嚥下障害の原因と対応策について
《 目 次 》
その原因には脳卒中をはじめとする神経障害が知られています。
嚥下が障害されていると、食べ物や液体を飲み込もうとすると、喉に詰まらせることがあるため、早期の治療が望ましいとされています。
嚥下訓練を行う前には言語療法士による評価を行い、評価に基づく訓練を行います。
嚥下障害の原因
わたしたちが食べ物や飲み物を嚥下するためには、50を超える筋肉と神経が関係していると言われています。
つまり実際の嚥下障害の原因は、非常に複雑であるとも言えます。
しかし、ここでは単純に口から喉(口腔咽頭部)、そして食道の2つの部位に焦点を当て、原因を分類してみます。
口腔咽頭部に問題がある場合(多発性硬化症など)
口腔咽頭部に問題がある嚥下障害は、喉の神経や筋肉の障害によって起こります。
喉の神経や筋肉に障害があると、口のなかにある飲食物を、喉の動きを連携させて飲み込むことができなくなり、結果的に喉を詰まらせてしまい、むせかえって咳き込むことになります。
口腔咽頭部の嚥下障害の原因は、脳卒中後、多発性硬化症、パーキンソン病など、神経系に影響を与える疾患が主なものです。
その他にも、手術や放射線治療による神経や周辺組織の損傷、また頭頸部がんが原因で起こることもあります。
食道に問題がある場合
食道に問題がある嚥下障害では、何かが喉に詰まっているような感覚があります。
この症状は、食道が狭くなるような炎症や腫瘍、また食道の動きを阻害するような筋肉の障害などが原因となっています。
嚥下障害に伴う症状
嚥下障害には、ただ飲食物が飲み込みにくいという症状に加えて、同時に現れる特有の症状があります。
例えば水分が飲み込めない場合、唾液も飲み込めないためによだれが出てきます。
発生に関わる声帯の周囲に炎症や腫瘍などがあれば、声がかすれてしまうこともあります。
絶えず喉に何かが詰まっているような感覚があったり、胸焼けや食欲低下を招いたりすることもあります。
さらにうまく飲み込めないと、食事の摂取がうまくできなくなり、体重が減ってしまうこともあります。
嚥下障害の診断
嚥下障害が疑われるときに行う簡易テストもあれば、嚥下障害を正確に診断し、重症度を評価して適切な治療を開始するために、より専門的な検査が必要な場合もあります。
反復唾液嚥下テスト
30秒間に唾液を何回飲み込むことができるか、その回数を計測します。
2回以下であれば、嚥下障害が強く疑われます。
改訂水飲みテスト/フードテスト
3mlほどの冷水を口に含み、飲み込む動作を2回行います。
その結果むせこむことがないか、むせこむことがなくても呼吸状態が悪くなることや声の変化がないか、確認します。
フードテストでは、少量(茶さじ1杯程度)のゼリーやお粥を飲み込み、むせ込みや呼吸状態の変化がないかを観察します。
同時に呼吸音を聴診し、異常な呼吸音が出現しないか確認します。
バリウム等嚥下造影検査
X線に映る造影剤(バリウム)を混ぜた飲食物を利用し、食物を口に取り込むところから、航空から咽頭部、食堂期において異常がないかどうかを確認するために行われます。
実際に飲み込む動作を確認しながら行うことができますので、嚥下機能のどの部分に問題が起こっているかも確認することができます。
手間がかかることや軽度のX線の被爆といったマイナス面もありますが、嚥下障害を評価するのに一番手に入る情報が多く有用な検査と言えます。
内視鏡検査
内視鏡検査は、主に咽頭、喉頭、食道領域をチェックするために使用されることがあります。
この検査では、鼻から細い内視鏡を入れ、咽頭や喉頭、食道を詳細に観察します。
また同時に着色した水分やゼリーなどを飲み込むことで、実際の嚥下の様子を直接観察することが可能です。
また、同部にどれくらい、どの様に水分などが残留しているのか評価にて、代償的な(嚥下しない)嚥下方法の検討が出来ます。
嚥下障害の治療
特に神経や筋肉の機能障害が原因となる嚥下障害では、飲食物を誤嚥するリスクが高くなります。
また特に高齢者では、嚥下障害が長引くと栄養失調や脱水を引き起こす可能性があります。
これらの合併症はいずれも生命を脅かす重篤なものですので、できるだけ早期に治療する必要があります。
嚥下訓練
通常嚥下訓練を行う前に、言語聴覚士による嚥下評価が行われます。
その評価に基づき、さまざまな訓練が提供されます。
主には飲み込む動作の訓練になりますが、口を大きく開ける訓練や舌・頬の動きを円滑にする訓練、さらに頸部の動きを改善させるための訓練、歯肉マッサージなども含まれます。
なお、実際に食べ物を嚥下しながら行う訓練では、食事の形状の確認、実際に誤嚥を起こしていないかの確認も同時に行います。
そのほかには、食事中に行うべき姿勢の改善に取り組むこともあります。
手術による治療
嚥下障害の原因が食道の閉鎖にある場合は、食道拡張術と呼ばれる方法で食道を拡張することがあります。
この方法では、小さな風船を食道に入れ、その後バルーンを膨らませることで機械的に食道を広げます。
嚥下機能が低下している部位が特定でき、その部位の機能を回復させる手術を行うことで、嚥下機能を改善させることもあります。
ただしこのような手術は、高度な嚥下障害が認められ、リハビリを行なっても十分な改善が望めないときに行います。
経管栄養
嚥下障害が重症の場合には、栄養チューブで食事や水分を取ることもあります。
このチューブは鼻から胃のなかまでいれることもあれば、お腹の外から直接胃のなかに刺しこむこともあります。
これにより、脱水症状や栄養失調を防ぐことができます。
まとめ
嚥下障害について、その原因や症状、対策についてご説明しました。
脳卒中に伴う神経障害が原因になっている場合、神経障害が回復することで嚥下障害も回復します。
脳卒中に対する最新の治療として注目されている再生医療は、嚥下障害の改善にも貢献しています。
脳卒中・脊髄損傷、再生医療に関するご質問・お問い合わせは、
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ニューロテックメディカル代表
《 Dr.貴宝院 永稔 》
大阪医科大学卒業
私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。
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