ラクナ梗塞と動脈硬化の関係
《 目 次 》
梗塞部位が限局されるため症状は軽度の可能性もありますが、梗塞部位によっては半身麻痺などの後遺症が残る可能性もあり決して油断できない疾患です。
そこで今回はラクナ梗塞の症状や治療法について解説していきます。
ラクナ梗塞とは
ラクナ梗塞という言葉は一般の方々にはあまり聞き馴染みのある言葉ではないかもしれません。
しかし、実際には病院で対峙することの多い疾患の一つです。
ラクナとはラテン語でLacunarと言い、「小さなくぼみ」という意味を持ちます。
なぜそんな名前が付けられたのでしょうか?
理由は単純明快です。
ラクナ梗塞は脳梗塞の一種であり、脳の深部の細い血管が動脈硬化の進行に伴い閉塞する疾患です。
具体的には脳の深部を通る直径100-300μm程度の穿通枝と呼ばれる細い血管が、動脈硬化の影響で内腔が閉塞することで穿通枝に栄養されていた脳細胞に栄養が届かず壊死してラクナ梗塞を起こします。
壊死する脳の範囲が15mm未満とされていて、これが「小さなくぼみ」ということです。
その他の脳梗塞として、アテローム性血栓性脳梗塞と心原性脳梗塞がありますので紹介していきます。
アテローム性血栓性脳梗塞
脳の太い血管に動脈硬化が及ぶと血管内にアテロームというコブができます。
そのコブに血液のかたまりである血栓ができた結果、太い血管が閉塞する脳梗塞をアテローム性血栓性脳梗塞と言います。
心原性脳梗塞
心臓のリズムは基本的に一定ですが、中には不整脈と呼ばれる心臓の病気になる方もいます。
不整脈では心臓のリズムが乱れ、まるで川の流れの遅い部分にゴミが溜まるように、心臓内の流れの遅い部分に血栓ができてしまいます。
もしくは心臓内に腫瘍ができてしまう人もいます。
これらの血栓や腫瘍がもし心臓から血液とともに送り出されてしまうと、最初に行き着く臓器は脳であり脳梗塞を引き起こします。
これが心原性脳梗塞です。
ラクナ梗塞を発症する年齢
ラクナ梗塞は前述した通り、動脈硬化による穿通枝の閉塞が原因です。
なぜ動脈硬化になると血管が閉塞するのでしょう?
みなさんが筋トレをすれば当然筋肉は肥大して体は大きくなります。
血管も同様で負荷がかかると血管の筋肉が肥大して内腔が閉塞していきます。
例えば、長期間の高血圧は血管にとって大きな負荷になるため、動脈硬化になりやすいのです。
つまり、ラクナ梗塞は長期間の高血圧がダイレクトで危険因子になるのです。
当然若い人よりは高血圧になりやすい高齢の方で発症するリスクが上昇していきます。
特に60代では10-20%程度が発症する可能性があり、特に男性で発症しやすいです。
ラクナ梗塞の後遺症
脳は部位によって様々な機能を有しています。
例えば前頭部には感情を司る前頭葉が、側頭部には記憶を司る海馬が、中脳や延髄には運動や感覚の伝導路が走行しています。
どれほどの範囲が梗塞に巻き込まれるかで発現する症状も様々です。
ではラクナ梗塞ではどんな症状が出やすいのでしょうか?
症状は梗塞部位次第ですが、ラクナ梗塞の場合は梗塞部位が限局されるため意識障害が出現することは非常に稀です。
アテローム性血栓性脳梗塞や心原性脳梗塞による広範な脳梗塞では意識障害が出現する可能性があります。
一般的には半身麻痺や半身の痺れ、呂律障害や構音障害(上手く話せなくなる症状)や嚥下障害が出現します。
嚥下障害の場合、飲み込みが悪くなり誤嚥性肺炎を併発する可能性が高くなるため注意が必要です。
またラクナ梗塞の場合は障害部位があまりにも小さいために症状が出ないこともあり、これを無症候性脳梗塞と言います。
高齢者の場合たまたま撮影したCTやMRIで無症候性脳梗塞が発見されることがあります。
ラクナ梗塞の治療薬
ラクナ梗塞の治療は時系列ごとに方法が異なります。
発症から4.5時間以内の超急性期
発症から4.5時間以内に閉塞血管を再開通させれば梗塞部位の範囲を最小限に留めることが可能であり、神経学的予後が改善される可能性が高いです。
そこで発症から4.5時間以内で、そのほかの条件を満たす患者さんであれば血栓溶解療法を行います。
静脈に投与した薬で血栓を無理やり溶かしてしまうのです。
発症から4.5時間以降の急性期
発症から4.5時間以上経過している場合、血栓溶解療法で無理やり再開通させてしまうとすでに壊死して脆弱になっている組織に血液が一気に再流入することで、今度は逆に脳出血の可能性が高まります。
よって発症から4.5時間以上経過している場合は血栓溶解療法よりマイルドな抗血小板薬の内服が推奨されています。
抗血小板薬は血液をサラサラにする効果があり再発や症状増悪を防ぐことができます。
慢性期
慢性期には、血栓の再発を防ぐ目的で抗血小板薬を継続するのはもちろんですが、そのほかに降圧剤の内服でラクナ梗塞の原因である高血圧に対して治療を行うことが推奨されています。
まとめ
脳細胞は一度損傷すると機能の回復は困難です。
ラクナ梗塞の場合は比較的軽い症状の可能性もありますが、症状次第では日常生活に大きな支障をきたします。
しかし、近年では再生医療の発達が目覚ましいです。
骨髄から採取した幹細胞を点滴から投与すれば、幹細胞が神経に定着して死んだ脳細胞の代わりとなり再び機能が甦る可能性があるのです。
再生医療を併用すれば、リハビリによる機能回復にさらなる期待が持てます。
現在、多くの治療結果を積み重ねており、その成果が期待されています。
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ニューロテックメディカル代表
《 Dr.貴宝院 永稔 》
大阪医科大学卒業
私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。
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