が多い様です。

(大阪市)
http://www.city.osaka.lg.jp/fukushi/page/0000369437.html
1日あたり、自己負担は最大500円。
医療機関での支払いが500円を超える部分に対して、助成が受けられます。
この自己負担の500円は、月2日までの自己負担が限度です。
同じ月の3日目からは、自己負担はありません。
助成を受けるには所得制限があります。

精神障害者保健福祉手帳のデメリット

・精神障害者保健福祉手帳は、療育手帳や身体障害者手帳に比べると受けられるサービスや支援策が少なく限られる。
・周囲の理解が得られないかもと危惧して、精神障害者保健福祉手帳の所持を知られたくないと考えたり、取得をためらう方も少なくない。
※2年おきの更新は有効期限の3ヶ月前から申請でき、更新を続けることで、一生を通していろんな割引やサービスが受けられます。もしメリットが感じられなくなったら、更新時に返還することもできます。

※是非、ブログ(障害年金)も読んでみて下さいね。

いかがでしたか、
利用出来る公共の社会福祉制度は大いに利用して、長期のリハビリで本人や家族の疲労、精神的負担が過度に掛からないようにしましょう。
是非、参考にしてみてください。

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