軽度認知症の方の運転免許の取り扱いについて

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軽度認知症の方の運転免許証

軽度認知症の方の運転には、安全確認を怠るなどの特徴があることが知られています。
認知症が疑われる場合、最善の選択は運転免許証を自主返納し、運転履歴証明書を入手することです。
現在は75歳以上の免許更新時や認知症の方が犯しやすい事故をすると、認知機能検査を受け、結果に応じて医師の診察が必要となり、運転免許が取り消されることもあります。

軽度認知症の方の運転の特徴

軽度認知症
軽度認知症の方のなかには、そのまま自動車の運転を続けておられる方がおられるかもしれません。
そこで、まず軽度認知症の方の運転の特徴についてご紹介します。
軽度認知症と考えられる高齢者たちと認知機能に問題のない高齢者たちに自動車教習所のコースを走行してもらい、その挙動を比較して観察した研究があります。
その結果から、いくつかの特徴が抽出されました。

(出典:鈴木美緒. 軽度認知障害ドライバーの運転挙動と意識に関する基礎的研究. 公益社団法人日本都市計画学会 都市計画論文集 Vol.55 No.1 2020年 4月 https://www.jstage.jst.go.jp/article/journalcpij/55/1/55_11/_pdf/-char/ja)

一旦停止すべきところで停止できない

この調査では、一時停止線での停止、信号の遵守、踏切前での停止を遵守することが、事前に対象者に指示されていましたが、一旦停止のルールを遵守できない人が多くいました。
しかし指示されたルールを守ることが難しいのは、必ずしも軽度認知症の有無に影響を受けておらず、高齢者においてみられる傾向であることがわかりました。

安全確認が出来ない

軽度認知症の方に有意にみられた傾向として、安全確認やウィンカーによる意思表示なしでの車線変更がありました。
また障害物が目の前にあるときも、ウィンカーを使用しないで車線を変更しただけでなく、なかには障害物に接触したドライバーもいました。
さらに統計学的な有意差はありませんでしたが、車庫入れ時の脱輪も軽度認知症の方に多くみられました。
これらは、やや強引な運転挙動をとることの現れと考えられました。

他に気をとられることがあると運転が疎かになる

その他にも複数の指示が出されたり、他に気を取られることがあると、運転ルールの遵守が疎かになる傾向もみられました。
このように、軽度認知症の方の運転には安全確認がおそろかになるなどの特徴がありますが、実際は全員が安全に運転ができないわけではなく、なかには特に問題なく運転ができる方がおられることも事実です。
ただ、徐々に認知機能の低下が進行していると、運転能力も徐々に低下している可能性がありますので、定期的に確認する必要があるでしょう。

軽度認知症が疑われる場合の運転免許について

高齢者の運転
このように安全な運転が確実に保証できない場合、どのようにするのが良いのでしょうか?

運転免許証を自主返納する

軽度認知症が疑われる場合、本人も納得できるようであれば、運転免許証を自主返納することが最善です。
本人が、最寄りの警察署や運転免許センターに出向いて手続きを行います。
運転免許証を返納してしまうと、身分証明書を失ってしまうことを気にされる方がおられます。
しかし自主返納された方には、身分証明書の代わりになる運転履歴証明書が発行されます。
また地域によっては運転履歴証明書を持っている方は、タクシーやバスを割引料金で利用できることもあり、車を運転できなくなったあとの生活を多少でも支援する制度が作られています。
なお、あとから述べますが、運転免許の更新時に認知機能の低下が指摘され、その後認知症と診断されると、運転免許を取り消されることがあります。
運転免許を取り消されると、運転履歴証明書を発行してもらえなくなりますので、注意が必要です。

運転免許の更新時に検査を受ける

2017年3月に改正道路交通法が施行され、75歳以上の高齢者は、3年に1回の免許更新の際に認知機能の検査を受けることになりました。
この認知機能検査において、認知症が疑われると判定されると、医師の診察を受けることが義務付けられました。
そして医師の診察を受けた結果認知症と診断されると、運転免許が取り消されることになっています。

高齢者が認知機能が低下した人が犯しやすい違反行為をしたとき

75歳以上で、安全確認を怠るなど、認知機能が低下した場合に生じやすい違反行為を行った場合、臨時で認知機能検査を受ける必要があります。
その結果、認知症の可能性があることが判明すると、基本的に主治医あるいは認知症を専門とする医師の診察を受ける必要があります。

運転免許更新時の認知機能検査について

75歳以上の高齢者が免許更新時に受ける認知機能検査は、時間の見当識、短期記憶を確認する検査(16種類の絵を記憶して回答する)などが含まれます。
この試験を通し、記憶力や判断力の低下を評価しています。
検査結果は3タイプに分類されます。
第一類は、記憶力・判断力が低下している場合で、認知症の恐れがある方です。
基本的に主治医あるいは認知症を専門とする医師の診察が必須です。
第二類は、記憶力・判断力が少し低下し、認知機能が低下している可能性がある場合で、高齢者向けの講習に加え、個別の指導を受けることになります。
ただこれらの講習を受講すれば、運転免許は更新されます。
第三類は、記憶力・判断力に心配がない場合で、認知機能が低下している可能性が低いため、短縮された高齢者向けの講習を受講すれば免許の更新が可能です。

まとめ

軽度認知症の方の運転の特徴、また運転免許の取り扱いについてご説明しました。
超高齢化社会を迎えている日本においては、元気な高齢者が多くおられ、自動車の運転が生活に欠かせない方も多くおられるでしょう。
しかし事故を起こして自分や他人がけがをすると、辛い思いをしながら残りの人生を送ることになります。
難しい問題ではありますが、家族や主治医も含め、十分に話し合うことが大切でしょう。

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貴宝院 永稔【監修】福永記念診療所 部長 再生医療担当医師 ニューロテックメディカル代表
《 Dr.貴宝院 永稔 》
大阪医科大学卒業
私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。

脳卒中ラボ管理人

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