被殻出血という脳出血のなかでも多い病気

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被殻出血

高血圧と言わると、「塩分控えめにするかな」くらいの感覚で、あまり危機感を覚ることはないと思います。
しかし脳出血と言われると、ゾッとしませんか?
実は高血圧は脳出血の危険信号なのです!
そして脳出血のなかでも多いとされるのが、今回のテーマである「被殻出血」なのです。
高血圧が、あなたを被殻出血へと誘う…。
ここで被殻出血を正しく知り、高血圧の予防・改善に取り組みましょう!

被殻出血を知ろう

被殻出血
被殻出血は「ひかく しゅっけつ」と読みます。
Putaminal hemorrhageとも呼ばれます。
画像引用:Images are generated by Life Science Databases(LSDB). – from Anatomography, website maintained by Life Science Databases(LSDB).

そもそも被殻とは

被殻とは、脳の深部に存在する大脳基底核の一部です。
脳の深部には間脳、大脳基底核、大脳辺縁体といった本能や記憶など、生物にとって重要な役割を担う組織が集まっています。
また、被殻には言語野などが隣接しています。

被殻出血は血圧が高いと起きやすい?

血圧が高いとは、何らかの原因により血液が流れずらく血管に高い圧力をかけることで、頑張って血液を循環させようとしている状態です。
つまり細く弱い血管ほど破れてしまうリスクが高まります。
被殻出血は脳出血の中で40%の頻度で起こるといわれております。
なぜなら脳血管の中でも被殻を支配している血管(レンズ核線条体動脈)は、特に破れやすいためです
細く壁も弱い血管に、無理やり血液を流し込もうとすれば…。
従って高血圧である方は脳出血、特に被殻出血を引き起こす危険性が高いということです。
また高血圧の既往歴(以前高血圧だった)がある場合も、同様のリスクがあります。
長年高い血圧にさらされていた血管は傷つき、破れやすくなっているのです。
いずれにしても、生活習慣の改善を続けること、医療機関で定期的に検査してもらうことが重要になってきます。

被殻出血のメカニズム

メカニズム
先ほども少し触れましたが、被殻出血はレンズ核線条体動脈の破綻(破れる)により起こります。
レンズ核線条体動脈が破れやすくなる原因は大きく以下の3つがあります。

  • 血圧が高く、血管に大きな負担をかけている。
  • 高血圧が長年続き、血管壁が傷ついている。
  • 動脈硬化(プラーク)など血管径を小さくしている原因がある。

レンズ核線条体動脈が破れて出血すると、被殻やその周囲に属する脳細胞が機能しなくなります。
これにより次に解説します症状が現れるのです。
脳細胞は一度障害されると元には戻りません。
しかし適切な看護・リハビリを行うことで「神経可塑性(しんけいかそせい)」という働きにより、機能を回復させることができます。
神経可塑性とは障害された脳細胞を復活させるのではなく、障害された脳細胞の周囲の構造を変化させることで代役として機能させます。
ですが、障害領域が大きいと回復が難しく、とても時間がかかることになります。
ですから、被殻出血による脳細胞障害を最小限に抑えるため、迅速な対応と適切な看護が重要になります。

高次脳機能障害をもたらす被殻出血[症状]

被殻出血を起こすと、以下のような症状が出現します。

  • 嘔吐を伴う頭痛(破綻が大きく、多くの血液または血種が神経を圧迫)
  • 麻痺
  • 失語
  • 失認(感覚・精神機能は保たれているが対象を認知できない)
    →嗅覚、視覚、聴力、味覚、体性感覚など
  • 失行(実行しようという意思はあるが、正しい動作ができない)
  • 意識障害
  • 感覚障害
  • 同名性半盲(両目の同じ側が見えなくなる)
  • 共同偏視(出血が起きた側に眼球が向く)

高次脳機能障害はとても辛い

高次脳機能障害といわれてもピンときませんよね。
かんたんに解説します。
高次脳機能障害とは一般的(医学的)に「脳の損傷や障害により生じる神経心理学的障害」のことをいいます。
つまり、脳の損傷により様々な場面でみられる認知能力(高次脳機能)の障害の総称であり、例えば認知症や失語などが含まれます。
しかし行政では患者自身が認識しにくい障害を高次脳機能障害とし、患者が自覚しにくい記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害など、医学的分類より更に限定された分類となっています。
多くの場合被殻出血では、高次脳機能障害として失語、失認、失行が出現します。
自分で障害を自覚していても、思ったように行動できない…。こんなつらいことはありません。

「左被殻出血は失語」なぜ?

失語症
被殻出血では様々な症状が出現することを、前の項目で解説しました。
しかし一般的には「左側の被殻出血は失語になる」といわれております。
数ある症状の中でなぜ「失語」なのでしょうか。
それは、比較的小さな出血でも失語を生じるためです。
勿論、出血の進展度(血種の伸展方向と血種量)により重症度は変わってきます。
言語や計算に特化した脳半球を優位半球、逆側の脳半球を劣位半球と呼びますが、人によって左右が異なります。
また、右利きの方と一部の左利きの方は左側が優位半球であることが多いという傾向が強くあります。
そのため、多くは左側(優位半球)の被殻出血で失語が出現するというわけです。
優位半球が右側の人は左被殻出血が起きても、失語にはなりません。

被殻出血の予後予測

被殻出血の予後は出血による、血の塊(血種)の大きさと形成方向が予後を決める大きな要素となります。
被殻出血が重度で、意識不明状態が続いている、合併症が出現してしまった場合には平均余命が3〜4年といわれております。
しかし手術による改善効果も報告されており、死亡率は脳出血全体から見ても減少傾向にあります。
また優位半球の被殻出血で生じる失語は、比較的小さい出血(血種)であれば残存しないことが多いといわれています。

優位半球の被殻出血と失語の残存

血種(血の塊)量により失語の出現・残存の有無が変わってきます。

  • 血種量10㏄未満:失語が出現しない、残存しないことが多い
  • 血種量10~20㏄:失語が残存することがある
  • 血種量25㏄以上:失語が残存してしまうことが多い

いずれにしても、迅速な対応により進行を抑えることが重要です。

被殻出血=手術ではない

脳出血というと手術するというイメージが強いかもしれません。
しかし手術が適応されるのは、ある一定レベルの出血でないと行いません。
意識レベルが低く深昏睡状態ではない場合に手術が検討されます。
そこから各部位の出血の程度により手術の適応が決まります。
被殻出血の場合は、出血量が31ml以上(CT上)でかつ血腫による圧迫所見が高度な場合、特に、JCSで20-30程度の意識障害を伴う場合は手術適応を検討することになります。
手術の必要がないとされた場合には内科的治療-(薬や輸液等)を行うことになります。

リハビリは焦らず長い目で取り組む=最短の道

リハビリで大切なことは患者自身が現状を受け入れること、家族や周囲の人もリハビリスタッフの一員であると認識することが重要です。
特に失語であれば、以下の点を意識しましょう。

[家族や周囲の人]

  • コミュニケーション困難な状態の患者に対し、適当な返事をしない
  • 面会中もリハビリだと思い、会話はせかせず中断させない。
  • 患者とゆったりとした気分で接する

[患者自身]

  • 話そうとすることも大切だが、基本的な要望(トイレに行きたいなど)を伝える手段を見つけられれば良い
  • 現状に絶望するだけでなく、そんな状況から1つ1つできるようになった達成感を大切にするといっても、患者自身は上手くいかないことにイライラや不安を感じていることもありますので、しっかり周囲がフォローしましょう。

まとめ

今回は脳出血の中で、最も頻度が多い被殻出血について解説しました。
高血圧の状態が続くと、血管の壁は高い圧力で徐々に傷ついていきます。
表面からは分かりません。
自分の血管が傷だらけになっていると想像してみてください。
とても恐ろしいですよね。
ですから高血圧状態から一刻も早く脱出し、一度でも高血圧になってしまった方は定期的に医療機関で検査してもらいましょう。
生活習慣を見直し、脳出血・後遺症など最悪の事態を防いでいきましょう。

【参考】
●山梨大学脳神経外科 甲府城南病院言語聴覚室
西山義久、小宮桂司、堀越徹、木内博之
「左被殻出血と失語症:血腫の進展方向と言語機能障害の予後について」
山梨医科学誌 27(4)145~151、2013

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貴宝院 永稔【監修】福永記念診療所 部長 再生医療担当医師 ニューロテックメディカル代表
《 Dr.貴宝院 永稔 》
大阪医科大学卒業
私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
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