脳梗塞で血圧を高めに保つ理由

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脳梗塞で血圧を高めに保つ理由

高血圧が、動脈硬化の危険因子であり、血圧の高い人は脳卒中のリスクが高いことはよく知られていることではないかと思います。
しかし脳梗塞を起こした後、通常よりも少し血圧を高めに保つことがあります。
今回の記事では、脳梗塞後の血圧は高めで保つ必要があるのかとその理由をできるだけ詳しく解説したいと思います。

脳梗塞後に血圧を高めに保つ理由

脳梗塞を起こした急性期には、体に様々なストレスがかかります。
そのため、一般的には血圧が高くなってしまいます。
これは、生理学的には理にかなっていることでもあります。

例えば脳梗塞を起こした後、血管が閉塞し、閉塞した先の脳細胞には血液が充分行き渡らなくなってしまいます。
しかし血圧が高くなると、脳内の血管にも十分な血流を維持することができ、完全とはいかなくても、脳細胞に血液を行き渡らせることが可能となります。
したがってこの時期の血圧は、生命に関わるほどの高血圧ではない限り、ある程度の高血圧は許容されることが一般的です。

また、わたしたちの体には、血圧が変化してもある程度一定量の血流を脳内に保つ機能が備わっています。
身体がどのような状態になっても、生命の維持に必要な脳機能を維持するためでもあります。
しかし脳梗塞後の急性期には、この脳内の血流を調節する機能が破綻していることがあります。
そのため脳血流が、脳内の血圧に強く依存するようになっています。

したがって血圧を下げすぎると、本来健康であるべき脳細胞にも血液が充分行き渡らなくなってしまい、脳梗塞の悪化を招くことが懸念されます。
このような理由で、脳梗塞後は血圧を高めに維持することが一般的となっています。
なおこれは、脳梗塞後の急性期の話で、急性期を超えた慢性期になると、今度は脳梗塞の再発を防ぐために、血圧の管理は従来通りにすることが一般的です。

脳梗塞後の降圧の目標値

血圧計
では、いったいどの程度の血圧を目指せば良いのでしょうか?

脳梗塞後急性期の降圧目標

一般的に、脳梗塞後は収縮期血圧が220mmHg以上、拡張期血圧が120mmHg以上にならない限り、積極的には血圧を下げる事はありません。
目標とする血圧としては、発症1〜2週間以内の場合、脳梗塞後に血栓溶解療法を行った患者さんであれば、180/105mmHg未満を目指します。
血栓溶解療法の適応にならない脳梗塞では、収縮期血圧が220mmHg以上、拡張期血圧が120mmHg以上の場合に、10~15%程度の降圧を目指します。
ちなみに脳出血の場合は、収縮期血圧が180mmHg以上、平均血圧が130mmHg以上の場合に、20%程度の降圧を目指します。

脳梗塞後慢性期の降圧目標

慢性期に入ると、今度は脳梗塞の再発を防ぐことを目標に、ある程度血圧を下げる必要があります。
脳梗塞を起こしたということは、もともと脳梗塞の危険因子である動脈硬化や糖尿病があった可能性があります。
これらに対して薬による治療だけでなく、食事や生活習慣の改善なども必要です。特に塩分は1日6g未満を目指すことが望ましいとされています。
薬についても、脳梗塞の種類によって、血栓を予防するための薬(いわゆる血液をサラサラにする薬のこと)を飲み分けます。
血圧については、診察室での血圧を140/90mmHg未満、自宅での血圧を135/85mmHg未満を目標にすることが一般的です。

脳梗塞後の血圧を下げすぎるリスクやデメリット

立ちくらみ
ある程度、血圧を下げることは重要であることはご理解いただけたのではないかと思います。
では、下げれば下げるほど良いのでしょうか?実はそうではありません。
適切な血圧というものがあり、血圧を下げすぎると逆に問題となることがあります。
例えば、特に高齢者の場合、血圧が下がりすぎると立ちくらみを起こし、ひどいと転倒するリスクがあります。
さらに認知症が進行する可能性も指摘されています。
また治療対象者の生活の自立度、フレイルの有無なども考慮して、適切な治療目標を定め、状況によってはあえて積極的な降圧をしない選択をすることもあります。

まとめ

脳梗塞後に、血圧を高めに保つ理由、また積極的に血圧を下げることが起こしうるリスクやデメリットについてご説明しました。
いずれにしても血圧の管理は脳梗塞の発症、重症化予防、再発予防のいずれの観点から見てもとても大切なことであることに変わりはありません。
普段から検診を受け、かかりつけ医との連携を大切にすること、食事や生活習慣の見直し、必要な高血圧治療薬の内服、自宅での血圧測定など、できることをしっかりと行っていきましょう。

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ニューロテックメディカル

貴宝院 永稔【監修】福永記念診療所 部長 再生医療担当医師 ニューロテックメディカル代表
《 Dr.貴宝院 永稔 》
大阪医科大学卒業
私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。

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