脳梗塞の再発を予防するために利用される薬剤について
《 目 次 》
脳梗塞を発症すると、元々発症しやすい危険因子を持っていることもあり、再発の危険性も高くなることが知られています。
したがって、例え初期治療がうまくいったとしても、再発を予防するための対応も必要になります。
この場合、再発危険因子である高血圧や糖尿病などの生活習慣病の治療と合わせ、血栓形成を予防する抗血小板薬や抗凝固薬の内服が挙げられます。
脳梗塞の再発危険因子
まず、脳梗塞を再発する危険性が高まる因子について、簡単にご説明します。
高血圧
高血圧は脳梗塞の主要な危険因子であり、その治療により脳梗塞の再発リスクを大幅に低減することができます。
血圧を下げるために、減量、食塩の摂取量の低下、定期的な有酸素運動、アルコール摂取量の制限などの生活習慣への介入が効果的です。
治療は、収縮期血圧140mmHg未満または拡張期血圧90mmHg未満にコントルールすることが望ましく、高血圧の発生機序や患者さんの病歴(糖尿病、腎疾患、心血管疾患の既往など)を考慮した上で、降圧薬が選択されます。
糖尿病
糖尿病も、脳梗塞の危険因子です。
脳梗塞を発症した人は、糖尿病が隠れていないかできる限りスクリーニング検査を行い、再発を防ぐためにも血糖を管理することが望ましいです。
高脂血症
動脈硬化の影響により脳梗塞を発症した場合、病状によってはコレステロールの値に関わらず、スタチンによる治療を開始することが検討されることもあります。
複数の大規模調査により、スタチンを使用することで脳梗塞のリスクが低減されることが判明しています。
このほか、肥満、睡眠時無呼吸症候群、喫煙、過度の飲酒なども、脳梗塞の再発危険因子として知られています。
これらを解消するために、減量すること、適度な有酸素運動を定期的に行うこと、また禁煙をすることが重要です。
脳梗塞の再発予防に利用される薬について
続けて、脳梗塞の再発予防を目的に利用される薬剤について、ご説明します。
なお一言で脳梗塞と言っても、動脈硬化ができた血管を主体に血栓ができ、徐々に動脈が狭窄していく血栓性脳梗塞、また動脈や心臓内に人工異物や心房細動などの影響で血栓ができ、その血栓が剥がれて血流に乗って脳内に飛ぶ塞栓性脳梗塞などがあります。
抗血小板薬
動脈硬化の進んだ動脈内では、血液の流れと血管の間に摩擦が生じてしまい、その結果血栓が生じてしまうことが知られています。
この血栓ができる際に中心的な役割を果たしているのが血小板で、血小板の機能をコントロールすることで、血栓ができることを防ぎます。
抗血小板薬は、主に血栓性脳梗塞の予防に用いられます。
抗血小板薬として最もよく知られているのがアスピリンです。
消化管出血のリスクが増えるというネガティブな要素はありますが、古くから使用されている薬でもあることから、脳梗塞を発症したあとは、比較的早期から使用されることが一般的です。
そのほかにも、クロピドグレル、チクロピジン、シロスタゾールなどの抗血小板薬があります。
これらを単独で利用することもあれば、併用することもあります。
いずれの薬剤も、効果と安全性の両方を考えながら、必要に応じて定期的に血液検査を行い、治療を継続することになります。
通常、これらの薬剤は一生飲み続けることが必要です。
抗凝固薬
血栓が形成されていく過程で、血液凝固因子と呼ばれる血液内の要素も大きな役割を果たしています。
血液凝固因子には、さまざまな種類のものがあり、なかにはビタミンKに依存する凝固因子もあります。
抗凝固薬は、主に塞栓性脳梗塞を予防するために用いられます。
最も古典的な薬がワーファリンです。
ワーファリンは、ビタミンKに依存する凝固因子の作用を弱めることで、その効果を発揮します。
したがって、ワーファリンを飲んでいる間は、ビタミンKを多く含む食品である納豆や青汁の摂取を制限する必要があります。
このほか近年開発された薬に、ビタミンKに依存しないだけでなく、ワーファリンの内服中は必要であった定期的な血液検査も不要となるものがあります。
ダビガトランと呼ばれる薬剤は、特に心房細動によって心臓内に血栓を作ってしまう危険性のある方たちにとって画期的な薬剤です。
頭蓋内出血や消化管出血など重大な副作用の懸念はありますが、ワーファリンに比べて効果が劣ることはなく、より安全に使用できることがわかっています。
再生医療
従来の薬物による再発予防に加え、最近注目を集めているのが再生医療を利用した再発予防です。
再生医療では、脳梗塞によって死滅し、その機能を失った脳細胞の機能回復を目指します。
実は機能回復を目指しているのは脳細胞だけでなく、その周辺の傷ついた血管も含まれています。
動脈硬化などで傷ついた脳血管が修復されると、次の脳梗塞を予防することにつながります。
またご紹介した脳梗塞の予防に用いられる抗血小板薬は、一生内服を続ける必要があります。
しかし再生医療によって血管が再生すれば、脳梗塞を再発する危険性は低減しますので、状況によっては内服を中止することも可能になるかもしれません。
このように複数の点から、再生医療はとても期待されている治療法だと言えます。
まとめ
脳梗塞の再発危険因子、そして再発を予防するためにできること、適切な薬物や再生医療の可能性についてご説明しました。
ただ何よりも、まずは脳梗塞を発症しないようにすることが一番です。
また、再発予防の薬に頼るのではなく、本質的な危険因子の改善も必要です。ぜひ改めてご自身の生活習慣を見直してみましょう。
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ニューロテックメディカル代表
《 Dr.貴宝院 永稔 》
大阪医科大学卒業
私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。
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