脳出血と昏睡状態の関係と原因

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脳出血と昏睡状態の関係と原因

《 目 次 》


脳出血を起こした後、家族や友人が昏睡状態になってしまうと、とてもつらく感じるものです。
特に昏睡状態からいつ目を覚ますかはわかりませんので、不安は大きくなるでしょう。
そこで今回の記事では、今回の脳出血後の昏睡状態について、できる限り具体的に、その原因や昏睡期間、また昏睡状態であってもできることをご説明します。

昏睡状態とはどういう状態のことか?

昏睡状態とは、意識がない状態を意味します。
脳の活動が最小限のレベルに抑制されていますので、周囲からの刺激に反応することはできず、自分から意思を表示することもできなくなります。
目を開けることはできず、痛みなどの刺激に反応することもできません。当然食事や排泄も一人ではすることができません。

また、昏睡状態では睡眠と覚醒のサイクルも無くなってしまいます。
昏睡状態に似た状態に植物状態と脳死状態があります。
植物状態でも、同じように意識がなくなってしまい、周囲からの刺激に反応することができなくなってしまいますが、植物状態ではこの睡眠と覚醒のサイクルは保たれます。
また昏睡状態では、自分呼吸することは可能ですが、脳死状態になると自分の力で呼吸することができない状態になってしまいます。

なお意識レベルを測定するためのツールは、主に2種類あります。ひとつがグラスゴー・コーマ・スケール(Glasgow Coma Scale: GCS)と呼ばれるもので、もうひとつはジャパン・コーマ・スケール(Japan Coma Scale: JCS)です。
呼びかけに応じるか、痛み刺激に反応するかなど、複数の確認項目があります。
どちらを利用しても構いませんが、同じスケールで継続して評価しておくことで、昏睡状態の変化を確実に捉えることができます。

脳出血後の昏睡の原因

昏睡の原因
脳出血後に昏睡状態になる状況は、主に2つです。
1つは広範囲に脳出血を起こした場合、あとは脳幹部に出血を起こした場合です。

まず広い範囲の脳出血では、脳全体への影響が大きいため、昏睡状態になることがあります。
また出血をした部位を中心に脳が腫れ、頭蓋内圧が高くなり、その結果昏睡状態に陥ることもあります。

脳出血後、出血を起こした領域の脳の腫れ(脳浮腫)は、脳出血後の昏睡のリスクを高めると考えられています。
また脳出血が起こると、頭蓋骨という狭い空間のなかで血液が充満します。
その結果、頭蓋骨の内部の圧が上昇し、広い範囲の脳細胞が圧迫を受けることになります。
脳細胞が圧迫を受けると、脳細胞が正常に機能しなくなってしまいます。
これが昏睡状態につながります。

次に、脳幹には起床や睡眠などの覚醒状態をコントロールする網様体賦活系(RAS)があります。
脳出血によってRASが損傷すると、昏睡状態になることがあります。
目覚めているためには、RASと少なくとも片方の大脳半球が機能していなければならないと考えられています。

脳出血の後、どのくらいの期間昏睡状態になるのか?

一般的に、脳出血後の昏睡状態は数日から数週間続きます。
重症の場合は何年も続くこともあります。
ただし実際に脳出血による昏睡状態が続く期間は、脳出血の場所や程度によって異なります。
したがって、正確なところは不明です。
以前は、長期の昏睡状態にある人は回復することはないと考えられていました。

しかし最近は、人間の脳の優れた可塑性のおかげで、長期間が経過したあとでの回復も可能であることが示唆されています。
この可塑性とは、外傷などによって死滅したために失われた機能を、残された脳細胞が補填し機能が回復していくことを意味します。
なお昏睡状態から回復する場合、植物状態などの段階を経て、ゆっくりと意識を取り戻すことがあります。

脳出血で昏睡状態にある人に対してできること

昏睡状態でできること
昏睡状態にある人は、意識はありませんが聴力は保たれており、周りからの声や音は聞こえている可能性があると言われています。
そのため、昏睡状態の人を助けるための最良のアドバイスは、本人に積極的に話しかけることです。
必ずしも聞こえている保証はありませんが、努力する価値はあります。
また全身状態が落ち着いていれば、昏睡状態であってもできるリハビリがあります。
昏睡状態は広い範囲の脳出血後に起こることが多いため、脳出血の後遺症である麻痺など、運動能力に大きな変化が生じている可能性があります。
そのため、寝たきりになることを防ぐためにも、できるだけ早くリハビリテーションを開始することが重要です。

脳の可塑性や自然治癒力のおかげで、脳出血後であっても目覚ましい回復を遂げることができるでしょう。

まとめ

脳出血と昏睡状態の関係について、できる限り詳しく説明しました。
昏睡状態に陥ってしまった結果、反応がなく、回復の兆しが見えないと不安が大きくなるものです。
でも回復することを期待し、積極的に関わることも重要です。
ぜひこの記事を参考に、関わり方について改めて考え方を見直す機会になれば幸いです。

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ニューロテックメディカル

貴宝院 永稔【監修】福永記念診療所 部長 再生医療担当医師 ニューロテックメディカル代表
《 Dr.貴宝院 永稔 》
大阪医科大学卒業
私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。

脳卒中ラボ管理人

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脳卒中・脊椎損傷や再生医療に関する医学的見地から情報発信するブログとなっております。
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