高齢者が罹るてんかんと脳梗塞の関係について

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脳梗塞とてんかんの関係について

脳梗塞とてんかん、関係があることをご存知ですか?
てんかんは子どもの頃にかかる病気というイメージをお持ちの方は、二つを結びつけて考えたことはないかもしれません。
てんかんは確かに子どもの頃に発症することが多い病気ですが、実は高齢になってから発症することも少なくありません。
高齢になってからの発症には脳梗塞が関係することが多いのです。
ここでは、脳梗塞とてんかんについて解説します。

てんかんとは?子どもの病気だと思っていませんか?

てんかん痙攣
脳や人間の体には神経が通っており、脳から発せられた微弱な電気信号が神経を通じて全身に伝えられます。
私たちが思い通りに手足を動かしたり話をしたり、熱い、冷たいなど感じたりすることができるのは全て電気信号の働きによるものです。
電気信号を発生させ伝えるのが神経細胞の役割ですが、何らかの原因で電気信号が過剰に発生し、脳の正常な働きを阻害してしまうのがてんかんです。
電気信号が脳内で過剰に発生すると脳が過剰な興奮状態となり、意識がなくなり全身がけいれんしてしまうものから、手足や顔がつっぱる程度のものまで、様々な症状が発生します。
脳の過剰な興奮はあるタイミングで突然発生し、自然におさまるのが普通であるため症状は発作的なものになります。
てんかんは子どもの病気というイメージがある通り、発症は3歳以下が最も多く成人では減少するのですが、実は60歳をこえるとまた増加します。
0歳時点では人口10万人あたり約120人の発症率であるのに対して、30-40歳頃では25人前後と減少、ところが70歳をこえるとまた100人近くなるという報告があります。
てんかんは小さな子ども、そして高齢の方が発症することの多い病気です。

高齢の方に起こるてんかんの特徴で脳梗塞との関係

てんかんには過剰な電気信号を発生させる原因がはっきりわかるものとそうではないものがあります。
検査しても異常がみつからず、原因不明のてんかん発作を起こしてしまうのが「特発性てんかん」、出生時のトラブルや脳の異常がある場合に起こるのが「症候性てんかん」です。
特発性てんかんは子どもに発生することが多い一方で、高齢の方に発症するてんかんは症候性てんかんであることが多く、中でも多いのが脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などの脳血管障害です。
脳梗塞や脳出血を起こした場合、65歳以上の方がその後てんかん発作を起こす確率は50-75%とも言われ、非常に頻度が高い症状であることが分かります。
脳梗塞になると脳の神経の一部が障害され、機能を失うとともに異常な電気信号を発生する原因になりえるため、てんかん発作を起こすのです。
このように脳梗塞とてんかんには深い関係があります。

高齢、脳梗塞の方がてんかん発作を起こすとどうなる?

てんかん発作の症状は病状により差が大きく、数秒など短い時間だけ体の一部に症状が出る程度のものであれば、発作以外の時は普通にすごせるため生活に与える影響はそれほど大きいものではありません。
しかし意識を失い体中がけいれんするような発作を起こす場合、周囲のものなどにぶつかってけがをしてしまう可能性があります。
また発作に伴い呼吸が不十分になることも多く、発作が長時間に及ぶと脳に障害が起こる可能性があります。
脳梗塞の症状が悪化する可能性もあるため、発作が疑われる場合には病院受診を検討する必要があります。

てんかん、脳梗塞に対する治療とは

てんかんの発作が起きている時には、まず周囲にある危険物と思われるものをよける必要があります。
病院では、発作の最中に呼吸ができているかどうかを確認し、場合によっては呼吸を補助します。
発作が長引き、合併症のおそれがある場合、点滴から抗てんかん薬を注入し発作を抑えます。
一度てんかんの発作が起きた方は、抗てんかん薬の飲み薬を使用して発作を予防します。
脳梗塞によるてんかんのほとんどは1種類の抗てんかん薬で予防が可能と考えられています。

まとめ

高齢者に発症するてんかんと、脳梗塞との関連について解説しました。
高齢の方におこるてんかんはけいれんを起こさずに言葉が出づらい、ぼーっとしているなどの症状になることが多いとされています。
またてんかん発作を起こした方はそれをストレスに感じ、うつ症状を起こすことが多くあります。
派手な症状ではないため本人の様子を見ただけではてんかんとは分からず、周囲の人が認知症と間違えてしまうことがあります。
てんかんに関する正しい理解を持って、サポートしてあげたいですね。

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貴宝院 永稔【監修】福永記念診療所 部長 再生医療担当医師 ニューロテックメディカル代表
《 Dr.貴宝院 永稔 》
大阪医科大学卒業
私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。

脳卒中ラボ管理人

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脳卒中・脊椎損傷や再生医療に関する医学的見地から情報発信するブログとなっております。
それらの情報に興味のある方、また現在もなお神経障害に苦しむ患者様やそのご家族の方々に有益となる情報をご提供して参りたいと考えております。

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