認知や行動の障害が出る高次脳機能障害とは

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認知や行動の障害が出る高次脳機能障害

高次脳機能障害とは、脳の機能障害が原因で起こる認知や行動の障害のことです。
見た目で気付き辛い症状であるため周囲からの理解が十分得られずに苦労することの多い症状です。
近年では行政的支援や福祉サービスが整備され、社会復帰を支える動きが活発化しています。
再生医療が患者さんのさらなる支えとなる可能性を秘めています。

高次脳機能障害はなぜ起こるのか

高次脳機能障害とは、脳卒中などの後に「認知」や「さまざまな行動」の障害が起こることをいいます。
脳は体の中枢ですから非常に多くの機能を持っており、障害される部位によってさまざまな症状が発生します。
脳の中でも前頭葉は問題解決や判断、行動の抑制、計画、情緒、注意など人の「認知」に関わる機能を多く担っており、また側頭葉は記憶や言語などの機能を持っています。
それらの機能が障害されることで高次脳機能障害が発生するのですが、実際には脳のどの部位が損傷されたから発症する、といった予想は難しく損傷部位と症状が対応しないケースも少なくありません。
脳卒中を発症し意識障害が数日続くような場合には高次脳機能障害が必発といわれており、東京都の調査では脳卒中から日常生活に復帰した方の40%程度で高次脳機能障害が残っていたと報告されています。

高次脳機能障害の種類

高次脳機能」という言葉は日本特有のもので、さまざまな機能をまとめて称した用語です。
高次脳機能障害は主に次の4つの症状に分類されます。

  • 記憶障害:物の置き場所を忘れてしまう、新しい出来事を覚えることができないなど
  • 注意障害:飽きやすく物事に集中することができない、グループでの話し合いができないなど
  • 遂行機能障害:計画を立てて段取りすることができない、衝動的な行動をとってしまうなど
  • 社会的行動障害:その場の状況に合わせて行動や感情をコントロールできず人と関係を築くことができないなど

これらの症状が合わさったり混じり合ったりするため、病状は人によってさまざまです。

高次脳機能障害の問題として家族にかかる負担

高次脳機能障害は、身体の障害が軽度の場合にはスムーズな歩行が可能など、外見からは気付きにくい症状です。
脳梗塞の治療後にそのような姿を周囲が見たら「後遺症が残らなくて良かったね」などと思うかもしれません。
しかし高次脳機能障害は家族にとって大きな負担となります。
生活する上で特に問題になりやすいのが、感情コントロールの障害、遂行機能障害、発動性低下、対人関係の障害などです。
急に怒り出してしまったり、間違った衝動的な行動をとってしまったり、体が動くのはいいことなのですが、そのことが逆に家族の負担となってしまうケースが多くなるのです。
脳梗塞を起こした方の家族へのアンケートを行うと、介護負担として感じるのは必ずしも患者さんの移動能力など日常生活能力の低下に対してではなく、むしろ認知・行動障害の項目に対して負担を感じているという回答が得られています。
それにも関わらず、脳梗塞の治療中に十分な説明を受けることができずに、準備ができていない状況で退院となってしまい家族が戸惑ってしまうケースが少なくありません。
脳梗塞の治療中には身体の機能に目がいきがちですが、高次脳機能についても同等のレベルで考えていかなければなりません。

高次脳機能障害の方を支える仕組み

高次脳機能障害は一般社会での生活が困難となる重い症状であるにも関わらず、過去には介護をする家族が困り果てて市役所を訪ねても利用できるサービスがない、という状況がありました。
そこで、2006年厚生労働省は医療福祉に関するサービスを利用できるようにするため、障害者手帳を取得するための条件を整備しました。
障害者手帳を取得することにより福祉サービスを利用できるようになり、また障害者年金を受給できる可能性があります。
家族の肉体的、物理的負担だけでなく経済的負担を軽減するためにも重要な行政的支援となっています。
周囲への援助だけではなく、高次脳機能障害を持つ患者さんの自立を支援する取り組みも重要です。
就労・就学や社会参加を目指す患者さんを支援する「支援拠点機関」は全国で100箇所以上設置されており、「高次脳機能障害情報・支援センター」ホームページ(http://www.rehab.go.jp/brain_fukyu/)で確認することができます。
そのほか各地の自治体や地域では、高次脳機能障害に関する家族相談会などを開催している場所もあります。
高次脳機能障害に関する周囲の理解が深まり、患者さん本人や家族が前を向いて生活できるような社会にしていかなければなりませんね。

高次脳機能障害の治療として再生医療の可能性

高次脳機能障害は脳梗塞の一症状であり、特別な医学的治療があるわけではありません。
発症早期には通常通り脳梗塞に対する治療が行われます。
できる限りの治療を行った結果高次脳機能障害が残る場合には、病状に応じて治療やリハビリテーションの計画が立てられます。
高次脳機能障害の患者さんに起こりやすい医学的問題としては、高血圧や糖尿病、てんかん発作があります。
日常生活における行動の制限が難しいため、血圧や血糖のコントロールがつかずに高値になってしまいやすいのです。
また脳に損傷があると、そこがきっかけとなりてんかん発作を起こしやすくなります。
社会復帰に向けてこれらの問題を薬剤等でコントロールすることには大きな意味があります。
リハビリテーションは、失った機能を取り戻すための「要素的訓練」と、残された機能で生活するための「代償訓練」があります。
記憶力や注意力など、高次脳機能の障害は一定のレベルまで自然回復が見られるものの限界があり、代償訓練が中心になるケースが大半です。
社会復帰できるかどうかは、本人の障害の程度と周囲の環境次第といえます。
脳梗塞により失われた神経の機能を取り戻すのは基本的に不可能、と考えられてきました。
しかし、神経障害の治療に新たな光をもたらしてくれる可能性があるのが「再生医療」です。
再生医療とは、幹細胞等を用いて臓器や組織の欠損、機能障害に対して臓器や組織を再生し、機能の回復を目指す医療です。
ニューロテックメディカルでは、「ニューロテック®」として脳卒中・脊髄損傷・神経障害などに対する幹細胞治療の基盤特許を取得しており、再生医療の効果を高める取り組みを行っています。
高次脳機能障害に対しては、幹細胞治療とリハビリテーションを組み合わせることで最大限の機能回復を達成できると考えています。
高次脳機能障害の患者さんやご家族の方は、是非ご相談下さい

まとめ

脳梗塞の後遺症として頻度の高い高次脳機能障害について解説しました。
未だに認識が十分とはいえない障害の一つで、身近に患者さんを抱える方にとってはつらい症状です。
しかし利用できる支援や福祉サービスは拡大しており、自分達だけで抱え込む必要はありません。
機能の回復や社会復帰を目指し、前を向いて歩いていきましょう。

<参照元>
「高次脳機能障害に対する行政的対応と施策」臨床精神医学48(4), 2019
「脳卒中患者の高次脳機能障害への対応」MB Med Reha236, 2019
「高次脳機能障害に対するリハビリテーション治療」Jpn J Rehabil Med 58, 2021

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ニューロテックメディカル

貴宝院 永稔【監修】福永記念診療所 部長 再生医療担当医師 ニューロテックメディカル代表
《 Dr.貴宝院 永稔 》
大阪医科大学卒業
私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。

脳卒中ラボ管理人

投稿者プロフィール

脳卒中・脊椎損傷や再生医療に関する医学的見地から情報発信するブログとなっております。
それらの情報に興味のある方、また現在もなお神経障害に苦しむ患者様やそのご家族の方々に有益となる情報をご提供して参りたいと考えております。

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