9割以上が予防出来る!脳卒中を引き起こす11の原因とは?
《 目 次 》
脳卒中を起こす11の原因とは?
脳卒中とは一般的な名称で、医学用語では脳血管障害と呼ばれます。
脳血管障害の代表例として、脳梗塞、脳出血(別名脳溢血)、くも膜下出血があります。
いずれも恐ろしい病気で、脳卒中は突然発症しますが、発作に至るまでにはいろいろな原因が積み重なって来ています。
脳卒中を心配するあなた、発症の原因がどこにあるかをよく自覚して、あてはまるものがあったなら一つでも減らす努力をしましょう。
【リスク因子をなくせば9割の脳卒中が防げます!】
順位 | リスク因子 | 割合 |
---|---|---|
第1位 | 高血圧 | 48% | 第2位 | 運動不足 | 36% | 第3位 | 血中脂質 | 27% | 第4位 | 不健康な食事 | 23% | 第5位 | 肥満 | 19% | 第6位 | 喫煙 | 12% | 第7位 | 心疾患 | 9% | 第8位 | 飲酒 | 6% | 第9位 | ストレス | 6% | 第10位 | 糖尿病 | 4% | 番外 | 脱水 | – |
ここに挙げる11のリスク因子の内、上位10個の因子を防ぐと、全地域、年齢、男女でのリスク低下は90.7%にもなり、理論上では9割の脳卒中を未然に防ぐことが出来るようになります。
【病気が進行して発病するもの】
高血圧
血圧とは血液が血管を押す力のことを云います。
- 収縮期血圧
- 心臓が収縮して血液を全身に送り出す時に、最も血管壁に圧力が高くなります。
- 拡張期血圧
- 血液を送り出した後、次にまた送り出すために心臓は広がります。
その間、血管壁にかかる圧力は最も低くなります。
高血圧は、この収縮期血圧が140㎜Hg以上、あるいは拡張期血圧90㎜Hg以上と定められています。
- 第1位 悪性新生物(癌)
- 第2位 心疾患
- 第3位 肺炎
- 第4位 脳血管疾患(脳卒中)
と、なっています。
この内、心疾患と脳血管疾患は高血圧と深い関わりがあります。
日本人の4人に1人は高血圧と云われていますが、原因を特定出来ないほど、その要素が多すぎるのです。
脳卒中の他のリスク因子とも大きく関係しますが、それ以外では、塩分の過剰摂取が挙げあれます。
1日24時間のうちで3回も行われる食事で、塩分が過剰に摂取されたら体内ではどんな変化が起こると思いますか?
塩分(ナトリウム)を摂りすぎると。
- 血液中の塩分濃度を下げようとする
- 水で薄めようとする
- 血液に水分投入する
- 血液の全体量が増加する
- 血圧が上昇する
と云う、メカニズムが考えられます。
脂質異常症
以前は高脂血症と呼ばれ、血液中のコレステロールや中性脂肪が増加した状態で、生活習慣病のひとつです。
コレステロールは、ホルモンの材料になり、細胞膜を作り、脂肪の吸収を助けるなどの働きを持ち、中性脂肪はエネルギー源としての働きがあるのですが、過剰になれば、体に害をもたらします。
糖尿病と共に自覚症状が乏しく、動脈硬化によって重い病気を引き起こし、現在の患者数は約700万人に上ると云われ、まだ増加傾向にあります。
食べ過ぎやアルコールの飲み過ぎ、運動不足、それに遺伝的素因が関与して発症します。
対策としては、毎日適度の運動や食事療法を続けてコレステロールや中性脂肪の値を下げましょう。
心疾患
発作の予想が難しく、症状が突発的に現れて激烈な症状を起こすのが「心原性脳梗塞」で、心臓などで形成された血塊血栓が脳の血管に入り込んで塞栓となって引き起こす脳梗塞です。
脳のかなり大きな血管でも塞いでしまうことがあるので、広範囲にわたって大きなダメージを脳に与えます。
この心原性脳梗塞の原因となる血栓は、不整脈などの各種心臓病を患うと形成し易く、心疾患と脳梗塞には深い関係があるのです。
心原性脳梗塞を引き起こす血栓を形成し易いのは、以下の心疾患です。
- 不整脈(心房細動)
- 心房が細かく痙攣することで血液をうまく送り出せない症状です。
脈拍が乱れて不整脈として表面上現れますが、体内では血液がうまく流れずに滞った状態であるために、血液の凝固塊が作られ、血流に乗って血管を詰まらせることがあります。 - 洞不全症候群
- うまく拍動させるための洞結節という個所がうまく働かない症状です。
これも同じ経過を辿って、血栓が形成されてしまいます。 - 心筋梗塞
- 心筋梗塞で一部心筋の動きが悪くなる部分が出来ると、その部位で血栓が出来ることがあり、血栓が一部千切れるなどしてしまえば血流に乗って脳にまで至って脳梗塞の原因になります。
糖尿病
欧米の研究では以前から、糖尿病と脳卒中の関連性を指摘されて来ましたが、近年日本人を対象とした調査研究の結果でも、脳卒中の中でも特に脳梗塞のリスクが高いことが判明しました。
血糖値が正常な方の脳梗塞発症リスクを「1」とした場合、糖尿病の方のリスクは、男性で「2.22」、女性で「3.63」にもなりました。
脳梗塞は予防が大事ですが、特に糖尿病の方は血糖値をしっかり管理して、悪化させないことが大切です。
糖尿病を放置していくと、3大合併症(糖尿病性網膜症、腎症、神経障害)を起こし易いことはよく知られていますが、現在ではそれに加えて、脳梗塞は糖尿病の「第4の合併症」とまで云われております。
従来の3大合併症は、主に目や腎臓、手足などの細い血管で起こり、症状が徐々に進行しましたが、脳梗塞は太い血管でいきなり起こって、命にかかわることもあります。
クリニックなどの健康診断で血糖値が高めと云われた予備軍の方は、糖尿病への進行を防ぐことが脳梗塞の予防につながると知っておきましょう。
【日常生活の中で】
運動不足
南豪州大学の研究チームが米心臓学会で次のように発表しました。
- 脳卒中の予防には、汗をかくぐらいの運動が必要
- 運動習慣のある人は脳卒中の発症リスクが低い
- 運動により、血圧が下がり、体重が減り、糖尿病のリスクも減少する
- 運動は4~5つの疾患を一度に予防改善してくれる、効果的な薬と言える
研究チームは、45歳以上の米国人約3万人を対象にして、平均5.7年間、6ヶ月毎に脳卒中の追跡調査を行いました。
参加者の3分の1は運動回数が週1回未満の運動不足の方でした。
結果は、中程度以上の運動を週4回以上行っている方と比べて、脳卒中または軽度の脳卒中発症する割合が、20%も高いというものでした。
「運動は内臓脂肪を燃やし、血糖値や中性脂肪を下げ、血圧も下げる効果があります。それに、いわゆる善玉コレステロール(HDL) を高める働きもあります。」
米心臓学会は18~65歳の成人に、ウォーキングのような適度の運動を1日30分以上、週に5日以上行うか、やや早めのウォーキングや水泳、自転車こぎのような中強度の運動を1回20分以上、週3日行うことを勧めています。
不健康な食事
ワシントン大学健康指標評価研究所が188カ国のデータをまとめた結果、健康寿命を短縮して早すぎる死を招く要因のトップは、「不健康な食事」「高血圧」「喫煙」「肥満」「糖尿病」だと、発表しました。
1990年以前は、小児期の低栄養と非衛生な飲料水、感染症が死亡リスクの上位でしたが、2013年には、高カロリー高コレステロールの食事、喫煙やアルコールなどの生活スタイルによって健康寿命が短縮される大きな要因となっていました。
食事の影響は大きく、野菜や果物の摂取不足、全粒粉(※小麦を丸ごと粉状にしたもので、栄養価が高い)の摂取不足、赤身肉の過剰摂取、塩分の摂り過ぎ、高カロリー清涼飲料の飲み過ぎと云った不健康な食事が、世界全体で死亡リスクを21%上昇させています。
肥満
脳梗塞には3種類ありますが、肥満と大きく関係するのは、動脈硬化(アテローム硬化)によって狭くなった太い血管に血栓が出来て血管が詰まる、「アテローム血栓性脳梗塞」です。
内臓脂肪型肥満が動脈硬化を発症させる理由の一つは、内臓脂肪が蓄積されると脂肪細胞から血栓を起こすPAI-1という物質が多く分泌されることです。
また、脂肪細胞から、アディポネクチンという糖尿病や動脈硬化を防ぐアディポサイトカインの分泌が低下するためです。
次に挙げる3つも動脈硬化の主な危険因子です。
- 耐糖能異常
- 白血球などの血管内壁に付着物が増えて、動脈硬化を発症させます。
- 脂質異常症
- 小型LDLコレステロールが血管内壁に入って酸化し、動脈硬化の大きな要因となります。
また、中性脂肪の増加は、小型LDLコレステロールを増やす基になります。 - 高血圧
- 血圧が高い状態が続くと、血管内壁が損傷して、コレステロールが血管内に入り易くなり、血管に負担をかけ続けるため、動脈硬化を促進します。
また、脳卒中を起こす引き金ともなって行くでしょう。
肥満の方はそうでない方と比べて、3~4倍も高血圧になり易いと云われています。
肥満の方はインスリンの働きが悪く、血液中の余分なブドウ糖を処理するために、大量のインスリンを分泌しなければなりません。
そのせいで、過剰に分泌されたインスリンが血圧を上昇させてしまうのです。
ストレス
通常はストレスが起こると、副交感神経が働いて興奮状態を鎮めます。
ところがそのストレスが長く続いたり、非常に強いストレスを感じた場合は、自律神経のバランスが崩れて、交感神経の興奮が収まらない状態になってしまいます。
すると、血液中の糖質が増え続けるので、血管壁が傷つき易くなって、動脈硬化が進み、高血圧や脳梗塞などの原因になってしまいます。
また、血圧をコントロールするホルモンは、通常は適正な分量が分泌されているのですが、強いストレスを受けると一時的に血圧が下がってしまい、その状態を抜け出すために血圧を上げるためのホルモンが大量に分泌させます。
これがきっかけとなって脳出血を起こすことがあります。
喫煙
国立がん研究センターが行った日本人の生活習慣病予防における「喫煙と脳卒中発症との関連研究」(40~59歳の男性約2万人、女性約2万2000人の方々、11年間の追跡調査)によりますと、喫煙者は非喫煙者に比べて、男性で1.3倍、女性で2.0倍、脳卒中になり易い。
たばこの煙にはいろいろな有害な物質が含まれており、血管壁に働いて動脈硬化を促進したり、血管を狭めたりします。
特に喫煙とくも膜下出血の関係は強く、たばこを吸う方は、全く吸わない方と比べて、男性で3.6倍、女性で2.7倍、なり易い結果が示されています。
1日にたばこを吸う本数が増えるほど、くも膜下出血の発症が段階的に増えてきます。
男性では、たばこと吸うと、全く吸わない方と比べて、ラクナ梗塞(脳の中の細い血管がつまる脳梗塞)が約1.5倍、大血管脳梗塞(太い血管が詰まる脳梗塞)が約2.2倍起こり易い結果が出ています。
研究によれば、脳卒中のうちで、男性17%、女性5%は、もしたばこを吸わなければ、予防できたと推定しています。
これは1年間で、男性1万1000人、女性4000人の合計1万5000人の脳卒中死亡、男性12万人、女性4万人、合計16万人の脳卒中患者が、たばこを吸わないことで予防できる計算です。
脳卒中予防には、食塩を控えて、バランスのよい栄養を摂り、血圧を低めにコントロールするとともに、禁煙が大事になっています。
飲酒
国立がんセンターの予防研究グループによると、アルコール摂取量が日本酒に換算して「1日平均3合以上」のお酒を飲む方は、「時々(月1~3回]飲む方に比べて、1.6倍脳卒中になり易いという結果が出ました。
アルコール摂取量が日本酒に換算して「1日平均1合未満」から、飲酒量が増すにつれて、出血性脳卒中の発症率が段階的に増えて行きます。
この理由は、アルコールの血圧上昇作用以外にも、血液を固まり難くする作用が働いていると考えられます。
結論としては、飲酒は1日平均1合未満が勧められますが、ただ、脳梗塞にかかり難いからと云って、お酒を飲まない方に無理に飲酒を勧めるものではありません。
脱水
脳卒中と云うと、寒い冬場をイメージしますが、実は夏場に増えるタイプの脳卒中、それが脳梗塞で、日本ではこの脳梗塞が脳卒中全体の約6割を占め、発症のピークは6~8月の夏になっています。
脳梗塞が夏に多い理由の一つは、夏は大量の汗をかいて体が脱水状態になり易いからです。
脱水が起こると血液中の水分が不足し、血液が粘っこくてドロドロの状態になり、血の固まりである血栓が出来易くなります。
また、水分不足によって体内を循環する血液量が減少して、血管が詰まり易くもなります。
更に、夏は体の熱を放出しようとして末梢血管が拡張し、血圧が下がり易くなります。
脱水症状を防ぐための水分補給のコツは、喉の渇きを感じてからガブ飲みするよりは、一定時間ごとに少しずつ補給する方がよいでしょう。
特に高齢者は、熱さや喉の渇きの感覚が衰えているので、30分に1回などと時間を決めて、こまめに水分補給をする習慣をつけましょう。
夏は寝ている間もよく汗をかくので、寝る前にコップ1杯の水を飲む習慣をつけましょう。
お酒を飲んで水分補給をしたつもりになっている方は要注意ですよ。
お酒は利尿作用や発汗作用に加えて、アルコールを分解するのに体内の水分が使われてしまうので、水分補給どころか脱水状態に陥りかねません。
お酒を飲んだまま寝てしまって、脱水から脳梗塞を起こす若い方もあります。
お酒を飲んだ夜は、寝る前の水分補給を忘れないようにしましょう。
普段の水分補給には、水や麦茶がよいでしょう。濃い緑茶やコーヒーなどのカフェインの多い飲み物には利尿作用があるし、ジュースやスポーツ飲料は飲みすぎると糖質エネルギーの摂り過ぎとなります。
ただ、大量に汗をかいた時は、体内の失われたナトリウムを補給するために、スポーツドリンクにしましょう。
脳卒中の危険因子の高血圧、高血糖、脂質異常の予防改善などには、上に挙げた、11のリスク因子の多くを含む生活習慣の改善が大変重要です。
食事では塩分や脂質、エネルギーの摂り過ぎ、日常生活での適度の運動、禁煙、お酒の飲み過ぎなどの生活習慣の改善で、脳卒中を予防しましょう。
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ニューロテックメディカル代表
《 Dr.貴宝院 永稔 》
大阪医科大学卒業
私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。