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脳卒中は脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、一過性脳虚血発作(TIA)に分類することができます。
いずれもある日急に発症して命に関わる状況に陥る可能性があり、後遺症を残すことのある怖い疾患です。
それぞれについて知識を持ち、正しい対処ができるようにしましょう。
脳卒中といえば、元気に生活していた方でも急に命を落としてしまったり、一命をとりとめても深刻な後遺症を残してしまったり、年間10万人以上が命を落とす頻度が高い疾患であり、人ごとではありません。
医学が進歩した現代においても、依然として怖い病気の一つです。
ここでは、脳卒中についてその分類、それぞれの疾患について解説します。
脳卒中の分類
脳卒中という言葉は、卒然(=突然)に中る(あたる)という現象から名付けられています。
脳の血管に異常が起きて、脳の神経が急に障害される疾患を脳卒中といいます。
脳卒中という言葉が一般に広く普及していますが、医学的には脳血管疾患・脳血管障害などと呼ばれています。
脳卒中はいくつかの疾患の総称であり、次のように分類されます。
脳の血管が詰まってしまうのが脳梗塞、脳の血管が破れてしまうのが脳出血・くも膜下出血です。
脳卒中の患者数は日本全国で110万人をこえると言われています。
中でも患者数が最も多いのは脳梗塞で約4分の3を占めており、次いで脳出血、くも膜下出血の順となっています。
脳の血流が一時的に障害され脳梗塞のような症状を起こすものの短時間で回復する疾患が知られており、一過性脳虚血発作(TIA)と呼ばれています。
TIAを脳卒中に含める場合もあります。
脳梗塞
脳の血管が詰まってしまい、血液が送られない時間が長くなると細胞が壊死して脳梗塞が発生します。
脳梗塞はその原因により次の3つのタイプに分類されています。
- ◆ ラクナ梗塞
- 脳の細い血管が閉塞する疾患で症状は軽度。無症状のまま経過し、脳ドックなどで偶然見つかることがあります。動脈硬化が原因になりやすく、認知症のような症状を起こすことに注意が必要です。
- ◆ アテローム血栓性脳梗塞
- 脳の比較的太い血管が動脈硬化によって内腔が狭くなり、血栓によって閉塞することで起こる脳梗塞です。手足の麻痺やろれつ障害、言葉の障害などさまざまな症状を引き起こします。
- ◆ 心原性脳塞栓症
- 不整脈や弁膜症が原因で、心臓内で作られた血栓が脳の血管まで飛んできて詰まることで起こる脳梗塞です。大きな血栓が太い血管に詰まることが多いため、重症になりやすく、死亡率が高いタイプです。
発症早期であればt-PAという血栓を溶かす治療や、血管内治療を受けられる可能性があります。
早期発見が非常に重要です。
脳出血
脳の血管が破れて、出血してしまうのが脳出血です。
次の紹介するくも膜下出血と区別しやすくするため、脳内出血と呼ばれることがあります。
血管から流れ出た血液が頭蓋骨内部の圧を高め、周囲の脳組織を圧迫することで障害を引き起こします。
脳出血では多くの場合頭痛を自覚し、吐き気や嘔吐を伴うことがあります。
脳出血の死亡率は40-50%とされており、これはくも膜下出血と近い数値で、脳梗塞よりも高いと考えられています。
脳出血は高血圧が原因になりやすく、元来塩分の多い食事をとっていた日本人にとって国民病とも言える病気です。
食事の欧米化や高血圧の治療が進歩する中で発症率は減少してきていますが、高齢での発症が増加し新たな問題となっています。
くも膜下出血
くも膜下出血は脳の表面にある血管から出血してしまう病気です。
脳を覆う髄膜は外側から硬膜、くも膜、軟膜に分けることができ、くも膜と軟膜の間をくも膜下腔と呼び、そこに出血するのがくも膜下出血です。
バットで殴られたような、激しい頭痛を自覚することが多いという特徴があります。
脳動脈瘤の破裂がくも膜下出血の主な原因です。
一度発症すると社会復帰できるのは全体の20-30%と、予後が悪い疾患です。
一過性脳虚血発作(TIA)
脳の血管が一時的に詰まったり狭くなったりすることで、脳梗塞に似た症状がでるものの、24時間以内(典型的には1時間以内)に元に戻るのがTIAです。
手足の麻痺や顔半分の動きが悪くなる、感覚が鈍くなる・しびれる、ろれつが回らない、といった症状が起こる頻度が高いと言われています。
TIAは脳梗塞の前兆とも言える状況であり、TIAを起こした場合発症後90日以内に15-20%の人が脳梗塞になると報告されています。
そのうち約半数は48時間以内と早い時期に脳梗塞になるとされています。
年齢や血圧が高い人、糖尿病の人、症状が長い時間続いた人では特にその危険性が高く、現在症状が回復していても緊急の治療が必要です。
適切な治療を受けることで脳梗塞の発症率を80%低下させることができるため、一刻も早く医療機関を受診するべきです。
脳卒中の再生医療
脳卒中により脳に障害が起きてしまうと、さまざまな症状が発生しその多くは後遺症として一生残る症状になってしまいます。
一度強く傷ついてしまった脳の神経はある程度の回復能力を見せるものの、元通りのレベルまで再生することは期待できないからです。
自らが持つ神経の回復能力を最大限に引き出し、神経の再生を促すと期待されているのが、再生医療です。
再生医療では、神経や血管の元になる幹細胞を使用し、治療に応用します。
新たな治療として効果が期待されており、国策として推進されている分野です。
ニューロテックメディカル株式会社では、「ニューロテック®」として脳卒中・脊髄損傷・神経障害などに対する幹細胞治療の基盤特許を取得しており、再生医療の効果を高める取り組みを行っています。
脳卒中に対しては、幹細胞治療とリハビリテーションを組み合わせることで最大限の機能回復を達成できると考えています。
患者さんやご家族の方は、ぜひご相談ください。
まとめ
脳卒中の分類と各疾患について解説しました。
いずれの疾患でも予防が重要であること、早期発見・早期治療が運命を分けることに変わりはありません。
それぞれの疾患について知識を持ち、正しい対処ができるようにしましょう。
ニューロテックメディカル代表
《 Dr.貴宝院 永稔 》
大阪医科大学卒業
私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。
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