脳卒中後の自動車運転再開までの流れをポイント解説!

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脳卒中と自動車の運転

《 目 次 》


脳卒中からの危機を脱して、やっと社会復帰を果たしたあなたにとって、自動車は日常生活や社会生活上で大事なアイテムですよね。
でも、症状が残っているのに自己判断で車の運転を再開することは違法行為と見なされ、事故を起こした時に自動車保険が使えず大きな損害賠償を背負いかねません。
勿論、事故に巻き込まれた被害者の損失を取り返すことも出来ません。それを考えると、運転するのが良いのかどうか、皆さんと一緒に考えてみましょう。

脳卒中後の自動車運転は?

脳卒中を発症しても、自動車を運転したいという思いは誰もが持っています。
実は後遺症があっても運転適性が証明されれば合法的に自動車の運転が可能になります。
ハンドルやアクセルなどの操作が困難な場合でも、車両の改造などで運転可能になることもあります。
でも反対に、たとえ後遺症が残っていなくても、そのまますぐに運転が再開出来ると云う訳でもありません。
運転再開の可否を判断するのは医師や本人ではなく、免許を交付する公安委員会となります。
つまり、後述の様に主治医の診断書を元に、公安委員会で最終的に運転の可否を判断されることになるのです。

運転免許に関わる特定の病気

平成26年道路交通法により、運転免許更新時に健康状態について、公安委員会への申告が義務化されました。
回答の義務化に伴い、虚偽申告の場合、1年以下の懲役、または30万円以下の罰金が科せられます。
つまり、「一定の病気など」になると免許を持っていても運転が出来なくなります。
対象となる病気は以下の通りです。

  • 統合失調症
  • てんかん
  • 再発性の失神
  • 無自覚性の低血糖症
  • そううつ病
  • 重度の眠気の症状を呈する睡眠障害・認知症
  • アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒
  • その他自動車等の安全な運転に必要な認知、予測、判断又は操作のいずれかに係る能力を欠くこととなるおそれがある症状を呈する病気(脳卒中はこれに該当します!)
    ※「過去5年以内に、病気を原因として、身体の全部又は一部が一時的に思い通りに動かせなくなったことがあるか、どうか」と云った過去の病状も判断材料にされます。

脳内の血管が血栓によって詰まり、脳細胞にダメージを受けた脳梗塞の患者さんを例に挙げます。
脳梗塞は前述の「一定の病気など」に含まれ、麻痺によって四肢の運動機能低下に加え、高次脳障害が発生すると安全運転は厳しくなります。
左脳に梗塞が発生し、右半身が麻痺しました。
約4ヶ月のリハビリ入院を経て自立歩行は出来るようになりましたが、右上肢はまだ麻痺が残っており、右手で文字を書いたり、お箸を持ったりは出来ない状態でした。
そんな状態ですが退院後は運転を再開したいと考えたのでした。

脳卒中後の運転再開への手順

①医師に相談

医師に「運転再開にチャレンジしたい」と云う思いをしっかり伝えましょう。
リハビリ期の患者さんを医師は主に「生活が出来るかどうか」と云う目線で見ているので、これを「運転適性があるか」というもう少し厳しい目で確認してもらうことが大事です。
でも今はまだ、初回相談の段階で意志を伝えることでOKです。

②予備知識

運転免許試験場の担当の方に事前相談する場合にも、ある程度の予備知識が必要となるので、最新の道路交通法や運転再開の知識を蓄えましょう。
「一定の病気など」に関する適正検査は患者さんの症状や程度によって変化します。
調べて判らない点は運転免許試験場で確認できるよう、メモしておきましょう。

③運転免許試験場に事前相談

「一定の病気など」の適正検査に関して、大阪では門真や光明池に運転免許試験場適正試験係適正相談コーナーが設けられています。
大阪府警察:運転適性相談と病気の症状等の申告について

まずは電話で症状を説明して、手順や検査内容を再確認しましょう。
適性検査の内容は実際に面談し、診断書を確認してから決まるので、電話だけでは明確に答えられません。
あなたの症状が運転免許試験場の設備だけで、検査が出来る範囲なのかが大事なのです。
ハンドルにノブを付ける程度の補助装置は用意されていることが多いのですが、患者特有の改造では自ら持ち込むと云うようなことも必要になってしまうのです。
そのような方は直接、運転免許試験場に相談してください。

④事前の運転適正確認

いきなり適正検査を受けて合格できるか不安な方は、運転再開をサポートしているリハビリセンターやリハビリ病院で事前に確認してみましょう。
これらの施設では運転シミュレーターを用いた能力の確認やカウンセリングを受けられ、施設内コースで実際に運転することも可能です。
お住まいの地区で運転再開を支援しているリハビリセンターを探してみてください。
ただ、この施設で問題が無かったとしても試験場での適正検査が免除される訳ではありません。
でも、自分に運転能力があるか、また運転再開のためにクリアすべき課題は何かを知ることが出来るので、必要に応じて利用してください。
尚、本番の適性検査では自力で運転席へ乗り降りする必要があります。
片麻痺などでそれらが困難な場合は、繰り返し訓練するようにしましょう。
大阪府:大阪府立障がい者自立センター
兵庫県:障害者支援施設 自立生活訓練センター

⑤適正検査を受ける時期

あなたが受ける適正検査、運転に必要な機能・補助装置、クリアすべき課題などの概略はつかめましたか?
その後は、適性検査を受ける時期を医師と相談して決定します。
一度適正検査を受けて不合格と判定されると免許は即取り消しとなります。
取り消しから3年以内に運転適性が回復されれば、学科や実技試験が免除の救済措置はありますが、3年を超えると新規取得となるので注意してください。
免許更新まで余裕があるなら、合格の自信が持てるまで、じっくり回復してから行動を起こす方が賢明です。
一般に診断書の作成には2週間くらいかかるので、医師が多忙で遅れることも考え併せて、時期を決めましょう。

⑥診断書用紙の入手

診断書の用紙は疾患ごとに内容が異なるので、運転免許試験場又は特定の警察署に電話して、「一定の病気などに関する脳卒中用の診断書の用紙が欲しい」と伝えて、受け取りましょう。記入の注意点が書かれた医師向けのガイドラインや記入例などがある場合は戴いておいた方が良いでしょう。
場合によっては郵送してくれるところもあるようです。

⑦医師に診断書作成を依頼

適正検査に合格するためには、「運転を控えるべきとは云えない」という内容の診断書が必須なので、「運転を控えるべき」「今は判断できない」と云う内容だったら、適性検査へのチャレンジは延期せざるを得ません。
尚、診断書には数千円の費用がかかります。

⑧適正検査を受ける

診断書を持参して、運転免許試験場で適正検査を受けましょう。
症状によっては機材の用意などの準備が必要となるので、予約を入れておくとよいでしょう。
免許更新のタイミングなら、初めは一般の方と同じ手順で手続きを行い、視力検査の後に別室で適性検査が行われます。
まずは面談で発症時の様子から現在までの経過、その後、現在残っている症状について聞かれます。
面談時に病院の診察カードの提示を求められることがあります。
判定が困難になった場合、医師と直接話し合う必要があるためです。
必ず持参した方が良いでしょう。
そして診断書を踏まえて運転シミュレーターで行う検査の内容が決まります。
続いて運転シミュレーターによって運転適性を確認します。
検査内容は症状、残っている後遺症に該当する試験を行うため、一般的な運転免許試験とは違い、定まったものではありません。
例えば、判断力障害・注意力障害・視野欠損などの高次脳機能障害の影響が疑われる場合は、運転中の動画を見ながら指示された条件でクラクションを鳴らすといった課題をこなします。
片麻痺が残っている場合は、運転席への乗り降り、ブレーキやアクセル、ハンドルが適切にコントロール出来るかなどが判定のポイントになります。
これは検査というより免許試験本番と考え、健常者同等と扱ってもらうための確認ですから、障害者だからという温情判断はなく、緊張感を持って臨みましょう。

⑨免許交付

適性検査と診断書の双方で運転に問題ないと判断されると、新しく免許が交付されます。
適性検査の結果によってマニュアルからオートマに変更されたり、ハンドルやアクセルに補助装置を付けるなどの条件が加わります。
免許更新前と条件が変わらない場合は、今の免許のままで運転が可能です。
ただ、試験場での判断が難しい場合は、検査結果を運転免許本部へ送って最終判断が行われ、後日聴聞会で結果が申請者に伝えられます。
「運転に支障がない」と判断されると、免許が交付されます。

※2007年以前に普通免許を取得していた人は、免許区分の変更により中型免許の8t限定になっていますが、適性検査でAT限定に変更された場合、普通免許に格下げされず、中型免許の8t/AT限定となるので、8t未満のトラックでもATなら運転が出来ます。
※平成29年施行の準中型自動車・準中型免許の新設により、普通免許の車両総重量が5tから3.5tに削減されたため、2007年から2017年の免許区分改正前に普通免許を取得した方は、免許更新時に準中型免許の5t限定に変更されます。

⑩条件に合った車両の用意

免許に補助装置の条件が追加された場合は、それに適合する車両を用意しましょう。
例えば、ハンドルに手を固定するためのノブを取り付けたり、アクセルやブレーキの位置を麻痺していない側に寄せる。
また、手だけで運転できるように改造することもあります。
車椅子使用の方は、車両収納の装置も必要となります。
車両改造後は改造車として陸運局への登録が必要となります。
尚、改造に際しては取り扱い経験が豊富な専門店、メーカーディーラーに依頼しましょう。
ただ、ステアリングノブの取り付けやアクセル/ブレーキの位置変更などと云った、身障者操作装置の簡易な「指定部品」を取り付けや保安基準を満たしている場合は、改造申請は不要です。
尚、補助装置の条件付きの免許を提示すれば、車両改造には助成金が下ります。
改造前に申請が必要な場合もあるので事前確認も必要です。
また、障害者認定の方には自動車関連の税金が免除されるので、忘れず申請しましょう。

まとめ

適正検査の結果、運転を中止せざるを得ない状況に陥ると、死亡率の増加や生活の質の低下、うつの増加、そして社会ネットワークの減少などが報告されています。
特に高齢者においては、その影響が大きいので孤独感の増加を防止することが重要です。
バスや電車などの公共交通機関は運転に代わる移動手段として、生活の質や活動量の増加に深く関係するので、大いに利用することが望まれます。
脳卒中後の復帰の目標として、運転免許の更新を挙げるのも良いし、それが叶わなくても、積極的に出かけることが生活の質の向上に繋がります。
是非、参考にしてみてください。

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ニューロテックメディカル

       貴宝院 永稔【監修】脳梗塞・脊髄損傷クリニック 銀座院 院長 再生医療担当医師
ニューロテックメディカル代表
《 Dr.貴宝院 永稔 》
大阪医科大学卒業
私たちは『神経障害は治るを当たり前にする』をビジョンとし、ニューロテック®(再生医療×リハビリ)の研究開発に取り組んできました。
リハビリテーション専門医として17年以上に渡り、脳卒中・脊髄損傷・骨関節疾患に対する専門的なリハビリテーションを提供し、また兵庫県尼崎市の「はくほう会セントラル病院」ではニューロテック外来・入院を設置し、先進リハビリテーションを提供する体制を築きました。
このブログでは、後遺症でお困りの方、脳卒中・脊髄損傷についてもっと知りたい方へ情報提供していきたいと思っています。

脳卒中ラボ管理人

投稿者プロフィール

脳卒中・脊椎損傷や再生医療に関する医学的見地から情報発信するブログとなっております。
それらの情報に興味のある方、また現在もなお神経障害に苦しむ患者様やそのご家族の方々に有益となる情報をご提供して参りたいと考えております。

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