脳梗塞とてんかんの関係

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てんかん

《 目 次 》


脳梗塞になると、その後てんかんが発生するリスクが高まることが知られています。
てんかんとは、けいれんが繰り返し起こる疾患を指しますが、どのような状況であればてんかんのリスクが高くなるのか、また適切な対処法があるのか心配になる方がおられるかもしれません。
そこで今回の記事では、脳梗塞とてんかんの関係についてご説明いたします。

脳梗塞とてんかんの違い

脳卒中激痛
まず、脳梗塞とてんかんの違いについてご説明します。

原因の違い

脳梗塞とてんかんは、どちらも脳の活動に影響を与える重大な病気です。
しかし、原因や脳に与える影響は異なります。
脳梗塞は、脳内の血液循環が途絶えてしまうことによって起こります。
てんかんによるけいれん発作は、脳内の電気的な活動が異常に活発になることで起こります。

症状の違い

片麻痺
脳梗塞とてんかんによるけいれん発作には、頭痛、麻痺、感覚障害、意識障害など、共通の症状があります。
しかし、それぞれ異なる特有の症状もあります。
例えばてんかんによるけいれん発作に特有の症状には、次のようなものがあります。

まずてんかんの発作には、初期段階、中間期段階、そして終わりの段階があります。
発作の各段階には、それぞれ特有の症状があります。

初期段階は、実際の発作の数分から数時間前に始まることがあります。
この段階では、前兆として視界やその他の感覚が変化することがあります。
特に光に敏感になったり、他の人には見えない不思議な光や色が見えるようになったりします。
また、嗅覚や味覚がおかしくなることもあります。
発作の中間段階は、意識を失ったり、数分またはそれ以上の時間、ボーっとしたりすることがあります。
耳や目が聞こえにくくなることや幻覚を見ることもあります。

そのほかにも、過剰なまばたき、よだれを垂らす、手足や体の一部や全体ががくがくとけいれんする、服を着たり脱いだりするなど特定の動作を繰り返す、失禁するなど、多彩な症状がみられます。
最終段階では、眠気、錯乱、一時的な麻痺などが認められ、数時間以上持続することがありますが、てんかんによる発作の影響は、通常一時的なものです。
脳梗塞は、とくに前兆はなく、かなり突然に起こる傾向があります。
その症状として、顔面を含む体の片側のしびれや麻痺、歩行困難、話しかけられた言葉が理解できないなどがあります。
なお、脳梗塞は体のさまざまな部位の感覚や筋肉のコントロールが障害を受け、その影響はその後完全には回復しない可能性があります。

脳梗塞後にてんかんが発生する理由

脳梗塞後のけいれん発作は、発症後すぐに起こることもあれば、しばらくしてから起こることもあります。
脳梗塞後早期の発作は、通常発症1週間以内に発生するけいれんを指します。
早期発作は、脳梗塞による脳の局所的な代謝の変化など、大脳への直接刺激等により、てんかん発作を起こしやすくなると考えられています。
それ以降に生じるけいれんは、遅発性と呼ばれます。
脳梗塞は、脳の細胞に損傷を与えます。
脳に傷がつくと、傷跡として瘢痕が形成され、脳細胞の電気的活動に影響を与えてしまいます。
そして脳の電気的な活動が妨げられると、傷ついた場所を中心に過剰な電気活動が起こり、けいれん発作が発生します。
これが遅発性のけいれんが発生する原因です。

脳梗塞後にどの位てんかんが起こる可能性があるか?

脳梗塞を起こしてから1年以内のてんかんの発症率は、3〜15%と報告されています。

(出典:Pitkanen A, et al. Development of epilepsy after ischaemic stroke. Lancet Neurol 2016; 15: 185–97)

脳梗塞後にけいれん発作を起こしたことがある場合、てんかんを発症するリスクが高まります。
脳梗塞後にてんかんを発症する危険因子は、SeLECTスコアと呼ばれる評価指標を用いることで推測できると言われています。
このSeLECTスコアは、脳梗塞の重症度、大血管の動脈硬化、脳梗塞発症後早期のけいれん、大脳皮質の障害、そして中大脳動脈領域の障害という5つの項目を10段階に分けて評価しています。
脳梗塞の重症度が高く、挙げたそのほかの4つの項目が「Yes」であれば、よりてんかんを発症するリスクが高くなることがわかっています。

(出典:Galovic M et al. Prediction of late seizures after ischaemic stroke with a novel prognostic model (the SeLECT score): a multivariable prediction model development and validation study. Lancet Neurol 2018; 17: 143–52)

脳梗塞後の発作を予防するにはどうしたらよいか?

水分補給
生活習慣の改善と従来の抗てんかん薬による治療を組み合わせることで、脳梗塞後のけいれん発作を予防することができると言われています。

生活習慣の改善

けいれん発作の生じるリスクを減らすために、できることをいくつかご紹介します。

  • こまめに水分補給をする
  • 過剰な運動を避ける
  • 健康的な体重を維持する
  • 栄養素の高い食品を食べる
  • ストレスを避け、十分な睡眠を取る

抗けいれん薬による治療

脳梗塞後にけいれん発作を起こした場合、医師は抗けいれん薬を処方することがあります。
医師の指示に従い、すべての薬を処方通りに服用してください。

まとめ

脳梗塞とてんかんの関係についてご説明しました。
なおもしてんかんを発症すると、入浴時や泳いでいるとき、また運転中にけいれんを起こすと危険なため、色々と注意すべきことがあります。
できる限りかかりつけ医とよく相談し、対処法を確認しておくことをおすすめします。

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ニューロテックメディカル

貴宝院 永稔【監修】福永記念診療所 部長 再生医療担当医師 ニューロテックメディカル代表
《 Dr.貴宝院 永稔 》
大阪医科大学卒業
私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。

脳卒中ラボ管理人

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