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「脳梗塞 有名人」というキーワードで検索すると、多くの有名人のお名前がでてきます。
脳梗塞が原因で亡くなってしまった方もいらっしゃる一方で、今も大活躍の方のお名前もでてきます。
フリーアナウンサーの大橋未歩さんは、2013年1月脳梗塞を発症し、ろれつがまわらない症状がでてしまったそうです。
しかし回復された現在では、最も言葉の能力や滑舌の良さが必要とされる、アナウンサーとして活躍していらっしゃいます。
ミュージシャンの桜井和寿さんは、2002年に小脳梗塞で入院されました。
その後回復され、現在も人気映画の主題歌を歌うなど、ご活躍は皆さんご存じの通りです。
元プロ野球選手(という言葉ではおさまりませんが)の長嶋茂雄さんは、2004年脳梗塞を発症、一命はとりとめましたが右半身に麻痺が残りました。
一言に脳梗塞、といっても程度は様々です。
脳梗塞は、脳の血流が障害され、脳の神経が障害されることで発症する病気です。
脳のどれくらいの範囲で血流が障害されるか、脳のどの部位が障害され壊死してしまうかによって症状、後遺症は大きく異なります。
脳の血流が障害され、壊死してしまうまでには数時間のタイムリミットがあると考えられています。
その間に血流を再開する処置を受けられるかどうか、それも後遺症の有無の決め手となる要因の一つです。
今日は脳梗塞になってしまった、その後について解説していきます。
脳梗塞の後遺症がある人
脳は、大別すると大脳、小脳、脳幹の3つに分けることができます。
小脳は歩く・走るといった運動をコントロールするはたらきをもっていますし、脳幹は呼吸や循環、意識といった生命を維持するためのはたらきをしています。
大脳は脳の80%を占める一番大きな部分で、その場所によってどのようなはたらきをするかが決まっています。
主なはたらきとして、次の3つがあります。
知的なはたらき
感情のコントロール
脳梗塞では、どの部位が障害されるかによって、様々な後遺症が出現します。
例えば、大脳の運動を司る部分が障害されると片側の腕・足が動かなくなる(片麻痺)、感覚の部分が障害されると感覚が鈍くなる、また逆に過敏になるなど。
小脳梗塞では、めまいが続いて歩けない、立っていられなくなるといった症状が出現しますし、脳幹梗塞は意識障害など生命に直結する症状となります。
体の問題だけではなく、言語の中枢が障害されると言葉を話すことができない、理解することができない(失語症)ようになりますし、大声をだしたり暴力をふるったりするなど感情のコントロールができずに社会生活に障害を来してしまうこともあります。
脳梗塞によって脳の細胞が壊死してしまい、これらの症状が出現すると、多くは後遺症となって残存します。
脳の細胞は一度壊死してしまうと、元には戻らないからです。
リハビリテーション等を行うことで症状の軽減を図ることはできますが、完成した後遺症が完全に消失することは多くはありません。
それでは、脳梗塞になっても回復した後元気にご活躍されている方々のように、後遺症が残らないのはどのような場合なのでしょうか。
脳梗塞の後遺症がない人
脳梗塞になっても後遺症が残らない人、それは血流が早期に再開した場合です。
一度血流が障害されても、細胞が壊死して決定的なダメージを被る前に血流が再開した場合には、脳の機能が維持されます。
脳の血流を早期に再開させるためには、早期に発見・病院受診をして治療を受けることが必要です。
発症して4.5時間以内であればt-PA治療という方法で、24時間以内であれば血管内治療を受けられる可能性があります。
ですから半日様子を見よう、明日病院がやっている日に行こう、では手遅れになってしまう可能性があります。
早期発見のために米国脳卒中協会は、FASTという標語を広めています。脳卒中を疑う人を見たら3つのテストをするように勧めており、その頭文字をとっています。
早期発見により早期治療を受けることで、後遺症が残る可能性を下げることができます。
それとは別に、脳梗塞と言われたが、特に症状がないという場合があります。
これは、「ラクナ梗塞」と呼ばれるもので、脳の細かい血管が詰まり脳のごく一部が障害されたものです。
障害部位が小さいために、症状がないというケースです。
この場合は、現時点で症状がなくても、要注意です。
細かい血管が詰まったということは、次は太い血管が詰まってしまう可能性が高くなっているからです。
ですから、根本的な原因を考えて対策をしていく必要があります。
また、血管性認知症といって、脳梗塞の症状と捉えづらい症状があります。
ラクナ梗塞が多発した場合などに、物覚えが時々悪い、時間帯によって反応が鈍い、急に怒り出すなど「まだらな」認知症状が出現します。
これらは実は脳梗塞の後遺症であると捉えることができます。
脳梗塞が再発する人
脳梗塞は、再発しやすい病気です。
10年以内に再発率約50%、2人に1人が再発するという報告があります。
歌手の西城秀樹さんも、ご存命中に2回、脳梗塞を発症しています。
脳梗塞になってしまう場合、根本的な原因が隠れていることが多くあります。
心房細動:時折動悸を感じる程度の軽い症状で済んでいる場合もあり、未治療のまま経過していることも多い不整脈の1種です。
65歳以上では約10人に1人が心房細動と言われています。
心臓が不規則にけいれんするように動くため、心臓内で血栓(血のかたまり)ができて、脳に飛んで血管を詰まらせてしまいます。
動脈硬化:動脈の壁が厚くなったり、硬くなったりして血管のはたらきが悪くなることです。
コレステロールや脂肪分が蓄積して血管を狭くしてしまい血流を阻害します。
「粥腫(じゅくしゅ)」と呼ばれる病変が破綻すると、比較的太い血管を閉塞させ大きな範囲の脳梗塞を発症します。
また、細かい血管の動脈硬化はラクナ梗塞の原因となります。
これらの根本的な原因に対しての治療が不十分であると、再発の危険性が高くなることになります。
脳梗塞を再発しない人
脳梗塞…怖い病気ですね。
万が一なってしまったとしても、一度きりで十分です。
再発しないように、根本的な原因に対する治療をしっかりと受けましょう。
心房細動:脳梗塞になったことがある方で、心房細動がある場合、脳梗塞再発予防のため血をサラサラにするお薬を飲む必要があります。
他にも心拍数を調整するなどのお薬を使う場合もありますし、近年心房細動の根治治療として、カテーテルアブレーションが広まってきています。
複数回の治療によって、5年間で80%程度の方に発作が起こらなくなるとされ、脳梗塞の再発予防に非常に効果的と考えられます。
動脈硬化:動脈硬化の原因は一つではなく、いくつかの危険因子があります。
特に高血圧、高脂血症、喫煙は特に重要で、3大危険因子ともいわれています。
他にも肥満や糖尿病など、生活習慣に原因の一端があると思われる危険因子もあり、病院での治療だけでなく自分で行う努力も脳梗塞の再発予防には必要です。
脳梗塞その後
脳梗塞を発症して早期の段階を急性期(およそ1-2ヵ月)、機能回復のためリハビリを受ける段階を回復期(発症してからおよそ3-6ヵ月)と呼びます。
それ以降が日常生活に戻る段階で、発症からおよそ6ヵ月以降ということになります。
就労世代などの若い患者さんでは、約7割がほぼ介助を必要としない状態まで回復するため、職場復帰することが可能な場合も少なくありません。
脳梗塞が軽度であった場合には発症から3-6ヵ月頃、ある程度の後遺症があってもリハビリを行い1年-1年6ヵ月頃に復職する場合が多くなっています。
脳卒中発症後の最終的な復職率は50-60%と報告されています。
日常生活の中でも、運転復帰には注意が必要です。
平成26年に道路交通法が改正され、自身の健康状態について申告することが義務化されています。
脳梗塞になり腕や足に運動麻痺が残ってしまった場合や、判断力の低下などの症状が残ってしまった場合は運転の復帰は難しくなります。
運転再開を希望する場合、医師の診断と公安委員会の許可が必要となります。
以上、脳梗塞になってしまったその後について、解説しました。
後遺症を残さないための早期発見、悪化させないための再発予防、どちらも非常に重要です。
正しい知識を持って対策していきましょう。
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ニューロテックメディカル代表
《 Dr.貴宝院 永稔 》
大阪医科大学卒業
私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。
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