頚椎損傷についての病名を正しく知ろう

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頸椎損傷について正しく知る

《 目 次 》


事故やけがで頚髄損傷や脊髄損傷を負って、手や足の麻痺が残るという話を聞いたことがあると思います。
似た言葉で、頚椎損傷や脊椎損傷という言葉があります。
頚髄損傷と頚椎損傷は、言葉は似ていますが、病状や後遺症の心配は大きく異なるものです。
もし自分やご家族、周りの人が担当医から「頚椎損傷」と言われたら、やっぱり足が動かなくなって、車椅子生活になっちゃうの?
と心配になってしまう方もいらっしゃることでしょう。
ここでは頚椎損傷について、頚髄損傷との違いも含めて解説していきます。

頚椎と頚髄の関係

頚椎は首を支える骨のことです。
体の中心に走る背骨(脊椎)の一部で、7つの骨から構成されています。
それに対して、頚髄は脳から出た神経が束になったものです。
頚髄は脊椎にある脊柱管とよばれる管状のスペースを通って、手や足に枝分かれしていきます。
つまり、頚椎は骨で、頚髄は神経です。
それぞれが損傷されることを頚椎損傷、頚髄損傷と呼ぶわけですが、この二つは大きく違います。

なぜなら「骨は治る」が「神経は治らない」からです。
頚椎が損傷されても、骨は回復力が強いので、適切な治療を受ければ快方に向かうことができます。
しかし、頚髄は一度強く損傷されると、その回復には限界があります。
そのため頚髄損傷は程度にもよりますが、後遺症が残ることが多くなります。
頚髄は頚椎の中を通るため、頚椎の損傷には頚髄の損傷を伴う可能性が高くなりますが、必発ではありません。
頚椎のみの損傷であれば、骨の治療を受けることで、治癒する可能性が高くなります。
逆に頚髄に損傷を起こしても、頚椎に大きな損傷がない場合もあります(非骨傷性頚髄損傷といいます)。
この場合は、しびれや麻痺など、神経の後遺症が残存する可能性があります。

頚椎損傷の種類

頚椎は骨ですから、主な損傷は骨折です。
頚椎は前方に大きな骨(椎体)があり、脊柱管を形成する椎弓が後方に続き、後ろの骨のでっぱりである棘突起と呼ばれる部分などに分かれます。
このどの部位にも骨折が起こる可能性があります。
また頚椎は上下に骨が連なった構造をしています。
骨の一部が向かい合い連結することで、安定しつつも動くことのできる構造となっていますが、頚椎に強い力がかかると骨がずれてしまうことがあります。
これを頚椎の脱臼と呼び、頚椎損傷の一種です。
頚椎の脱臼には、骨折を伴うことが多いのです。

頚椎損傷の症状

頚部に直接強い力を受けた場合、頭を打ち付けて強くひねられた場合、首を前に曲げる・後ろにそらす動きを強制された場合などに頚椎損傷が発生します。
頚椎損傷は骨折や脱臼ですから、受傷した場所に強い痛みを感じます。
交通事故や高所からの転落などが原因となるため、頚椎損傷の患者さんは救急車で病院へ運ばれるような状態となっていることが一般的です。
頚椎の骨折や脱臼が起きると、頚椎全体が不安定となっている可能性があります。
頚椎が不安定になっていると、受傷後無理に動かすことで、新たに頚髄損傷を発症する恐れがあります。
救急搬送中には頚椎を安定させるため、頚部を安定させる頚椎カラーを装着します。
頚髄損傷がなく、頚椎損傷のみであれば手や足のしびれ、麻痺など神経の症状は発症しづらいことになります。

頚椎損傷の治療

頚椎損傷はその程度により治療方法が異なりますが、最も重視されるのは、頚髄を保護することです。
頚椎が不安定になっている場合、頚髄が損傷を受ける可能性があるため、頚椎を安定させるための治療が行われます。
保存治療を行う場合はベッドの上で安静にし、場合によっては頭の横に枕などをおき、寝返りや起き上がりすらも制限される場合があります。
頚椎を安定させるための装具を着用しますが、骨折や脱臼の場所によってはハローベストといって、頭にピンを刺す強力な装具が選択されることもあります。
骨折や脱臼の程度が強い場合や、長期の絶対安静が必要となる場合には、頚椎に金具を入れて固定する手術が検討されます。
また、元々頚椎の通り道である脊柱管に狭窄があり、神経の圧迫が疑われる場合にも手術が選択されるケースがあります。
これらの治療は、いずれも頚髄を保護するために行う、というのが重要なポイントです。
「頚椎損傷」と「頚髄損傷」の意味が大きく異なるということが、お分かりいただけましたでしょうか。

まとめ

頚椎損傷は、頚椎に起こる骨折や脱臼のことです。
頚髄に大きなダメージがなければ、治癒することのできるけがといって良いでしょう。
ただし不適切な初期対応は、頚髄損傷を引き起こす可能性があります。
交通事故や転落、転倒などの後に首を強く痛がっている場合には、無理に動かさずに救急車を呼ぶようにしましょう。

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貴宝院 永稔【監修】福永記念診療所 部長 再生医療担当医師 ニューロテックメディカル代表
《 Dr.貴宝院 永稔 》
大阪医科大学卒業
私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。

脳卒中ラボ管理人

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