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脊髄損傷の原因

脊髄損傷は主に交通外傷や転落によって脊髄を損傷する病気です。
脊髄は脳に情報を送ったり脳からの情報を臓器や筋肉に受け渡す機能があり、人体の中でも替えの効かない非常に重要な役割を担っています。
どの高さの脊髄を損傷するかによって症状は様々ですが、基本的には高位での損傷ほど予後は悪いと言えます。
今回は、脊髄損傷の病態や原因について分かりやすく解説していきます。

脊髄損傷とは

脊髄損傷という言葉を一度は聞いたことがあるのでは無いでしょうか?
脊髄損傷とはその名の通りなんらかの原因で脊髄を損傷した状態です。
そもそも脊髄とは神経の束のようなもので、脳からの指令を臓器や筋肉に伝えたり、逆に臓器や筋肉からの情報を脳に伝える役割を担っています。
当然脊髄は脳と繋がっていて、上から順に頸髄、胸髄、腰髄、仙髄と高さで名称が変わっていきます。
どこの高さの脊髄を損傷するかで症状は変わってきますが、脊髄損傷の怖い点は損傷した部分のみの症状が出るわけではなく「損傷した脊髄の高さから下は全て機能が障害される」という点です。
例えば運動神経で考えると、上肢の運動神経は頸髄から、下肢の運動神経は腰髄から各筋肉に通っています。
そこで腰髄損傷を起こした場合は下半身麻痺になりますが上半身には影響ありません。
しかし頸髄損傷した場合には上半身麻痺だけでは済まないということです。
頸髄以下全ての脊髄の機能障害が出るわけですから、上半身も下半身も麻痺してしまいます。
最も下位に存在する仙髄の機能は頸髄損傷でも腰髄損傷でも障害されてしまいます。
仙髄は排尿や排便をコントロールしていますので、どの高さの脊髄損傷でも排尿や排便に支障をきたす可能性が高いです。
脊髄の中には運動神経だけでなく、感覚神経や交感神経など様々な種類の神経が通っていますので、脊髄損傷の高さが高位であればあるほど症状も多岐に渡ります。

脊髄損傷の原因

脊髄損傷は国内で年間5000人程度が罹患しており、約80%が男性です。
主に交通事故や転倒、転落などの外傷によって引き起こることが多く、年齢は20代と60代に多いと言われています。
人体の中で、胸部は臓器を保護するために肋骨に囲まれているため安定性がありますが、頸部や腰部は体の回転性を維持するためにわざと不安定に作られています。
その結果、交通事故などの高エネルギー外傷の場合は頸髄や腰髄がもっとも損傷しやすいのです。
原因のほとんどが交通外傷や転倒などの外傷性ですが、それ以外にも下記のような病気の影響で脊髄損傷に至ることもあります。

後縦靭帯骨化症

脊髄は骨や靭帯、椎間版で構成される脊柱管と言われるトンネル状の空間に存在します。
その中には脊髄の後ろ側(背中側)を縦に走る靭帯である後縦靭帯が存在しますが、主に糖尿病の方では靭帯が骨化して肥大してしまう後縦靭帯骨化症という疾患に罹患しやすいです。
肥大した靭帯によって主に頸髄が圧迫されてしまうため頸髄損傷に陥る可能性があります。

脊髄腫瘍、脊椎腫瘍

脊髄そのものに腫瘍ができたり、もしくは脊髄を囲む脊椎と言われる骨に腫瘍ができた場合には脊髄を損傷する可能性があります。
特に癌は骨に転移しやすいため、癌が脊椎に転移し成長した結果外的に脊髄を圧迫する可能性が高いです。

椎間板ヘルニア

脊椎の骨と骨の間には衝撃を吸収するためのクッションである椎間板という構造物が存在します。
しかし様々な理由で椎間板に負担がかかっていくと徐々にクッションがすり減っていき、押し潰されていきます。
ボンドで物を接合する時のことをイメージして欲しいのですが、あまりにも強く押し付けるとボンドが漏れ出してきて手に付くことがあります。
同じ様に椎間板も徐々に押し潰されていくと周囲に広がっていき、場合によって脊髄を圧迫することがあり、これを椎間板ヘルニアと言います。

脊椎すべり症

積み木のように積み重なった脊椎の一部で、大幅に骨がずれることを脊椎すべり症と言います。
この場合骨が滑ることで脊柱管が狭窄するため、脊柱管内部に存在する脊髄が圧迫される可能性があります。
この疾患は主に腰髄に多いです。

環軸椎亜脱臼

リウマチなどに罹患すると、その影響で環椎と軸椎と呼ばれる首の骨を亜脱臼してしまうことがあります。
つまり首の骨が非常に不安定な状態なので、激しく首を動かすだけでも頸髄を損傷する可能性があります。

脊髄損傷は治る?

実際に脊髄損傷に陥った場合は原因によっては手術が必要になります。
特に一度完全に損傷した脊髄の機能は8時間以内に治療すれば改善する可能性があると言われていますので、迅速な診断と治療が非常に重要になります。
他にも近年では機能回復に対する再生医療が注目を浴びています。

まとめ

脊髄は一度損傷すると機能の回復は困難です。
その結果麻痺症状が残存すれば日常生活に大きな支障をきたします。
しかし、近年では再生医療の発達が目覚ましいです。
骨髄から採取した幹細胞を点滴から投与すれば、幹細胞が神経に定着して死んだ神経細胞の代わりとなり再び機能が甦る可能性があるのです。
再生医療を併用すれば、リハビリによる機能回復にさらなる期待が持てます。
現在、多くの治療結果を積み重ねており、その成果が期待されています。

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ニューロテックメディカル

貴宝院 永稔【監修】福永記念診療所 部長 再生医療担当医師 ニューロテックメディカル代表
《 Dr.貴宝院 永稔 》
大阪医科大学卒業
私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。

脳卒中ラボ管理人

投稿者プロフィール

脳卒中・脊椎損傷や再生医療に関する医学的見地から情報発信するブログとなっております。
それらの情報に興味のある方、また現在もなお神経障害に苦しむ患者様やそのご家族の方々に有益となる情報をご提供して参りたいと考えております。

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