脳出血後に寝たきりになることの影響や余命

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脳出血後の寝たきりと余命

《 目 次 》


脳出血は、脳卒中の一種です。
脳卒中後は、さまざまな要因で寝たきりになってしまうことがあります。
そしてその結果、廃用性萎縮を始め、体への長期にわたる影響が生じます。
何よりも寝たきりになると、平均余命が一般市民に比べ、4分の1ほどの長さに短くなるので、発症予防やリハビリなどの取り組みが重要です。
今回の記事では、脳出血後に寝たきりになることで生じる影響や余命について、解説します。

脳出血後に寝たきりになる理由

脳出血では、まず脳内の動脈が破裂し、周囲の脳組織内に出血が起こります。
この出血により血液の塊である血腫ができますが、この血腫により周辺の脳組織が圧迫され、脳組織への重要な血流が減少し、最終的には脳細胞が死滅します。
また脳内に出血すると、周辺の脳組織にむくみが生じることがあります。これが脳浮腫です。
脳浮腫になると、血腫同様に脳組織への血流が障害され、脳細胞の活動に影響が出ます。
このように脳出血は脳細胞に大きなストレスを加え、脳細胞が持っている機能を奪ってしまうことがあります。
そのため脳出血を起こした人は、ほぼ全員が発症後数日はベッド上で寝たきりになってしまいます。
この数日間のベッド上での生活が、特に高齢者の方達のように予備力が低下している人たちにとっては、元通りに元気になる機能を大きく奪ってしまう機会ともなっていることがあります。
また脳出血の結果、意識レベルが低下するとさらに長期間寝たきりになってしまいます。

脳出血の影響で寝たきりになると起こりうること

脳出血で寝たきりになると何が問題となるのか、簡単にご紹介します。

筋萎縮(廃用性萎縮)

筋萎縮は、筋肉が衰えてしまうことです。
重いものを持ち上げると、筋肉が徐々に太くなるのとは逆の現象です。
脳出血のあと寝たきりとなると、体を動かさなくなってしまいますので、全身の至るところの筋肉が萎縮し弱ってしまいます。
廃用性萎縮に伴って、筋肉の萎縮や筋力の低下だけではなく、骨密度の低下、関節拘縮なども伴うこともあります。

学習による不使用

脳出血後の患者が、動かなくなった手足を放置し続けると、事態はさらに悪化し、「学習性不使用」という別の合併症が発生します。
学習性不使用とは、放置された筋肉の使い方を脳が完全に忘れてしまうことです。
これは、脳からの情報を伝達する神経細胞の変性、また麻痺を起こした部分を司っていた脳細胞の減少などが影響していると言われています。
なお、脳出血を起こしてから何年も経過している人は、脳出血そのものによる脳障害による麻痺と、二次的に生じる学習性不使用による麻痺とが混在している傾向があります。

褥瘡(じょくそう)

長時間同じ姿勢で座ったり横になったりしていると、褥瘡ができることがあります。
褥瘡は、長時間にわたり体の重さが同じ場所にかかって、その部分の血流が悪くなることで起こります。
時間が経つにつれ、血流が悪いために酸素を十分に得ることができない皮膚や筋肉が死に始めます。
死滅した組織(壊死組織)は、潰瘍となったり感染を起こす原因となったりします。
介護者は、利用者がさまざまな体位で回転していること、移動や着替えなどの動作で皮膚を傷つけないように気をつけることが重要です。

肺炎

身体を動かさないでいると、肺炎やその他の合併症を引き起こすことがあります。
特に脳出血後に食べ物を飲み込む力が弱くなり、口から入ったものが誤って肺に入る誤嚥性肺炎の危険性が高まります。
予防策としては、起床時はベッドの頭を高くすること、過食や膨満感で呼吸が妨げられていないか確認することなどが挙げられます。

排尿障害・尿路感染症

脳出血の影響で、うまく自分の力で尿が出せなくなってしまうことがあります。
また、もともと人間は重力を利用して尿や便を体外へ排出していますが、脳出血後に寝たきりになると、うまく排出できなくなることがあります。
そのため、尿が膀胱内にたまりやすくなりますが、これは尿路感染症を起こす危険因子のひとつです。
なお尿路感染症になると高い熱が出ることがあり、細菌による感染の影響が全身状態の悪化を招く、敗血症という状態になることがあります。
これは適切な治療をしなければ、命に関わる状態です。

脳出血の影響で寝たきりになった場合の余命

脳出血後に寝たきりになった場合、余命への影響はどのようになっているのでしょうか?
脳卒中患者を対象とした長期追跡調査のうち、年齢、性別、modified Rankin Scale(mRS)の障害等級、その他の要因の影響を報告した11件の研究をもとに行われた調査があります。
mRSとは脳卒中などで神経機能の障害を認める人の障害の程度を、必要とする介助の程度などをもとにレベル分けしているもので、mRSが5であれば、ほぼ寝たきり状態と考えられます。
この調査によると、mRSが5であれば、50歳代、60歳代、70歳代、80歳代の平均余命は、男女を問わずそれぞれ9年、7年、5年、3年となっています。
他方一般市民の年代別平均余命は性差はありますが、寝たきり状態の人に比べるとほぼ4倍以上の平均余命があることがわかりました。

\ 一般市民の平均余命(年) mRS5の人の平均余命(年)
50歳代 男性 30 7
60歳代 男性 22 5
70歳代 男性 14 3
80歳代 男性 8 2
50歳代 女性 33 7
60歳代 女性 25 5
70歳代 女性 17 3
80歳代 女性 10 2

この調査は脳卒中全体が対象ですので、脳出血だけの平均余命ではありませんが、およその傾向はつかむことができるのではないでしょうか?

(出典:Shavelle RM, et al. Life expectancy after stroke based on age, sex, and Rankin Grade of Disability: A synthesis. J of Stroke and Cerebrovascular Diseases. 2019;28(12):104450)

まとめ

脳出血後に寝たきりになる理由、また寝たきりになることによる影響、そして余命についてご説明しました。
やはり大切なことは、脳出血を起こさないように高血圧などの危険因子を管理しておくこと、また発症したあとはリハビリなどに早期から取り組み、寝たきりにならないようにすることです。
ぜひかかりつけ医にも相談し、できることから取り組んでみましょう。

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ニューロテックメディカル

       貴宝院 永稔【監修】脳梗塞・脊髄損傷クリニック 銀座院 院長 再生医療担当医師
ニューロテックメディカル代表
《 Dr.貴宝院 永稔 》
大阪医科大学卒業
私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。

脳卒中ラボ管理人

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脳卒中・脊椎損傷や再生医療に関する医学的見地から情報発信するブログとなっております。
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